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3Dプリンタでコンクリート製の屋根を印刷 清水建設

清水建設は、3Dプリンタでコンクリート構造体を適用した駐車場屋根構造物の印刷に成功した。3Dプリンティング用のコンクリート材として自社開発した「構造用ラクツム」を建築構造体のプリント施工に初適用したもの。

適用物件は、東京都江東区に建設中の自社施設「潮見イノベーションセンター(仮称)」内に整備した駐車場の屋根構造物。膜屋根の外周を囲うアーチ状の構造体の一部に、構造用ラクツムを積層して構築した「プリント構造体」を適用した。屋根を支持する斜め柱のコンクリート型枠として、構造体の一部として構造計算に算入できる「プリント構造体型枠」も活用している。

構造用ラクツムは、2020年に3Dプリンティング用に独自開発した繊維補強セメント複合材料「ラクツム」に粗骨材を混練したコンクリート材。ラクツムは、形状を保持したまま2m以上の高さまで積層でき、その積層体は通常のコンクリートと同等以上の力学特性と耐久性を備えていたが、モルタル材であるラクツムの積層体は、建築法規の制約により構造部材として適用することが難しく、その性能に反して活用範囲が限られていた。

そこで、ラクツムに粗骨材を混練したコンクリート材・構造用ラクツムを新開発。建築物の構造耐力上主要な部分に使用できる指定建築材料として国土交通大臣の認定を取得した。これにより、建築物ではこれまで非構造部材や仕上げ部材に限られていた3Dプリント施工の活用範囲が拡大。施工の省力化・省人化を実現しながら、プリント材を構造体として活用することで部材断面の最小化が可能になった。構造用ラクツムは、指定建築材料として大臣認定を受けた国内唯一の3Dプリンティング材としている。

今回適用したプリント構造体は、ロボットアーム型3Dプリンタによる構造用ラクツムの積層と所定のプリント層間への鉄筋の敷設を繰り返して造形したもの。高強度コンクリートと同等の性能を有する構造用ラクツムは、せん断強度が高いため、層間の軸方向に敷設した主筋のみで部材に必要な構造性能を確保している。構造的に最適な形状となるよう、部材断面が徐々に変化するアーチ形状とし、プリント時のノズル移動速度をきめ細かく制御することで、複雑な形状を直接造形した。

斜め柱の施工に利用したプリント構造体型枠もRC柱の構造体として機能する。これにより、非構造体のプリント型枠を利用した場合と比べ、型枠内に打ち込むコンクリート量を抑制し部材全体の断面積を最小化することが可能になり、合理的な躯体デザインの実現が可能となった。