トピック

第8回

会社を辞めて丸1年。ライター仕事はどうなった?【YouTubeはじめました】

ライターとして仕事をさせてもらった紙媒体の一部。原稿を書いたら掲載誌を送っていただけるので、雑誌そのものを読む機会も増えました。

会社を辞めてフリーライターになり、YouTubeをはじめるとどうなるのか。初回には“クリーンすぎる退職エントリ”とのコメントもいただいた本連載で、今回は2024年4月の独立から1年間を振り返ってみます。

肝心のYouTubeについては、前回ついに「収益が振り込まれた」と報告しましたが、3月〜5月と本業のライター仕事で忙しくしていたため動画アップもできず、特に目立ったトピックがありません(懺悔)。

カメラ専門誌に執筆

一応、現在の主な仕事はこれかもしれません。筆者はデジカメ Watchで14年間、記者をやっていました。おかげで「カメラに詳しい人」というイメージがついていましたから、顔見知りのカメラ雑誌から便利に使ってもらった感じがあります。

カメラ雑誌「CAPA」主催のイベントでは、写真家セミナーの進行役を拝命。
カメライベント「CP+2025」のトークステージにもお邪魔。/ ぶっちゃけカメラトーク2025 ~これからのカメラはどうなっていくのか?〜【赤城耕一氏 鈴木誠氏 佐々木秀人氏】

雑誌連載をやっています

「フォトコン」という雑誌では、2025年1月号から1年間の連載を担当しています。カメラ新技術の開発ストーリーを担当者に聞くというものです。雑誌なのでスペースの関係上、Webのように全文完全収録はできないため、要点を絞って短くまとめることが執筆作業の中心になります。これがもどかしくも面白い作業で、短くまとめる過程で自分の理解も一層深まることに気付きました。

古巣での仕事も多少

デジカメ Watchでは、カメラメーカーの広報・宣伝担当者からご指名をいただいて、スポンサード記事を担当することが多いです。会社員時代の実績を頼りにしていただけているようです。読者さんや業界関係者にどう信用してもらえるかが大事だと思っていたので、こうして退職後も思い出していただけるのは嬉しい限りです。

一般雑誌でもカメラを広めたい

嬉しいことに、専門誌以外でもカメラが人気です。編集者の視点もあるカメラ系ライターとして、企画出しの段階から声をかけてもらうことがありました。Xの退職ポストを見て久々に連絡をくださったり、かつて仕事をお願いしたことがある大先輩のライターが「彼なら間違いない」と裏で編集部に推してくれていたこともありました。私もそういう先輩になりたいです。

これらはカメラ専門誌ではないので、原稿を書き始めるより先に、まずは編集者に対してカメラメカニズムや写真レンズの原理の面白さをプレゼンする時間がありました。

でもこれが結構楽しいのです。かいつまんで自分なりに説明して「へぇ〜!」「じゃあそれで4ページお願いします」と言ってもらえたりすると嬉しくて。雑誌の編集については随時教わりながらで、いい経験をさせていただきました。

念願、他のWatchで記事を書く

まさにこのYouTube連載を通じて知った「動画編集の難しさ」「撮影機材を選ぶ難しさ」についてリアルな目線で取材したり、いわゆるガジェットレビュー的な「買ったので検証してみました」の記事も書かせてもらいました。もともとこうして何かをレポートするのが好きなわけですが、仕事として誰かの役に立てると思うと、前提知識の勉強にもより熱が入ります。

人生に無駄はない気がする

あとは楽器専門誌の「ギター・マガジン」で毎月お手伝いをさせてもらっています。新製品紹介ページと、たまに特集です。出版元のリットーミュージックはインプレスのグループ会社で、グループ横断の軽音楽同好会を通じて面識がありました。学生時代は毎日のように楽器店をウロウロしたり、製品カタログや書籍をよく読んでいたので、その当時の知識が役に立ったりもしています。担当編集者がお疲れの時には、アーティストインタビューのテープ起こしも手伝ってみました。

取材の合間。カード占いを得意とするギタリストが、私の今後を占ってくれたことも。

また、この“楽器好き”がWatch記事のネタになったのも、人生に無駄はないなあと思って嬉しかったことです。

とりあえず1年目は、ポジティブでいられました

まだ仕事のペースがわかりませんから、仕事の売り込み・持ち込みは控えました。でもペースが掴めてきたら自分からも企画出しなどして、お小遣いというか今後の発信活動のための研究費を得ていきたいなというところです。

サラリーマンを辞めて私にとって最大のプラスだったのは、心身の負担が減ったことです。インプレスの労働環境が悪かったわけではありません。いわゆるゴリゴリではない働きやすい会社だとされていて、自分でもそうなんだろうなと思っていました。単に、私が人並みの睡眠時間では元気を維持できなかったようで、会社員時代からお世話になっている写真家の方々にも、「顔色が良くなった」「柔和な雰囲気になった」と言われます。

フリーランスゆえの先行き不透明はさておいて、こういった感じで引き続き、誰かの「面白い」や「タメになる」の方向で仕事をしていけたら幸せです。

自分のチャンネル以外で動画やるかも?

YouTubeについては、いろんなメディアや企業がチャンネルを活性化させようとしています。しかし人的リソースがないし、いきなり外注コストも掛けられない。ということで、その立ち上げのお手伝いとしてYouTube動画を企画しまくるニーズはありそうな気がしています。

あらゆる情報がタダとされている時代ですが、しかし同時に「タイパ重視」の時代でもあります。何かを知ろうとして、玉石混交の動画を何本も見るような習慣がずっと続くかは疑問です。世間がそれに気付いた時、サクッと買ってサラッと全体像を把握できる雑誌だったり、多くの人間が関わるゆえに裏取りのない記事を出しにくい専門メディアの価値というのは、「時短」のツールとして見直されるんじゃないかと思っています。それまで真摯な媒体たちが生き延びてもらえるよう、微力ながらお手伝いしていきたいなというところです。

私自身の性分としても、定期的にいろんな人と関わって「助かりました」「面白かったです」のように言ってもらえることが活力になるとわかりました。そのため自分1人で完結してしまうYouTubeだけではなく、編集者と打ち合わせたり、取材で初めての人に会ったり、という活動をベースにしていくのが健康的で良さそうだなと考えています。

そんな具合で私個人のYouTube動画はいつ上がるか全く不定期ですので、あまり説得力はありませんが、引き続きチャンネル登録のうえ、動向をウォッチしていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

「鈴木誠のカメラ自由研究」チャンネル登録お願いします(6月6日現在 1,400名)
鈴木 誠

ライター。デジカメ Watch副編集⻑を経て2024年独立。カメラのメカニズムや歴史、ブランド哲学を探るレポートを得意とする。インプレス社員時代より老舗カメラ誌やライフスタイル誌に寄稿。ライカスタイルマガジン「心にライカを。」連載中。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。 YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究」