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大林組、金属材料を造形する3Dプリンター開発
2025年5月20日 17:27
大林組は、炭素鋼およびステンレス鋼を造形する金属3Dプリンターを開発し、大型モックアップ「ザ・ブレンチ」を製造した。
建設業界では、就労人口の減少などを背景に施工の自動化や省力化のニーズが高まっており、建設用3Dプリンターの活用が進んでいる。その多くはセメント系材料を用いた3Dプリンターで、製作物を使用する条件や環境に合わせて、金属や樹脂など材料の使い分けが必要となる。
特に金属部材は形状やサイズが決められた規格品は幅広く流通しているものの、特殊な形状の部材を一品生産する場合や、多品種を少量生産する場合はコストやリードタイムに課題がある。
そこで大林組は、金属材料による3Dプリンターを開発。モックアップは樹脂製の屋根と座面を取り付けて完成し、その後、暴露試験で金属3Dプリンターで製造された部材の耐久性などを評価する。
開発したのは、一般的な溶接の仕組みで炭素鋼を積層する3Dプリンター。金属3Dプリンターにはさまざまな造形方式があるが、大林組が開発した方式のWAAM(Wire-Arc Additive Manufacturing)技術は大型部材にも対応でき、高速かつリーズナブルに部材を製造できるという。
しかし、WAAM技術による金属3Dプリンターは、非鉄金属の適用例は多いものの、建設工事において多用される炭素鋼では、効率的なスラグの除去方法や造形精度の確保が課題となっていた。
こういった課題に対し大林組は、材料の組み合わせや溶接パラメータを最適化したスラグの生じない溶接法を用いて炭素鋼の部材を造形する金属3Dプリンターとした。ザ・ブレンチでは金属3Dプリンターを用いて主材を造形。各種強度試験を通じて、炭素鋼から形状自由度の高い部材を製作する上での知見を獲得した。
ザ・ブレンチは、金属3Dプリンターの特色を引き出すことをコンセプトにデザイン。金属3Dプリンターで製作可能なサイズを考慮し、30体のピースに分割して製造した。各ピースは異なる形状ながら、効率を落とすことなく最小限のリードタイムにて製造でき、従来の鋳造による製造方法と比較してコストや納期の大幅な削減が可能であることを確認した。
今後はザ・ブレンチの製造で得た知見を基に研究開発を進め、金属部材での特殊な形状や多品種少量生産といったニーズに対して、低コスト、短工期な製造方法を構築することを目指す。なお、ザ・ブレンチのネーミング由来は、Branch(枝)とBench(ベンチ)の組み合わせによる造語。