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ロボットでDX化 ソフトバンクとアイリスオーヤマ資本提携

アイリスオーヤマとソフトバンクロボティクスグループは2月2日、資本業務提携を発表し、共同で記者会見を行なった。ロボット市場における中長期的な需要創造と社会解決を目指す。アイリスオーヤマはソフトバンクロボティクスグループが実施する総額100億円の第三者割当増資を引き受ける。出資は1月末に実施済み。

アイリスオーヤマとソフトバンクロボティクスグループは2021年2月に合弁会社アイリスロボティクスを設立し、業務用のロボットソリューションを提供している。両社は今回の資本業務提携によって連携をさらに強化。労働力不足解消とDX化に向けた取り組み、脱炭素社会の実現・CO2排出量の削減への貢献、新たなソリューションの開発と向上を目指す。

労働力不足解消とDX化に向けた取り組みについては、深刻な労働力不足とコロナ禍におけるDX化の加速という状況において、サービス・ロボット分野を成長分野と捉え、企業や医療施設、教育機関への導入と開発など領域を拡大する。

脱炭素社会の実現・CO2排出量の削減への貢献については、無線制御システム「LiCONEX」とアイリスオーヤマのサービス・ロボットをつないで業務効率化と改善を図る。

新たなソリューションの開発と向上については、DX化、省人化、効率化を推進し、社会変化に対応したロボットの研究・開発を推進する。ソフトバンクロボティクスグループが持つAIロボット分野の知見と技術、アイリスオーヤマの商品開発力の相乗効果により、新たな市場を創造することを目指す。

配膳・運搬ロボット「Serviアイリスエディション」
清掃ロボット「Whiz i アイリスエディション」
配膳・運搬ロボット「Keenbot アイリスエディション」

アイリスオーヤマのIoT技術とロボットで業務効率化

アイリスオーヤマ 代表取締役社長 大山晃弘氏

会見ではまず、アイリスオーヤマ 代表取締役社長の大山晃弘氏が登壇。大山氏は「アイリスオーヤマには様々なノウハウがあるし、ソフトバンクロボティクスには技術がある。ポイントは2つ、SDGsと業務DX。サービスロボットでこの2つを実現する」と語った。

サービスロボットで「SDGs」と「業務DX」を推進

具体的には、今あるロボットを使った業務DXを主軸とし、アイリスオーヤマのIoTセンサー技術や無線通信システムとロボットを組み合わせる。たとえば現在は清掃ロボットは決められたスケジュールで定期的に清掃しているが、センサーを使うことで汚れたら清掃したり、ゴミ箱がいっぱいになったら交換するといったやり方で業務を効率化する。ビル全体の電力使用量の見える化なども進める。大山氏は「様々なデバイスを使って、効率的な働き方を提供できる」と語った。

ロボット自体もエレベータ連携することで複数フロアでのオペレーションが可能になる。アイリスオーヤマの空気清浄機技術とロボットによる床面清掃の組み合わせなども行なっていくという。また、飲食店での配膳・運搬業務についてもAIカメラを利用することで、おすすめ商品をタブレットなどで提供することで、より飲食店の魅力を広げていきたいと語った。

そして「夢のような事業をこれから進めていきたい。日本はまさにコロナ、人口減少といった大きな課題を抱えている。今回の出資を皮切りに日本社会の課題解決につながればと考えている」と述べた。

センサー技術とロボットを組み合わせることで業務を効率化

2社の長所を組み合わせて労働人口減少に挑む

ソフトバンクロボティクスグループ 代表取締役社長 兼 CEO 冨澤文秀氏

続けて登壇したソフトバンクロボティクスグループ 代表取締役社長 兼 CEOの冨澤文秀氏は「ロボット事業を始めて約8年経過した。日本はITでは海外勢に押されたが、ロボットだけは絶対に負けたなくない」と述べ、同社ではデジタルトランスフォーメーションならぬロボット・トランスフォーメーション、「RX」を推し進めることで日本の課題を潰していきたいとした。

そして「8年経ってソフトバンクロボティクスはスマートロボットのトップ集団の1つだと言える。ワールドワイドにも浸透してビジネスもやりやすくなっている。いっぽう労働人口減少に関しては、体感できるくらい切迫したものになっている。2030年には600万人くらい労働人口が減少する。これに対してどこまでできたのかというとまだまだ全然足らない。もっと急激にニーズに合ったかたちにしたい。我々だけでは力不足。素晴らしいパートナーを見つけられればブーストできる。様々な企業と話をしたが、アイリスオーヤマさんと目標が一番合致した。顧客接点、ソリューション能力、商品開発も我々以上にある。長所短所を補えるパートナーになるのではないかと考えて資本業務提携をさせてもらった」と語った。

