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ソフトバンクが挑む「物流自動化」 高密度自動倉庫など千葉に新施設

ソフトバンクロボティクスは、9月12日に物流自動化事業の発表会を行なった。千葉県市川市のESR市川ディストリビューションセンター内に体験施設「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab」をオープンし、国内外のロボット技術やAIを使った物流自動化技術の提供に乗り出す。

SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab

世界の技術で物流を最適に

ソフトバンクロボティクス 常務執行役員 兼 CPO ロジスティクス事業本部 本部長 坂田大氏

ソフトバンクロボティクス 常務執行役員 兼 CPO ロジスティクス事業本部 本部長の坂田大氏は、同社の物流最適化ソリューション戦略について解説した。同社は現在、11カ国に拠点を持ち、500社以上のパートナーとビジネスを進めている。現在、70カ国以上で、累計35,000台の同社のロボットが稼働しており、業務用屋内サービスロボット売上では世界一位となっている。

ソフトバンクロボティクスの導入ロボット数は累計35,000台

物流現場ではいま、もともと生産年齢人口の減少があるところに新型コロナ禍が起き、EC需要が増加し、小口の配送量が増え、さらに労働力不足が起きた。また働き方改革に伴う残業制限などもあり、自動化は待ったなしの状況にある。富士経済の調査では次世代物流システムサービス市場は今後、年率8.9%で成長するとされている。

次世代物流システム市場は年率8.9%で成長すると予想される

今回物流サービスを始めるにあたり、世界中の技術を探索したという。入荷、棚入れ、ピッキング、似合わせ、梱包、仕分け、出荷といった一連のフローの各プロセスの自動化だけではなく、前後を適切に組み合わせることで全体を最適化する。坂田氏は「事業をステルスで始めたのは半年くらい前。これからさらに顧客と話をして、より全体最適を図れるようなソリューションパッケージを準備していきたい」と語った。プロセス分析をして運用案を作り、ROIを出して顧客先に導入することで、物流課題の解決を目指す。

今回、パートナーとなった企業

坂田氏は「今日を境に全力でビジネスを進めていく。イノベーションラボは単なるショールームではなく体験型。テクノロジーパートナーも今後どんどん導入して日々アップデートしていきたい」と語った。オンライン予約は9月20日からとなる。物流自動化ビジネスでは後発だが、価格面でも「大胆な提供」を行なっていくという。

各プロセスでの自動化を進める
プロセスだけでなく全体の最適化も進める

中核は高密度自動倉庫システム「AutoStore 」

AutoStore。小型ロボットがグリッド上を走り、ビンと呼ばれる小型コンテナを操作して入庫出庫を行なう

中核となる高密度自動倉庫システム「AutoStore(オートストア)」はノルウェー製。専用コンテナを高密度に収納し、「グリッド」と呼ばれるアルミ製のレール上を自走箱型ロボットが走り回って、指定された商品を吊り上げて出し入れするキューブストレージを活用したロボット倉庫型ピッキングシステムだ。通路を必要とせず天井高いっぱいまで倉庫の容積を活用できる。2021年にソフトバンクが株式の40%を28億ドルで取得しており、ソフトバンクロボティクスがグローバルディストリビューター契約を締結している。

AutoStoreの小型ロボット。いくつかタイプがあり、こちらでは「R5」が20台使われている
ロボットを管理するサーバー

AutoStore自体も進化しており、最適なロボット台数やルーティングを出すアルゴリズムの改善によりスループットは従来比4倍となっている。アパレル、家電、ヘルスケア、自動車、電子部品など幅広い業界で使われている。日本用に耐震も施し、また日本初となる出荷時に順番を揃えるためのバッファを備えた「リレーポート」も紹介する。

入庫の様子。人は画面指示に従うだけでいい
日本初となるリレーポート。奥に6個のバッファスペースがあり、次の自動機へ荷物を渡すときに一定の順番で出庫できる機能を持つポート

特にアジアでの展開に注力する。AutoStore APAC Sales Vice PresidentのSven Age Hjorteland氏は、「イノベーションラボで重要な地位を占めていることを嬉しく思う」とビデオでコメントを寄せた。

AutoStoreを使うことで保管効率や出荷数が上昇、コストは減少
AutoStoreのソフトウェア、アルゴリズムも進化中
導入企業は様々
AutoStore APAC Sales Vice President Sven Age Hjorteland氏

