トピック

隣室から家族の体温がわかる。体温計「リモート利用」のススメ

ニプロ「NSM-1BLE」。測定した体温をBluetoothでスマホに転送できる

新型コロナウィルスの影響でさまざまな製品の欠品・品薄が相次ぐ中、入手困難になっているのが電子体温計だ。なかでも非接触型の体温計は、発熱している人から距離を取って体温を測定できる便利さもあってか、慢性的な欠品状態となっている。

いまAmazonなどで検索して見つかる非接触型体温計は、国内で医療機器としての認証を取得していないと見られる製品ばかりで、メーカー名の表示もなく、使い物になるか疑わしい。海外では、37度以下のランダムな温度を表示するだけの偽物が見つかっているという報道もある。いかに在庫があっても、体温を正確に測れなければ意味はない。

こうした中、ある工夫をすることで、この非接触型体温計とはまったく違うアプローチで、離れた場所から家族の体温を知ることができる製品もある。今回紹介するニプロの電子体温計「NSM-1BLE」もそのひとつだ。

家族のスマホとペアリングして体温データを自動転送

「NSM-1BLE」は、大型の液晶ウインドウが付いていること以外は、一般的な電子体温計と変わらず、測り方も違いはない。ユニークなのは、BLE(Bluetooth Low Energy)を用いて、スマホに測定結果を転送できる機能を備えていることだ。これを使えば、体温の推移をいちいちメモしなくとも、自動的にスマホに記録していける。

そして本製品のこの特徴は、別のシチュエーションにおいても威力を発揮する。それは今回の新型コロナウイルスなど、家族が近づくと感染のおそれがある環境で、隣室にいながらにして家族の体温を知るという用途だ。Bluetoothのペアリング先を自分ではなく、家族のスマホにしておくことで、こうした使い方が可能になる。

この場合、体温を測る行為そのものは本人に行なってもらう必要があるが、結果を口頭などで伝えなくとも自動的に転送されるので、隣室にいながらにして体温の推移をチェックし、必要に応じて医師に助言を求めるなど、適切な対応が可能になる。

Bluetoothでの通信は、壁をひとつ隔てた程度であれば、まったく問題なく利用できる。さすがに建物の外から知るのは難しいだろうが、室内に入らずに体温を知ることができるので、患者と距離があっても入室自体はしなくてはいけない非接触型体温計よりも安全だ。データが飛ばせる範囲は、ワイヤレスイヤフォンで音楽を聴ける範囲とおおむね同等と考えておけばよい。

製品本体。ボディは大柄に見えるが、形状は一般的な電子体温計そのものだ
液晶部。文字は大きく見やすい。前回測定した体温がメモリーされており、次回起動時に表示される
上部の電源ボタンを押して起動する。長押しするとオフになる
リチウムボタン電池(CR2032)で駆動する
保管用のケースが付属する。出し入れ時に上部の電源ボタンを誤って押しやすいのがマイナス

ざっと設定手順を紹介しておこう。今回はGoogle「Pixel 3」との組み合わせで試用している。まずは本体を起動してペアリングモードにし、スマホと連携。その後、専用アプリ「げんきノート」を起動し、設定画面の「測定器」から体温計を選択してやることで、Bluetoothで連携済みの本製品が、アプリから参照可能になる。

これにより、本製品で体温を測定するたび、その値が自動的にスマホ側に転送、保存されるようになる。スマホの側からデータを取りに行く必要はまったくなく、自動的にデータが飛んでくるので非常に楽だ。ただしアプリは起動した状態で、かつスマホのロックは解除されている必要がある。この点だけは少々わずらわしいが仕方ない。

電源を入れたのち、もう一度電源ボタンを押すとペアリングモード(Pr)に入る。なおBluetooth機能を使わない場合はこれ以下の設定は必要ない
ペアリングを完了後アプリに移動し設定を行なう。アプリは同社血圧計などと兼用であるためか、名前や身長体重のほか血糖値の目標値なども入力が必要。またパスワードは4~8文字の制限があるなど、微妙に使いにくい
アプリ側で体温計本体を検出し、ペアに設定。アプリ設定画面の「測定器」の「体温計」の欄に表示されれば完了だ

