文具知新

キッチンにあると便利な転職系文具「ワザアリテープ」

ある職場では特に目立ったところのなかった人が、別の業種に転職した途端に輝き出すことがあります。プロダクトの世界でも「転職」によって新たな魅力が開花した例は枚挙にいとまがありません。

フィルム加工の技術を活かして化粧品業界で成功した富士フイルム、作業着の機能性とコスパの良さを活かしてスポーツ・アウトドアウェアのブランドとしてもブレイクしたワークマンなどは有名です。文具業界では、もともと刻み海苔を作るハサミとして鳴かず飛ばずだったものが、シュレッダー用途を前面に打ち出すことで大ヒットした、なんて例もありました。

5枚刃ハサミ「秘密を守りきります!」(アーネスト)の例

いずれの例においても、もともと備わっていた能力や才能が、それをより強く求められる環境に「転職」することで一層際立っていることがわかります。そんな「転職系文具」のひとつとして今回ご紹介したいのが、ニチバンの「ワザアリテープ」(330円)です。

なお、ワザアリテープを含む「ディアキッチン」シリーズは5月にリニューアルされ、パッケージやテープ紙管の内側、ホルダー表面など一部のデザインが変更されました。今回の記事ではリニューアル前の製品を用いてご紹介していますが、機能面での変更はありません。

「キミ、養生テープだよね?」

ワザアリテープを初めて見た時の率直な感想は「これ、養生テープじゃん」でした。そう、引っ越し屋さんが壁などを保護(養生)するためのシートなどを貼る時に使うあのテープです。

(左)ワザアリテープ(330円)、(右)養生テープ

養生テープの土台は、主にポリエチレンクロス。網目が入っているので、ハサミやカッターを使わずとも手でまっすぐちぎれるのが特徴です。そこにアクリル系の粘着剤が塗布されており、それなりにしっかりとした接着力がありながらも、糊残りなくキレイに剥がせるので、作業時の仮止めテープとして重宝されています。

ガムテープ(クラフトテープ)等と同じ大巻サイズが養生テープの定番ですが、ワザアリテープは元の機能性はそのままに、小型化されているのがミソ。テープの幅は50mmから25mmと半分に。テープの芯になる紙管はいわゆる大巻サイズから、セロハンテープやマスキングテープのような小巻サイズになっています。

(左)ワザアリテープ、(中)マスキングテープ、(右)セロハンテープ

それだけといえばそれだけの違いですが、これがなんと、キッチンで使うテープとしてめちゃくちゃちょうどいい機能性とサイズ感なのです。

冷凍食品の袋どめにはワザアリテープ一択!

私がとにかく重宝しているのが、使いかけの冷凍食品の袋をとじておきたい、という場面。通常、糊は低温になると接着が弱くなるので、一般的なテープ類は冷蔵庫や冷凍庫に入れて使うことはできません。それが、ワザアリテープならなんのその。−18℃の冷凍庫内でもしっかり袋の口を守ってくれます。

使いかけの冷凍食品の保存に威力を発揮!

ただひとつだけ注意しなければならないのは、貼り付ける面が濡れていると本来の接着力が発揮されないこと。袋が結露していたり手が濡れていたりする場合は、キッチンペーパーやふきんで水分をしっかり拭ってから貼るようにしてください。

もちろん、常温の食品袋にも

冷凍食品以外の、冷蔵や常温の食品袋でも便利に使えます。袋どめクリップでも良いのですが、クリップが大きいとかさばってしまったり、中身が多くて袋に余裕がないとそもそもとめられなかったりします。その点、ワザアリテープであればスッキリまとめられます。

どれも文具としては便利なんだけど、キッチンでは……

また他のテープとの比較では、マスキングテープより接着力が強いので、厚みやハリのある袋でもしっかりとめられる安心感があり、開ける時にはセロテープより剥がしやすいのも気に入っています。いちど剥がした後にまた貼ることもできるので、ちょこちょこ使う食材でも都度テープを新しく貼り直す必要がなく経済的ですよね。

保管に困る使いかけのそうめんもこの通り。最初に開ける時、袋をタテに切り開くのがポイント

保存容器のラベルとしても

ワザアリテープは、油性ペンで書き込みができるので、保存容器のラベルとしても使うことができます。作りおきに料理名やメッセージを書いたり、タッパーに移した食材に賞味期限を書いたりと、キッチンでは「ちょっとメモをつけておきたい!」というシーンが意外と多いもの。容器の大きさや文字数に合わせて、好きな長さでカットできるのも嬉しいポイントです。

ラベルとしても便利に使えます

本筋からはちょっと外れますが、一緒に使うなら片手でサッと書けるノック式の油性ペンがおすすめ。私はマグネット付きのペンホルダーを冷蔵庫の横にセットして、その中に入れています。

合わせて使うならノック式の油性ペンがおすすめ

使い勝手を高める専用ホルダー&カッター

同シリーズには専用のテープホルダー(テープ付き396円)とテープカッター(1,320円)も用意されており、ワザアリテープと合わせると使い勝手がぐんと良くなります。ホルダーもカッターもマグネットで固定できるので、冷蔵庫やレンジフードなどに定位置を作ると使いたい時にサッと手に取ることができます。

(左)テープホルダー(テープ付き396円)、(右)テープカッター(1,320円)

ホルダーも便利ですが、私のイチオシはテープカッター! 食品袋の口を閉じる時、片方の手で袋をおさえながら、もう片方の手だけでササッとテープを好きな長さで切れます。ワザアリテープはマスキングテープやセロハンテープと比べるとしっかりと厚みがあるため、刃が斜めにセットされているのがポイント。これのおかげで手でちぎるときのように端から切れ目が入り、厚みのあるテープでも片手でカットできるのです。

片手でもしっかりカットできます

マグネットもしっかり強力で、テープを引き出すために引っ張ってもびくともしません。さすが専用品! と言いたくなる頼もしさです。

お求めはスーパーマーケットの食品売り場でも

まずはちょっとだけお試ししたい、という方には初めから長さ60mmに切ってあるカットタイプ(352円)もあります。冷蔵庫などに直接貼り付けておくことができ、端の部分は糊がついていないので片手でもめくれて、こちらもなかなかの使い勝手です。持ち運んだり、引き出しのちょっとしたスキマに入れたりするのにも良いでしょう。

このように、ワザアリテープは養生テープと基本的には同じものでありながら、サイズ感や周辺用品を変えることで、キッチンという利用シーンにマッチするようによくよく考え抜かれた、まさに「技アリ!」のテープなのです。

そのため、文具でありながらスーパーマーケットの冷凍食品コーナーの一角に置いてあることもしばしば。気になった方は、冷凍食品をお買い求めのついでにぜひ手にとってみてください。

ヨシムラマリ

ライター/イラストレーター。神奈川県横浜市出身。文房具マニア。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。元大手文具メーカー社員。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。