ニュース

30秒ごとのゲリラ豪雨予報。理研などが首都圏で実証実験

エムティーアイのスマホアプリ「3D 雨雲ウォッチ」

理化学研究所などによる共同研究グループは、首都圏においてゲリラ豪雨の予報を30秒ごとに更新し、30分後までの予報を実現する「超高速降水予報」のリアルタイム実証実験を行なう。高精度な気象レーダーとスーパーコンピュータにより、従来よりも高速な予報が可能で、急激に変化するゲリラ豪雨に備える。世界初かつ唯一の取り組みで、2013年10月から研究が続けられていたもの。

研究グループの構成は、理化学研究所、情報通信研究機構、大阪大学、エムティーアイ、筑波大学、東京大学、科学技術振興機構。

さいたま市に設置され、情報通信研究機構が運用する最新鋭のマルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)を使い、30秒毎の雨雲の詳細な観測データを取得。さらに筑波大学と東京大学が共同で運営するスーパーコンピュータ「Oakforest-PACS」を使って、リアルタイムで30秒毎に新しいデータを表示し、30分後まで降水予報ができるシステム。

既存の天気予報と比較して桁違いに高速とし、わずか数分で急激に発達するゲリラ豪雨を予測できる。

気象庁で運用されている局地モデル(LFM)は、全国を対象に解像度2kmで1時間毎に新しい観測データを取り込んでいるが、数分のうちに変化するゲリラ豪雨には対応が難しい。また、1kmより荒い解像度では、ゲリラ豪雨を引き起こす積乱雲を十分に解像できない。

2016年に研究グループは、スーパーコンピュータ「京」を使い、解像度100mの高精細シミュレーションと、フェーズドアレイ気象レーダの双方から得られるデータを組み合わせ、「解像度100mで30秒ごとに更新する30分後までの天気予報」を実現する「ゲリラ豪雨予測手法」を開発した。

しかし、当時は、30秒以内に完了しなければならない計算に掛かった時間がおよそ10分。必要な時間内に処理することができず、リアルタイム更新は不可能だった。

研究グループはその後、スーパーコンピュータ上での大規模データの入出力を抑える工夫を行ない、予報モデルの計算を高速化。およそ10分かかっていた計算時間を20秒程度にまで短縮し、約30倍の高速化に成功した。

また、超高速降水予報では、雲の発生、発達・衰弱・消滅などの気象学的なメカニズムを考慮したシミュレーションを実施。短時間で発達するゲリラ豪雨の急激な変化を捉えられる。現在使用されている気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」では数分で急激に発達する雨雲の様子は捉えきれないが、超高速降水予報システムではレーダーによる観測に近い予報ができるという。

(左)気象庁高解像度降水ナウキャストの10分後予測。(中)本研究の予報システムの10分後予測。(右)さいたま市でのMP-PAWR観測。赤いほど強い雨を表す

予報データは、気象事業法に基づく予報業務許可の元、理研の天気予報研究のWebページおよび、エムティーアイのスマホアプリ「3D 雨雲ウォッチ」で8月25日午後2時から公開する。

Webページ