ARスマートグラスを使ったピッキングアシストソリューション「Picavi」

「Picavi」。ARグラスとハンディ端末の代わりとなる手首のスキャナーでピッキングをアシスト

ARスマートグラスを使ったピッキングアシストソリューション「Picavi(ピカビ)」も日本初導入。Picaviはドイツの会社で、作業時の目の前の風景とデジタル情報が重ねて表示される。また音声コントロールも可能で正確なピッキングを助ける。このソリューションをVaaS(Vision as a Service)と呼んでいる。30%の時間削減ができ、エラー発生率も30%下がり、疲労も少ないという。導入を決めた理由はAutoStoreと連携する実績があったこと。

導入は日本初
Picavi CEOのCarsten Funke氏もビデオで喜びのコメントを寄せた。
スマートグラスだが疲労は少ないという
手首のスキャナーはハンディ端末の代わりとなる
バーコードリーダーとして用いる

パレタイズ、デパレタイズをティーチレスで行うXYZ Robotics

XYZ Roboticsのパレタイジング、デパレタイジングロボットシステム

XYZ Roboticsはパレタイジング、デパレタイジング(パレットへの荷積と荷下ろし)を行なうロボット。中国の会社で、今回日本で初めて販売連携した。今回デモは行なわれなかったが、ティーチレスでさまざまな段ボールサイズの混載に対応するという。

3次元カメラを活用してティーチレスで箱をピッキングできる
さまざまな段ボールケースの混載に対応する
物流以外の業界でも使われている
XYZ Robotics Founder & CEO Jiaji Zhou氏

自動倉庫と連携できる様々なソリューションも紹介

このほか、AutoStoreと連携するさまざまなソリューションが併せて紹介された。自動搬送型RFIDトンネル式ゲート「TG-1800」は東芝テック製。RFIDを使って一括検品を行なう。

RFIDゲート「TG-1800」

デジタルピッキング「SAS(シャッターアソートシステム)」はシャッター付き表示器(ポカヨケゲート表示器)を活用し、仕分けミスをゼロに近づけることができる小口仕分けシステム。リストにあるものを配って歩く「種まき」、リストにあるものをピックアップしていく「摘み取り」の両方に対応可能。これもAutoStoreと連動する。箱に直接入れるタイプでは検品も不要となる。

デジタルピッキング「SAS」
人は蓋が開いているところに入れればいい
直接出荷用の箱に入れることも可能

次世代型ロボットソーター「t-Sort」は中国 Zhejiang Libiao Robots製の自動仕分けロボット。日本代理店である+Automationと連携して導入する。小型の無人搬送車(AGV)により倉庫内の物品を搬送し、少人数・短期間・大量の仕分け作業を実現する。従来のソーターと比較すると処理能力の増減や原状回復における柔軟性が高く最短2カ月で導入可能で、省スペース(対ソーター比50%以下)を実現するとされている。これもAutoStoreと連動できる。なおAutoStoreは他社のロボットとも連携できる。

「t-Sort」
「t-Sort」の小型AGV
自動で仕分けする
AutoStoreの出庫と連携可能

清掃ロボットや配膳ロボットは倉庫でも活躍

清掃ロボット2機種も紹介された。中国Gaussian Robotics製「Scrubber50(スクラバーフィフティ)」は床洗浄、床磨き、拭き掃除の3つを行なえ、2021年11月時点での導入実績は世界30カ国で1,500台。「Whiz」シリーズは2019年からソフトバンクロボティクスが展開している掃除ロボットだ。

「Scrubber50」(左)と 「Whiz i」(右)

また、運搬ロボット「Keenbot(キーンボット)」は配膳に使われているロボットだが、これも倉庫内で使えるという。狭い通路でも人や障害物を避けながら小物の搬送を行なうことができる。

搬送ロボット「Keennbot」

このほか、安川電機グループ YE DIGITALの物流倉庫実行(運用管理)システム「MMLogiStation」も展開する。AutoStoreと既に連携していたことが大きかったという。

このほかのソリューションはパネルで紹介する
梱包システムや自動フォークリフトなどもラインナップされている

物流展ではVRを使って展示

「第15回 国際物流総合展 2022 」に出展予定

ソフトバンクロボティクスは9月13日〜16日に東京ビッグサイトで開催される「第15回 国際物流総合展 2022 Logis-Tech Tokyo 2022」に初出展予定。物流ソリューションを紹介し、今回の「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab」の先行の見学申し込みもブースで受け付ける。「AutoStore」はVRで紹介する。

「Innovation Lab」を上から見たところ。左側がAutoStore