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三菱地所、月単位の家具付き高級賃貸「フレキシブルリビング」
2024年10月2日 08:40
三菱地所は、Blueground Japan(ブルーグラウンド・ジャパン)を通じて展開する家具付き賃貸住宅サービスを春から始動。新たに提供する物件「ザ・パークハビオ 麻布十番」をメディア向けに公開した。
三菱地所は、家具付き賃貸住宅サービスのサービスプロバイダーであるBlueground Holdingsと日本国内における独占的ライセンス契約を結び、Blueground Japanとして今春より日本市場における新たなサービスの展開を始動させた。
Bluegroundは2013年にアテネで創業し、現在は世界19カ国、48の主要都市にて、約18,000室の家具付きアパートメントを運営している。特にビジネスや旅行者向けの中長期の滞在をターゲットとしている。
日本では三菱地所をパートナーに、5月に第1号物件を開業し、現在は36物件を運営している。ターゲットとなるのは訪日外国人で、利用者は現地で申込や契約を完了し、日本に到着してすぐに住み始められる。物件には家具、家電から、食器やタオルまですべてそろっている。
今回公開したザ・パークハビオ 麻布十番は、三菱地所レジデンスが管理する物件。全戸を同サービスに向けて提供するのではなく、全106戸のうち6戸を展開する。
契約は最短1カ月から最長2年まで可能で、以降は再契約することとなる。料金はダイナミックプライシングを採用しており、ザ・パークハビオ 麻布十番の場合は部屋により40万円台~80万円前後が目安となる。同物件で最高値水準の部屋は、東京タワーをのぞめる2LDK/66.23m2のものとなっている。
Bluegroundとしては、ダイニングテーブル、テレビ、ソファ、ベッドを設置できることを条件とし、そのため最低でも1LDK/40m2超の間取りとなる。
長期滞在者向けの類似サービスとしては、サービスアパートメントや家具・家電付きホテルがある。これらとの違いについてBluegroundは、マンションならではのプライバシー感を挙げる。
ほかにも従来からマンスリーマンションはあるが、これらの多くは日本人向けに提供されており、英語によるサポートの面でBluegroundに分があるとする。入居者向けのアプリで家電などの使い方を英語で解説しているほか、部屋にはサポートページに遷移できるQRコードを設置している。
海外からの人材が増える中で「フレキシブルリビング」が台頭
三菱地所にとってBlueground Japanの事業は、住宅事業における新事業の1つ。類似した事業として、2019年にシンガポール拠点のCo-Living運営事業会社・Hmlet(ハムレット)と合弁会社・Hmlet Japanを設立し、Co-Living事業(1カ月以上12カ月以下の中長期滞在者向けフレキシブルな賃貸住宅×コミュニティ形成)を行なっている。
三菱地所は、Hmlet JapanとBlueground Japanを運営会社として、2つのブランドで「フレキシブルリビング事業」の拡大を目指す。
フレキシブルリビング事業の利用者側のメリットとして、オンラインで契約が完了し、申込から入居までの期間は数日で済むことと、サポート体制の手厚さを挙げる。
これまでは入居審査やアナログの煩雑な手続きが壁となり、ウィークリーマンションなどの別のサービスに流れていたという。こういった課題に対して、外国人でも気軽に賃貸マンションを利用できる機会を提供する。
新たに開始したBluegroundと、先行して取り組んでいたHmletとの違いについては、ターゲット層や価格帯などで差別化する。
今後、三菱地所のフレキシブルリビング事業においては、2024年中に東京で1,000室、2027年には大阪、福岡へとエリアを拡大して5,000室以上、2030年には国内主要都市での展開、10,000室以上を目指す。
Blueground Japanのビジネスモデルは、同社が物件のオーナーから借り上げ、それを利用者に転貸する形。オーナーとしてはBlueground Japanとの賃貸契約となるため、部屋に人が入っていない時でも家賃収入を得られることとなる。そのほか、賃貸募集、入居審査、賃料回収といった業務の削減につながるほか、一般的な賃貸住宅とは異なるアセットタイプとしてリスク分散と捉えることもできるとしている。
主な顧客ターゲットは、海外からのノマドワーカーや、駐在員およびその家族。想定する滞在期間はノマドワーカーは1~6カ月、駐在員は数カ月~数年と異なるが、いずれの場合も一定程度の収入があり、自身のライフスタイルをより充実したものとしたいと考えている人を初期ターゲットとして設定する。
現在運営する物件は東京都心を中心にしており、山手線沿線および西側エリアから、徐々に広域化を予定している。
説明会には、Blueground創業者であるアレックス・ハジエレフテウ氏も登壇。自身も出張が多く、世界15の都市で生活し、5年間のホテル暮らしを経験したという。その中で、ホテルでの長期滞在では費用がかかりすぎる、賃貸住宅では家具がなく、手続きにも手間がかかるという課題を実感したことから、Bluegroundの事業を始めた。
Bluegroundの事業を拡大できた理由として、自身が感じた課題を解決するためのビジネスモデルのほか、テクノロジーも重要であったと説明。利用者側は、Webサイトでどのような住戸が選べるかを探して予約し、支払いまでできる。さらにアプリでサービスやメンテナンスなどの注文ができるシステムを開発した。
管理側に対しては、物件管理プラットフォームやオペレーション、ダイナミックプライシングを効率的に進められるシステムを開発。特にダイナミックプライシングが重要で、1週間のうちに20万件の月額の賃料の変更ができるという。
日本の市場については、「世界にも名だたる最大手企業があり、また今後は海外からの人材も増えてくる。そういった変化の中でフレキシブルリビング事業は日本でも台頭する」との考えを示した。