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ポケトークにアプリ版、翻訳で世界市場へ
2022年4月13日 19:00
アプリ版ポケトークを提供
翻訳の「ポケトーク」は、待望されていたというスマートフォンアプリ版を発表。4月25日から提供を開始する。アプリ版の利用料は、週額120円、月額360円、年額3,600円の3種類。初回利用から3日間は無料。
これまでポケトークの製品は買い切り型で、モバイル通信に対応するSIMカードや通信機能を内蔵した、専用ハードウェアの形で提供されてきた。今回の取り組みにより、ポケトークの機能をiOSとAndroidに対応するスマートフォンアプリとしても提供する。ハードウェアの販売は継続する。
アプリ版もシンプルなUIはそのままで、ボタンを押しながら喋り、ボタンから指を離すと翻訳を開始するという、トランシーバー型(プッシュ&トーク)の操作方法もそのまま。クラウドを介し言語に応じた最適な翻訳エンジンを自動的に選択して翻訳するといった機能も継承している。カメラで店頭のメニューなどのテキストを翻訳する機能も備えるが、基本コンセプトは音声翻訳で、シンプルで使いやすくした。
ポケトークの新しい展開に関しては、ソフトバンクと業務提携も実施。ソフトバンクとワイモバイルの回線のユーザーは、同アプリを初回の利用開始から6カ月間は無料で利用できるキャンペーンを実施する。キャンペーン期間は4月25日~10月31日。
海外で急成長、世界に打って出る契機に
ソースネクストはまた、ポケトークの事業をソースネクストの子会社として独立させた「ポケトーク株式会社」を2月に設立したことも発表している。
この背景には、アメリカ市場やヨーロッパ市場で、ポケトークが大きく売上を伸ばしていることが影響している。アメリカでは売上が前年比250%と大幅に成長、ヨーロッパ各国でも軒並み人気で、資金調達やブランド戦略の面でも“ポケトーク株式会社が提供するポケトーク”とするほうが最適という判断で、子会社化に至っている。実際に、会社設立から2カ月で14.1億円の資金調達に成功しているという。
すでにポケトークの販売規模は、アメリカ市場が日本市場を上回り、グローバルビジネスに発展しているという。一方で、ハードウェアの展開は各国の認証を通す必要があるなど展開速度に限界があり、またハードウェアの販売そのものを断念せざるをえない場合や地域もあるとのことで、こうした状況を補完し、世界各国で瞬時に展開できるという意味でも、アプリ版は重要な製品と位置付けている。
また、PCのビデオ会議向けに字幕を付与するサービス「ポケトーク字幕」を月額2,200円のサブスクリプションサービスとして提供することも発表しており、スマホアプリ版も含めてサブスクリプションサービスの拡大で、事業の成長がより見通しやすくなると期待している。
一方で、アプリ版の提供でハードウェアが不要になるかというと、そうでもないという。例えばスピーカーは専用端末のほうが聞きやすいように設計できる。また日本ではJR東日本や病院の中などで、顧客に対応する端末として利用されている実績があり、こうした法人需要では専用端末が運用しやすく、メリットが大きいといしている。
観光需要+物価安が追い風に
海外市場での旺盛な需要のほかにも、日本において、コロナ禍の後の観光需要が復活することにも同社は期待を寄せる。すでにこの10年で、賃金・物価水準の日本と欧米の乖離は大きくなっている(日本の賃金水準が長年上がっていない)状況であり、円安の進行と合わせて、賃金も物価も上がっている米国などから日本を見ると「なんでも安く買える」という状況になっている。これはビッグマック指数などでも顕著で、アメリカ人は日本に来れば普段の半分程度の負担でビッグマックを買えてしまうという状況になっている。
同社は、もともと旅行先として人気が高くなっていた日本に、(海外からみると)物価の安い状況が加わることは、コロナ禍の後の観光需要を大幅に後押しすると見ている。日本国内の英語力は低迷したままであり、ポケトークのような翻訳機、翻訳サービスにはまだまだ商機があるという見立てで、今後も形にとらわれずさまざまな製品を開発していく方針。
国内外での「大きな需要に応えていきたい」(ポケトーク 代表取締役社長兼CEOの松田憲幸氏)とし、「リアルタイム翻訳のグローバルリーダーになっていきたい」(同氏)と意気込んでいる。