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LINEヤフー、情プラ法対応も「削除しなくて済む空間」目指す

LINEヤフー 政策企画本部メディア部長 槇本 英之氏

LINEヤフーは6日、投稿型サービスにおける情報空間健全化の取り組みや、情報流通プラットフォーム法(情プラ法)への対応について、記者説明会を開催した。同社は7月29日付で同法に基づく届出を完了し、透明性と迅速対応を一層強化する方針を示した。

情プラ法は今年4月に施行され、大規模プラットフォーム事業者に対して、誹謗中傷や権利侵害に関する投稿削除の迅速対応と運用状況の透明化を義務付けている。LINEヤフーは「Yahoo!知恵袋」「Yahoo!ファイナンス掲示板」「LINEオープンチャット」「LINE VOOM」の4サービスが対象となり、削除基準の全面見直しや窓口体制の整備を進めてきた。

AIと人の目を組み合わせた投稿モデレーション

LINEヤフーでは、投稿削除や停止のプロセスについて、あらかじめ公表した削除基準に基づいて、“人の目”とAIを組み合わせて判断している。被害者や第三者からの通報に関しては人の目による対応を行ない、普段の投稿についてはAIモデルが各サービスをパトロール。問題があれば投稿を自動削除している。

被害者や第三者からの通報については、情プラ法で義務付けられている「侵害情報調査専門員」を選任し、すでに運用を開始している。申出から原則7日以内に当該投稿を削除するかどうかを判断し、その結果を被害者に通知する義務が課せられている。

7日を超える場合は、その理由を申出者に誠実に通知する「誠実対応義務」も含まれる。このように、日本の法制度や文化に即した適正な削除判断を行なえる体制を整え、迅速かつ確実な対応を目指すとしている。

コメント欄対策で「事前抑制」を重視

「Yahoo!ニュース コメント欄」では、投稿時に携帯電話番号の登録を義務付けることで、複数のアカウントを使い違反行為を繰り返すユーザーが多かった問題に対処している。投稿内容の削除基準については、各サービス間でルールを統一し、禁止投稿の具体例を盛り込んだガイドラインを公開。

ユーザーがルールを理解しやすくすることで、投稿時点でのトラブル抑制を図る。さらに、AIには不適切な投稿の“削除”だけでなく、警告にも活用。例えば、「コメント添削モデル」では、不快と感じる可能性のある表現に対して、ユーザーが投稿する直前にコメント内容の見直しを提案する。修正は任意とし表現の自由とのバランスを確保したという。

削除件数は3年で4分の1に 透明性レポートで成果

こうした取り組みにより、同社が毎年発行している「メディア透明性レポート」では、主要サービスにおける2024年度の投稿削除件数が、2021年度比で4分の1以下に減少したことが明らかになった。投稿数が維持される中での削減であり、AIと人の目を組み合わせたパトロール体制や、事前抑制策が奏功した結果と分析。

このほかにも、フィルターバブル対策として、Yahoo!ニュースのコメント欄に「質と多様性」を重視した建設的コメント順位付けモデルを導入している。ロジカルなコメントだけでなく、投稿内容を分析して複数の意見をグルーピングし、特定の意見に偏らないように表示順を調整している。また、信頼性の高いコンテンツを優先的に表示する「プロミネンス」の取り組みも進めており、ユーザーが正確な情報に触れる機会を増やすことで、偽情報に惑わされない心理的防御(プレバッティング)を促すとしている。

同社は「削除しなくても済む空間」を目指し、表現の自由と安全・安心の両立に取り組む姿勢を示した。誹謗中傷や偽情報の背景にあるアテンション・エコノミー(関心経済)構造にも言及し、「削除対応だけでは問題は解決しない。プラットフォーム事業者が持つ構造的な課題に、業界全体で取り組む必要がある」(槇本氏)と強調した。