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トヨタ社長交代 BEVファーストで「豊田章男」経営推進

トヨタは、1月26日に発表した役員人事について記者会見を行なった。4月1日付けで行なわれる役員人事では、内山田竹志会長が退任し、豊田章男社長が会長に、佐藤恒治執行役員が社長に就任する。

佐藤恒治執行役員

佐藤恒治氏は記者会見で、新体制のテーマは「継承と進化」と定義。継承すべきは、豊田社長がこの13年間土台を作りあげてきた商品と地域を軸にした経営とし、この13年でTNGAプラットフォームやカンパニー制の導入により、素性の良いクルマ作りと開発効率が向上。こうしたクルマ作りの基盤を生かし、「町いちばんのクルマ屋」であることを進めた結果、グローバルでバランスが取れた事業構造になったという。損益分岐台数もリーマンショック時にくらべて30%以上改善し、なにより、トヨタに浸透した「もっといいクルマをつくろうよ」という価値観が重要で、「クルマ屋と言える会社」に変わってきたという。

4月からは「豊田章男」経営を新体制で推進。新体制では「モビリティカンパニーへの変革」を進めるとし、「電動化」「知能化」「多様化」の3点をテーマに掲げた。

電動化としては、暮らしを支えるエネルギーについて、エネルギーセキュリティを視野に入れたクルマを開発。カーボンニュートラル社会の実現にも貢献する。世界のエネルギーの状況は多様で、ガソリン、ハイブリッドなど「マルチパスウェイ」を念頭に全方位で製品提供を行なうことを前提に、BEVも重要な選択肢とした。

これまでトヨタマスタードライバー(豊田章男氏)とともに、トヨタらしい、レクサスらしいBEVを作る準備を推進してきており、目指すべきBEVのあり方が見えてきたという。これからは従来とは異なるアプローチで足元のラインナップを拡充し、2026年に電池やプラットフォーム、クルマの作り方など全てをBEVに最適化する次世代BEVをレクサスブランドで開発する。

知能化としては、「クルマの声をもっと聴く」とし、クルマ屋にしかできない知能化を目指す。ドライバーの操作やタイヤの情報など膨大な情報からはクルマ屋にしか活用できない情報があるといい、こうした情報を高度に統合化して制御すれば燃費や乗り味の改善、安全運転サポートなど利用者の一人一人に合わせてクルマの価値を高めることができるという。具体的にはソフトウェア基盤「Arene(アリーン)」を活用。販売店との連携やアプリを通じた新サービスにもつながり、ハードとソフトの両輪でクルマの知能化を目指す。

多様化としては、クルマのある暮らしを豊かにすることを目指す。トヨタは世界中で事業を行なっており、地域毎、世代毎にも異なるニーズに対して、商品、サービスも多様な選択肢を用意する。

BEVファーストの事業改革

これらのテーマ実現に向けて、重点事業として3本柱を挙げた。

一つ目は次世代BEVを機転とした事業改革。魅力的なBEVを開発するにはクルマの構造の合理化、BEVファーストの発想でものづくりから販売、サービスまで事業のあり方を大きく変える必要がある。それをリードするのがレクサスだという。

二つ目はトヨタが、東富士に建設予定の実証都市「Woven City(ウーブンシティ)」の取り組みの強化。ウーブンシティは、新たなモビリティ社会の創造に向け、社会インフラまで含めたモビリティのあり方と、クルマの自動化に向けても重要な役割を果たすものと位置づけ。モビリティのテストコースの街として、実証実験を強力に推進するという。

三つ目はアジアのカーボンニュートラルの実現。産業や国を超えた連携を通じ、電動化やモビリティの実証を進める。

佐藤氏は、「新体制の強みはサッカーチームのように柔軟にフォーメーションを変えられること」とし、「適材適所」と「肩書きより役割」という考え方の元に人員体制を整えたという。これまで豊田社長の間近で経営を学んできた副社長3人は重点三事業の陣頭指揮をそれぞれ担当。近 健太副社長は、ウーブンのトヨタ専任CFO、前田昌彦副社長は、新しいアジア戦略をリードするアジア本部長、桑田正規副社長はトヨタ自動車九州副社長を務めながら、レクサスBEV事業戦略と、レクサス専用工場である九州の生産体制再構築を推進する。