データは日毎に記録。タイムゾーン設定が便利

体温計の使い方は、一般的な電子体温計と変わらない。上部のボタンを押して電源を入れたのち、本体の先端を腋に挟む。そのまま30秒間待てば体温の測定が完了し、液晶画面に表示される。水銀タイプの体温計と比較した限りでは、値自体も(わずかに高めの傾向はあるが)十分に信頼が置けそうだ。

体温計を腋から抜くと、10秒もしないうちにBluetooth経由でスマホにデータが転送され、アプリに記録される。筆者が所有している他社のBluetooth血圧計と比較しても、データ転送はスピーディで、確実性も高い。

ちなみにこの30秒間の測定で表示される体温は、いわゆる「予測検温」で、正確な値を測るには脇に挿したままさらに10分間待つ必要がある(実測検温)。もっとも試した限りでは、10分待たなくても十分に正確な値が表示されるようだ。

測定開始。まずは上部のボタンを押して電源を入れ、脇に挟む
30秒で予測検温が、10分で実測検温が完了する。測定完了は電子音で通知される
測定されたデータはアプリに転送、表示される。記録は日毎に行われ、当日の最新データはホーム画面の「体温」欄にも表示される。深夜何時までを当日とみなすかをアプリ側で指定できるのが便利だ。なおイラスト欄は当日の写真をアップロードできる

スマホへの転送が行なわれるのは、腋から抜き取ったタイミングだ。つまり予測検温か実測検温かは問わないので、毎回必ず10分かけて実測検温をしなくとも、予測検温の時点で転送、記録できる。今回試した限りでは予測検温と実測検温に極端な差はなかったので、家庭でのカジュアルな用途に限れば、予測検温で十分ではないかと思える。

記録された体温は、時刻とともに記載される。データはグラフ表示などの機能がなく、リストとして羅列されるだけなので、ややそっけない。せめて直前よりも上がったか下がったかが分かるアイコンくらいは欲しかったところだ。アプリ上でデータの削除は行なえず、すべての値が記録されるのも、家族で体温計自体を共有するには向かない仕様だ。

使ってみて面白い機能だと感じたのは、アプリ側で設定する「タイムゾーン」だ。例えばここで就寝時間を翌朝の6時、アプリ上では「30時」と登録すると、その時刻までが前日の一部と認識される。0時で無条件に日付が切り替わるのではなく、ユーザの起床から就寝までを1サイクルとしてカウントするのは、実際の時間帯と生活時間帯がずれているユーザにとってありがたい。

起床、朝食、昼食、夕食、就寝の5つの時間を登録する。昼に起床して明朝に就寝するという生活サイクルでも、体温データを1日にまとめて(翌朝までのデータを当日分として)記録できる

ちなみに測定日ごとに、写真を2枚アップロードできる機能も用意されている。「げんきノート」というアプリ名だけあって、どうやらその日の出来事を写真で記録していく仕組みのようだ。本稿で紹介している用途ではあまり使い道がないが、食事など、その日の体調を思い出す手がかりを撮って記録するなどの工夫もできるだろう。

Bluetooth対応の電子体温計なら同じ使い方が可能(なはず)

今回紹介した、隣室の家族のスマホにデータを転送するという使い方は、このニプロの製品に限らず、Bluetoothによるスマホとの連携機能を備えた体温計ならば、対応可能と考えられる。本稿執筆時点では冒頭で紹介した非接触型体温計に続き、本製品も在庫を見かけなくなりつつあるが(2週間前には普通に買えたことを考えるとすさまじいスピードだ)、ほかのBluetooth体温計も視野に入れつつ、探していただければと思う。

ちなみにこの製品、製造元であるA&Dから、まったく同型の「UT-201BLE」なるモデルが発売されており、同社独自のアプリ「A&D Connect Smart」と組み合わせて利用する。今回試した限りでは、本製品とこのA&D Connect Smartとの組み合わせでは動作しなかったが、こちらの製品も使い勝手自体はおそらく同じと考えられる。

パッケージは白箱。医療機器認証番号を見る限り、同じ外見をもつA&Dの製品のOEMとみられる
本製品と同型の「UT-201BLE」と組み合わせて利用するA&Dのアプリ「A&D Connect Smart」。試した限りでは本製品との連携は不可能なようだ