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山形新幹線 米沢トンネル整備へ。10分強のスピードアップ

山形県とJR東日本は、山形新幹線米沢トンネル(仮称)整備計画を推進するため覚書を締結するとともに、山形県内の鉄道沿線の活性化等を図り、相互の持続的な発展を目指すことを目的とした包括連携協定を締結した。

米沢トンネルの事業区間は、奥羽本線 庭坂駅(福島県)~米沢駅(山形県)間の約23km。時速200km以上の高速走行も可能な緩やかなカーブのトンネルとする計画で、10分強のスピードアップという整備効果が得られるとしている。また、大雪などによる運行への影響を減らし、福島~米沢間の安全性・安定性向上も見込む。

工期は着工から約15年を想定。事業費は約1,500億円。山形県は「調査を含めると20数年を要するビッグプロジェクト」としており、「山形県と首都圏を結ぶ大動脈である山形新幹線の安定性や速達性の向上はもとより、北海道・東北新幹線をはじめ全国の新幹線ネットワークの安定性向上への効果も期待され、国土全体の強靱化にもつながる極めて重要なプロジェクト」と位置づける。

山形新幹線の福島~米沢間は、山岳区間を走り、雨、雪、動物との衝突などによる運休・遅延が発生している。こういった問題から、'17年11月にJR東日本から山形県に対し、同区間の抜本的な防災対策となるトンネルのおおよそのルートや事業費などの調査結果が示され、'18年3月から山形県とJR東日本との実務者レベルでの検討を実施。'21年3月には、JR東日本から時速200km以上での高速走行も可能な緩やかなカーブのトンネルを検討するため、より詳細な調査を山形県と共同で実施したい旨を提案した。

山形県はトンネルの早期事業化に向けて、この提案を受け入れ、調査費用の一部を負担することとして、'21年9月補正で債務負担行為を設定し、'22年度当初予算に調査費(1,958万円)を計上するとともに、'22年9月補正においても債務負担行為を設定('22~'24:限度額2億8,100万円)している。

現在は、整備計画の事業化に向けた共同調査を推進し、連携方策について山形県とJR東日本との間で引き続き協議を進めている。

今回の覚書は、整備計画の早期実現に向けた基本的な事項を定めることを目的とし、取り組みの推進に当たっては、緊密な連携のもと、情報の交換等に努めるとしている。実施内容は、事業スキーム確定に向けた検討、事業化に資する調査および検討、財政的支援を得るための政府への働きかけ等。

包括連携協定では、山形県内の鉄道沿線の活性化等で協力。地域資源の活用促進、公共交通利用の推進および交通系ICカードの利活用、防災・災害対策、まちづくりの推進の分野で連携する。協定の期間は10月24日(締結日)から10年間。

地域資源の活用促進においては、ワーケーションの推進による旅行需要創出、駅構内等での産直市の開催、県産品の販売、観光キャンペーンの展開、首都圏等との相互の移動需要喚起といった、観光資源の活用や地域活性化イベントで協力する。

また、ビジネス需要拡大、地域産業の活性化に向け、列車荷物輸送、JR東日本グループとの連携による新規事業、コワーキングスペースの利用促進において協働する。

公共交通や交通系ICカードにおいては、駅で接続する二次交通の利便性向上や、交通系ICカード利用促進およびJRE POINT生活圏の拡大といった、交通ネットワーク構築や交通系ICカード利活用による利便性向上を図る。

防災・災害対策においては、災害発生時の運休情報等の速やかな共有・対応に関する連携や、災害発生が予想される際のJR東日本への現地情報の提供等に取り組む。

まちづくりの推進においては、駅を中心とした、都市機能充実を目指した総合的なまちづくりに向けて協働する。