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ポケトークが“同時通訳”に対応 英語会議も声と字幕で通訳

ほぼリアルタイムに音声読み上げも行なう「ポケトーク同時通訳」

ポケトークは、相手の話す英語を音声と字幕でリアルタイムに翻訳するPC用ソフトウェア「ポケトーク同時通訳」を発表、今冬に提供を開始する。価格は現在未定で、提供開始時に明らかにされる。

スマートフォン版の開発も検討しており、半年~1年後の提供を目指してプロジェクトが進行中。また大きく伸長している海外市場を背景に、2024年春を目処に米国ナスダックへの上場も計画していることが明らかにされている。

今回発表された「ポケトーク同時通訳」は、すでに提供していた「ポケトーク字幕」の機能を大幅に強化したもの。“同時通訳”機能として、合成音声による翻訳結果の読み上げ機能が追加されており、ユーザーはテキスト翻訳の字幕を読むよりもすばやく内容を理解できるようになる。ソフトウェアは、翻訳を必要とする側のみがインストールすれば利用できるなど、使いやすさの改善も図られた。

ポケトーク同時通訳の「同時通訳機能」は、相手が話す英語を、ポケトーク同時通訳のユーザーが使う言語(70言語に対応)に翻訳して、字幕を表示し、合成音声で読み上げる機能。同時通訳機能における相手の言語は、英語のみが対象。

なお、この音声読み上げの同時通訳機能は“片方向”が基本で、「英語→日本語、日本語→英語」といった双方向の同時通訳機能ではない。例えばユーザーが日本語を話す場合、話した日本語を英語などにテキスト翻訳し、字幕を映像に合成して相手に配信できるが、音声自体は日本語のままとなる。

また新たに、ノートパソコンなどを利用して、対面での会話にも利用できるようになった。さらに、PC上で英語の動画を視聴する際の、翻訳字幕としても利用できる機能も追加されている。

対応OSはWindows 10(64bit)、Windows 11。MacがmacOS Mojave 10.14~。なお、サービスとしての「ポケトーク字幕」は「ポケトーク同時通訳」に置き換わる。

字幕はほぼリアルタイムに翻訳結果を表示する一方、読み上げは完全なリアルタイムではなく、ある程度の意味がまとまってから読み上げを行なうなど、区切りや緩急をつけることでユーザーが理解しやすくなる工夫も加えられている。同社では同時通訳者の協力を仰ぎ、通訳の具体的な進め方などを研究して開発に反映しており、「まるで専属の同時通訳」と謳っている。

翻訳テキストに加えて音声読み上げもほぼリアルタイムに提供
オンライン会議だけでなく対面の場面でも利用できる
利用シーン
従来の「ポケトーク字幕」との違い。大幅に強化されている
ライブデモの様子。相手の英語が日本語に翻訳され字幕を表示、合成音声で読み上げる
日本語の話者(ポケトーク同時翻訳のユーザー)の回答は英語に翻訳され字幕として映像に合成。相手には映像として配信される
システムが認識している英語を大きく表示することも可能

観光解禁、3000台を無償貸与

ポケトーク 代表取締役社長の松田憲幸氏は、2月にポケトークの事業をソースネクストから独立させ子会社としたことで、人材確保や資金調達、グローバルでの製品・ブランド戦略など、さまざまな面で「我々のミッションに向かって、突き進めるようになった」と手応えを語る。

国内でポケトークの端末の販売金額シェアは99.3%と独占状態で、米国や欧州でも同様に高いシェアを獲得し、100万台の出荷が目前という。ただし、国内需要は訪日・渡航の観光客と連動していたこともあり2019年をピークとしてコロナ禍で激減している。一方、入国や渡航の制限が解除されたことで、今後は観光需要が急速に回復すると予測。

そこで観光産業向けの支援策として、11月末まで、1,000事業者に最大3,000台(1事業者あたり3台まで)のポケトークを無償貸与する方針を明らかにしている。

観光産業向けの支援策として、1,000事業者に最大3,000台のポケトークを無償貸与する

会議ツールとしても

松田氏は、日本人の労働人口は減少しており、観光産業だけでなく、国内の労働環境においても、同社がミッションに掲げる「言葉の壁をなくす」ことに取り組んでいく方針。

同社の調査によれば、外国人労働者を雇用しづらいと考える理由がコミュニケーションがスムーズにいかないという理由であることや、製品のグローバル展開に伴う英語の会議の増加など、英語を中心としたコミュニケーションが求められる場面は増えており、それが壁に感じられる場面もまた増加している。“同時通訳”を謳い、対面でも利用できるようにした「ポケトーク同時通訳」を、観光だけでなく、今後の労働環境を改善できるツールとして展開していく。

グローバル化の進展、労働人口の減少などにより、国内では労働現場でコミュニケーションの壁が顕在化

2024年春にナスダック上場を目指す

2月に実施した子会社化は、グローバル市場での事業の拡大も見据えたものだったが、米国市場での売上は2022年3月期時点で前年比3.4倍と大幅に伸長、今年はさらに伸びているという。米国では百貨店や物流の現場、運転免許センター、病院、学校、警察など、観光以外の幅広い分野でも大型の需要が続いており、移民の増加や、製造業での求人数の増加に伴い、さらなる拡大が見込めるという。

海外を含め、規模の大きな導入が続いていることもあり、同社は端末などを一括管理・分析できる「ポケトークコンソール」を開発、10月4日からグローバルで提供を開始している。

こうした好調を受けて、松田氏はナスダックへ上場する方針も明らかにしている。国内はコロナ禍で売上が落ち込んだ状況だが、その回復や、海外市場の拡大をみながら、2024年春を目標に上場したいという方針。「グローバルなマーケットで製品・サービスを育てていきたい」(松田氏)としている。

ナスダック上場を目指す
ポケトーク 代表取締役社長の松田憲幸氏