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軍艦島に新たな建物 保存・整備・公開活用に向けた研究拠点
2025年10月16日 11:40
清水建設は、「軍艦島」の通称でも知られる長崎市の「端島炭坑」の保存・整備および公開活用に取り組むことを目的に、長崎市と連携協定を締結した。協定に基づく取り組みの第1弾として、木造平屋の研究拠点設置を計画している。
端島炭坑は世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産で、建築史的に価値ある建物群が残っている。特に「三菱端島砿業所30号アパート」、いわゆる30号棟は大正年間に建設された日本最古の鉄筋コンクリート造集合住宅とされ、清水建設が新築および改修工事を担ったという歴史がある。
世界遺産登録に際しては、清水建設が端島に所在するほとんどの建造物の建設、保全に当たってきたことから、歴史資料として保管する図面類を長崎市に提供している。
長崎市と長崎市教育委員会は2017年12月に「『世界遺産明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』高島炭坑 端島炭坑 修復・公開活用計画」を策定。その第2段階として、長崎市は端島における避難施設の整備を推進している。
清水建設は従前より「アクセス困難で不十分なインフラ環境下での施設整備・運用技術の開発」に取り組んでおり、長崎市による端島での取り組みに協力することが同社の技術開発に活かせるとの考えを持つ。また、長崎市としても清水建設が保有する技術・ノウハウを無償で活用できることから、相互に有益であるとし、清水建設から長崎市に連携を申し入れ、協定の締結に至った。
連携協定に基づく取り組みの第1弾として、暴風雨や高波など過酷な環境に配慮した高耐久の、木造平屋の研究拠点設置を計画。島内にある史跡構成要素以外のガレキを基礎部分に再利用するなど、揚陸資材の削減も図る。床面積は約50m2。
研究拠点は、清水建設および長崎市の関係者が端島に上陸した際の事務所や備蓄倉庫、急な荒天時の緊急避難所としての利用を想定している。また、拠点の運用を通じ、自己処理型水洗トイレの有効性を検証する。
11月着工、12月竣工の計画で、設備関係の試用・調整を経て、3月から運用を開始する。
清水建設は今後、長崎市と協議しながら端島で行なう具体的な取り組みを詰めていく。著しく劣化が進む建物群の保存・整備に貢献するとともに、端島を観光資源として活用していくためのVRコンテンツの制作などにも取り組むとしている。