調印式が行なわれた

Keenbotアイリスエディションもラインナップに

「Keenbotアイリスエディション」

同日、中国Keenon Robotics製の配膳・運搬ロボット「Keenbotアイリスエディション」の国内販売開始もアナウンスされた。Keenbotは最大4台のトレーを搭載し、大容量の配膳や下げ膳に対応する。一段あたり10kg搭載できる。

また、時速0.3kmから3.6kmまでのフレキシブルなスピード変更が可能で、行きと帰りで設定スピードを変えることができる。最大40kgまで搭載できることから、レストランやゴルフ場、ホテルなど広範囲の会場での稼働に適しているという。ナビゲーション方式は天井マーカー式。ロボットは出発ボタンを押すだけで目的地まで食事等を搬送する。

大容量の配膳に対応、スピードを行きと帰りで変更可能
天井の位置マーカー

両社はすでに販売中の配膳・運搬ロボット「Serviアイリスエディション」に加えて、新たにラインナップに加えることで、導入企業の店舗規模や使用環境、配膳容量に合わせて、より適切で柔軟な製品提案を行ない、多様なニーズに対応できるとしている。利用料金は月額69,800円を予定する。

Keenbotは大型施設での活用を推奨

飲食業の人手不足を解消

アイリスオーヤマ 執行役員 BtoB事業グループ メーカー本部 本部長 兼 ロボティクス事業部 事業部長 本所翔平氏

アイリスオーヤマ 執行役員 BtoB事業グループ メーカー本部 本部長 兼 ロボティクス事業部 事業部長の本所翔平氏は労働人口減少を改めて強調、課題を解説した。各企業は2030年の640万人の労働人口減少を想定して経営することが求められている。なかでも労働人口不足が深刻だと考えられるのが飲食・サービス業界だ。2030年には400万人もの人手が不足すると考えられている。サービスロボットを使ってこの人手不足を解決することが、社会課題解決において一番大きなインパクトを与えられると考えられる。

2030年には640万人の労働人口が不足する
飲食業は特に人手不足が深刻

飲食サービス業界ではコロナ禍も深刻だ。2019年8月時点で549万人いた労働人口が、2021年8月時点でおおよそ488万人、つまり2年で61万人の人手が減少した。加えて人件費高騰、採用難などの課題がある。コロナ禍において人との接触を恐れる人も多い。いっぽうリベンジ消費も起こっているが、コロナ禍によって感染対策の業務も増え、飲食業に従事している人たちの業務負荷・雇用の不安が起きている。

コロナ禍で労働負荷も増大

アイリスオーヤマとソフトバンクは、ここに配膳ロボットを投入することで、業務効率化とサービス品質の向上が可能になると提案している。本所氏は「ロボットと人の共存により、ロボットの効果が出てきている。配膳下げ膳の業務負担を70%削減できるという効果も見えてきている。それ以上に、効果が大きい点は、時間の余裕ができることでサービス業の本質でもある接客対応、おもてなしの余裕が生まれていること」と語った。

ロボットでサービス品質も向上

アイリスオーヤマでは清掃ロボット「Whiz i」も市場に投入している。国内累計で2,500社に導入しており、世界シェアでもナンバーワンだという。また、Servi アイリスエディションは約300ブランドのレストランに導入。ロボットを使った業務効率化のコンサルティングも行なっている。

アイリスオーヤマのサービスロボット事業の実績

トータルのコンサルでニーズに対応

ServiとKeenbotの比較

「Servi」は小回りが効くことから通路幅が狭い店で、40kgを運べる「Keenbot」は、より大規模な店舗やホテルビュッフェ会場などで大量の配膳・下膳等での活用を提案する。

それぞれ異なる利用シーンでの活用を提案

アイリスオーヤマ本所氏は、先行で試験運用を行なっていた「シンガポール・シーフード・リパブリック東京」での活用例をビデオで紹介。「ロボットが動くエリアと、ホールスタッフが動くエリアを分業することによって、うまくロボットと人との共存が行なえる」と述べた。

人の動線とロボットの動線。それぞれ使い分けることで効率向上が可能
トレイの高さ変更も可能

今後については、アイリスオーヤマの無線照明制御システム「LiCONEX」と連携。稼働状況をすくい上げて遠隔から確認したり、AI顔認証とサイネージを使った個別リコメンド、飲食業界における非接触注文システムとの連携などを進めていく。そして「これからよりロボットを使って、社会課題を解決するリーディングカンパニーとして取り組んでいきたい」と語った。

IoT照明との組み合わせなども進める

配膳ロボットはソフトバンクロボティクスやアイリスオーヤマだけではなく、各社から提供されている。本所氏は同社の強みとして「コストもあるが、配膳をするだけではなく、店舗でロボットと人がどういうふうに共存して業務を行なうのか、トータルでのコンサルティング・ソリューションが支持される理由だ」と述べた。