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日本の独自技術でスマホの位置情報も高精度に みちびき7機体制がもたらすもの
2025年11月19日 15:03
内閣府と三菱電機、JAXA、NECの3者は、2025年度中に7機体制を確立する準天頂衛星システム「みちびき」について、説明会を行なった。
みちびきは日本版GPSともいえる衛星測位システムで、これまで合計4機での運用が行なわれていた。しかし、今年2月にみちびき6号機が打上げられたのを皮切りに、みちびき7機体制に向けた取り組みが本格化。12月にみちびき5号機(開発進捗の都合で6号機の後に打上げ)、2025年度中に7号機が打上げられる予定で、まもなくみちびき7機体制が完成することになる。さらに、バックアップ体制を強化するため将来は11機に拡張する。
みちびきは本来、常時日本の上空に4機の衛星がみえる状況において、もっとも精度の高い衛星測位情報を提供可能で、これまでの4機体制では不可能だった。7機体制が整うことで、日本上空で常に4機の衛星がみえる状況が可能になり、本格的な運用が開始される。
たとえば、米国のGPSを日本で使用する場合、GPSは日本の上空に常駐できないため、ビルなどに遮られて精度が落ちる可能性が高い。みちびきは、日本の天頂付近に常駐する静止衛星が1機と、それ以外の6機が日本の上空とアジア・オセアニア地域を含むエリアを8の字に飛行することで、日本上空には常時合計4機の衛星を配置。これにより、ビルの影などで精度が低下することを防ぎ、より高精度な位置情報が提供可能になる。
また、他国の衛星測位システムの精度が5~10mなのに対して、みちびきは世界に先駆け、測位補強サービスによる「cm級」の高精度測位が可能。GPSなどの衛星測位情報に対して、位置情報を補強する信号を発信することでcm単位の誤差での位置情報を提供できる。これは専用受信機を内蔵した機器でのみ利用が可能だが、将来の自動運転やスマート農業などにおいて利用が期待されている。
cm級の測位には専用機器が必要だが、専用機器を使わない「ASNAV(アスナブ)」と呼ばれる技術も開発中。こちらは専用機器を使わず、みちびきの信号が受信可能な機器なら利用可能で、市販のスマートフォンやカーナビなどが対応する。実用化されれば、従来のGPSが5~10mの誤差があるのに対して、特別な機器を使わずとも数m~1mの精度で位置情報を提供できるようになる。
これは、みちびきが「衛星間距離機能」と「衛星/地上間測位機能」を搭載することで実現される機能。従来、衛星の位置は複数の地上局との三角測量によってその位置を割り出し、衛星測位サービスに利用しているが、GPSなどの測位衛星は30,000kmを超える高高度を飛行していることから三角測量による計測では角度の差が少なく、誤差が出やすい。
これに対して、「衛星間距離機能」により衛星同士の位置を正確に測距可能になり、「衛星/地上間測位機能」によって、地上と衛星の双方から距離を測り誤差を修正できることから、高度もより正確に測距可能。これにより高精度な位置情報の提供が可能になる。
現在は技術実証の段階で、3年程度を目処に実用化を推進。ASNAVの機能を提供する衛星は5~7号機の3機のみであることから、フル機能での提供にはならないが、3年後の実用化段階でも最高1.6m程度の精度でサービスを提供できる見込みという。将来、11機体制の開始とともに、新規衛星が打上げられるタイミングでASNAV機能を搭載した衛星が揃えば最高1mの精度でサービスを提供できるようになる。
みちびきには、衛星測位サービスの悪用に対抗する「信号認証サービス」を提供する機能も搭載。衛星測位サービスの利用が拡大していくのにつれ、位置情報の「なりすまし(スプーフィング)」などの電子妨害が増加する懸念に対処するもの。
現在の測位信号は第三者の信号と区別する仕組みがなく、偽の測位信号によって位置・時刻の改ざんが可能とされ、例えばドローンによる配送サービスが普及した場合、ドローンの位置情報を途中で改ざんすることで、商品を盗むことも可能になる。
信号認証サービスを導入することで電子署名と公開鍵などによって電子的に認証を行ない、位置情報の乗っ取りを防止する。
みちびきは、2025年度内に7機体制が完了することで、2026年度から本格的なサービスの提供を開始するが、現在の課題は1機でも故障すると常時4機で測位するという体制を維持できなくなること。このため政府では、将来のバックアップ体制も兼ねたみちびき11機体制を推進。現在は既存の3号機の後継機と、みちびき8号機の開発に着手している。みちびき11機体制は2030年代を目処に運用が開始される見込み。















