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三井住友の新戦略、銀行・証券・決済融合の「Olive」

三井住友フィナンシャルグループと三井住友銀行、三井住友カードは、3月1日から個人向けの総合金融サービス「Olive(オリーブ)」を提供開始する。銀行・決済・証券を一体化したサービスとして展開し、三井住友銀行の今後の新規口座開設は「Olive」を基本とし、支店の制限をなくしていく。

従来の金融の概念を打ち破る新サービスとし、銀行口座やクレジットカード、デビットカード、SBI証券のオンライン証券、オンライン保険などの機能をアプリ上で連携させて展開。「金融・サービスのフルモバイルサービス。金融スーパーアプリ」(三井住友フィナンシャルグループ 太田純 社長兼グループCEO)とする。基本的には、「三井住友銀行アプリ」と三井住友カードの「Vpassアプリ」を利用し、どちらから入っても「Olive」サービスという仕組みになる。

三井住友銀行や三井住友カード、SBI証券の証券口座など、銀行・決済・証券を集約し、シームレスに利用可能にする。例えば、住所変更なども1度の変更で複数のサービスが反映される。また、Vポイント、保険などの機能も集約してる。

また、1枚のカードで、キャッシュカードの機能とクレジットカード、デビットカード、ポイント払い(プリペイドカード)の機能をアプリで切り替えできる世界初の「フレキシブルペイ」も搭載。カードもナンバーレス化する。

グループサービス集約のため、グループ共通の「SMBC ID」を新たに提供。まずは三井住友銀行アプリとVpassアプリのどちらにもメールアドレスひとつでログイン可能とする。

Oliveでは、アプリ上で銀行手続きが完結。デジタル上の支店で口座開設できるが、全国のSMBCの店舗やコールセンターでも相談できる。すでにSMBCの口座を持っている場合は、Oliveの申し込みにより、現在の口座で新たな決済サービス機能や追加特典を利用できる。

両A面カードやSBI証券カード積立など銀行・証券・決済融合

Oliveでは発行カードに応じて、一般、ゴールド、プラチナプリファードの3つのプランを用意。口座利用については差はないが、年会費は一般が無料、ゴールドが年間5,500円、プラチナプリファードが33,000円。継続特典としてゴールドは年100万円利用で10,000ポイント、プラチナプリファードは年400万円利用で40,000ポイントを付与する。

ポイントはVポイントで、基本ポイントは一般とゴールドが0.5%、プラチナプリファードが1%。コンビニ・飲食店限定の5%還元も行なう。また、SBI証券によるカード積立投資のポイント還元は一般カードが0.5%、ゴールドが1%、プラチナプリファードが5%。ゴールドでは空港ラウンジなど、プラチナプリファードではラウンジやふるさと納税5%還元などの特典も用意する。

ナンバーレスな「両A面カード」

Oliveでは、Visaが開発した新機能を使った「フレキシブルペイ」を搭載したマルチナンバーレスカードを発行。1つのカード/アカウントでクレジット/デビット/プリペイド(ポイント払い)を切り替えて利用できる。また、キャッシュカード一体型のカードのため、銀行取引にも利用できる。

フレキシブルペイのカードは、署名欄や支店番号、口座番号などの情報を記載しない両A面の「マルチナンバーレス」デザインを採用。口座番号は三井住友銀行アプリから、カード番号は三井住友銀行とVpassアプリから確認できる。

シーンに合わせて、クレジットカードとデビットカードを切り替えられるほか、ポイントで支払いたい場合も、アプリで切り替えるだけ。利用明細はクレジット/デビット/ポイントをまとめて管理できる。

また、Oliveとフレキシブルペイの仕組みは、今後法人カードや提携カードにも適用していく。

SBI証券でカード投信積立を強化

銀行や決済サービスのほか、SBI証券との連携により、Oliveフレキシブルペイを活用した投資信託積立サービスやアプリ連携を強化する。

銀行・カード・証券口座を同時に開設できるほか、銀行・カードのアプリでSBI証券の残高・取引確認も可能。さらに、2023年度上期にはアプリからSBI証券の取引に対応。またVポイントアップなどの施策も強化し、SBI証券をSMBCグループサービスと密接に連携させていく。

SBI証券における、カードでの資産運用積立は月間150億円を突破。口座も43万件を超え、「予想を超える反応」(SBI証券 高村正人社長)としており、今後の大きな拡大を見込んでいる。

SBI証券では、ポイントアッププログラムも行ないカード積立で最大2%の還元を実施。5年累計で口座200万、クレカ積立設定額は3年後500億円を目指す。

なお、SMBCグループのSMBC日興証券については、対面での運用サービスなどを強化。ネットでの資産運用はSBI証券を主軸としていく。

また、三井住友カードによる「保険ポータルサイト」を活用し、保険サービスをシームレスに連携した保険サービスを提供できる。保険商品は商品に応じてパートナーが参画し、各種サービスをフルラインナップで提供する。

まずは、ライフネット生命と提携。また、三井住友海上火災保険と協力し、4つの選べる無料保険や「Vポイントが貯まる保険」などを提供する。三井住友生命保険との協業による健康増進プログラム「Vitality」なども展開予定。

共通ポイントを武器に

入会特典も充実し、一般カードで31,000ポイントを付与。また、三井住友カードで展開しているVポイントの付与率アップサービスでも、Olive利用でさらに5%などポイント施策を強化。今後VポイントとTポイントの統合も予定しているが、「特定の経済圏に依存せず、Visaのネットワークで使える」という共通ポイントの使いやすさを武器に、導入や利用の拡大を図っていく。

Oliveでは、5年間で1,200万のアカウント開設を計画。年間の三井住友カード新規加入も500万件を予定している。

金融サービスの「ニュースタンダード」

また、今後の展開として「非金融」サービスもOlive上で展開していく計画。3月のOliveのスタート後に強化していく方針で、ファミリー層向けのサービスや高齢者向けのサービスなど、パートナーと連携し、Oliveの中で様々なサービス連携を図っていく。

SMBCグループでは今回のOlive展開により、リテール業務のデジタル化を推進する。その中で店舗の役割も変化し、「Oliveで取引店の考えはなくした」(三井住友FG 太田社長)と語るように、Oliveの新規口座開設は特定の支店ではなくデジタル専用の支店となる。

ただし、店舗での資産運用サービスやサービスのサポートなどは、どの支店の口座かなどによらずに受けられるようにする。こうした戦略変化により、「駅前の一等地の大店舗は要らない。住宅地などのほうが便利になるかもしれない」(三井住友FG 太田社長)としており、リテール店舗の再編と連動しながら、Oliveによるデジタル化を推進する。

三井住友FG 太田社長は、「Oliveは1つの新商品というより、転換期の先にある金融サービスの『ニュースタンダード』の出発点」と強調。SMBCグループの個人向けサービスの核として強化していく。

左からVisaシータン・キトニー氏、三井住友カード 大西幸彦社長、三井住友FG 太田純社長、SBI証券 髙村正人社長