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新NISAブームで始めた投資 「このままで大丈夫?」に金融教育家が回答
2025年12月10日 09:00
あなたは、2024年の新NISAブーム以降に投資を始めた「投資2年生」ではないですか?
近年、株価の暴落や加熱気味の上昇など乱高下が相次ぎ、正しい金融知識がないまま「オルカン(オール・カントリー)」や「S&P500」といった人気の投資信託を買った投資初心者の間では「このままで大丈夫?」という不安の声も聞こえ始めています。
12月4日発売の『私が投資したNISA・iDeCoのお金、このままで大丈夫?』では、金融教育家の塚本俊太郎氏が、投資初心者から寄せられた700個以上の質問から、181個を厳選してQ&A形式で紹介しています。今回、その中から特に関心の高い質問5つを掲載していきます。
この記事は2025年12月4日発売のインプレス刊『私が投資したNISA・iDeCoのお金、このままで大丈夫?』(塚本俊太郎 著)の一部を編集・転載しています(編集部)
Q1:投資信託の利回りはどのくらいあれば合格?
A:GPIFが公表している期待リターン、外国株5.4%、国内株4.8%が目安
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では「国内債券」「外国債券」「国内株式」「外国株式」の4資産について、5年ごとに分析を行ない、複数の経済シナリオにおける期待リターンを算出しています。例えば私が普段参考にしている「過去30年投影ケース」(2025年度)の場合、国内株式は4.8%、外国株式は5.4%の年平均リターンが期待できると試算されています。
全世界株式やS&P500インデックス投資信託は外国株式にあたるので、年平均リターンを5.4%として計算してみるといいでしょう。
このGPIFの期待リターンを参考にシミュレーションしてみましょう。例えば、全世界株式インデックス投資信託に毎月3万円を20年間積み立てるとします。外国株式の年率5.4%を基準に計算すると、20年後には投資元本720万円が約1,272万円になる見込みです。
もちろん、実際に毎年同じ利回りが得られるわけではなく、短期的にはマイナスになる年もあります。この期待リターンは相場を「当てる」ためではなく、「見積もる」ために使いましょう。目標額に届かない場合は積立額を増やしたり、投資期間を延ばしたりといった調整を検討します。逆に目標額を上回りそうなら、その分を自分や家族の豊かな時間に使う計画を立てるのもいいでしょう。
Q2:信託報酬の安い投資信託が出たら乗り換えるべき?
A:0.02%程度の違いなら乗り換え不要。新商品なら1年程度様子を見よう
運用開始から間もない投資信託は当然、実績がまだありません。可能性は低いですが、期待どおりに運用されない恐れもあります。純資産総額が順調に増えているか、信託報酬以上のコストはかかっていないか、ベンチマークとのかい離は少ないかなど、見極めてから検討した方が安全です。
年に1回決算を行なう投資信託の場合、発売開始から1年後に「運用報告書」が交付されます。運用報告書には前述の純資産総額や総経費率、ベンチマークとのかい離具合など、その投資信託の運用状況が記載されているので、内容をチェックしてから投資するか判断しましょう。
Q3:年間非課税枠を使い切るため、購入額を増やしていい?
A:資金に余裕があるならOK。でも急ぐ必要はなし
NISAは年間の投資上限額が決まっていて、つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円、あわせて360万円、生涯では1,800万円まで投資できます。上限まで急いで投資しないと損ということはありません。あくまで積立投資を続けていける金額で、年末までといった期間を決めることなく、淡々と投資していくのがいいと思います。
急いで投資をして市場が急落するというようなことがあると、精神的に投資を続けることが難しくなります。投資を急ぐよりも、長期で投資を続けることで資産を増やしていくことの方が大事だということを知っておいてほしいです。
Q4:退職金は取っておくかNISAで投資するか、どちらがいい?
A:10年以上置いておけるお金だけ運用に回しましょう
退職後に、どんなことにお金がかかるかを把握しておきましょう。生活費や住宅ローンの返済、リフォームなど、想定以上に支出が多くなることもあります。10年以内に使うお金は、元本保証のある預金や個人向け国債に入れておくのが安心です。
一方で、10年以上使う予定のないお金があるなら、NISAでの運用も検討しましょう。すべてを預金にしておくと、インフレで資産価値が目減りします。株式比率の目安は「100−年齢」。65歳なら株式35%、残りを個人向け国債や預金に分けると、値動きを抑えながら運用できます。
Q5:お金が必要な時期に円高や相場下落があったら、どのように売却すればいい?
A:まずは長期投資が大前提! 一定ペースの売却もおすすめです
市場の動きを予想することはせずに、一定のペースで売却していく方法をおすすめします。
相場は毎日動き続けているので、今後上昇するか、下落するかは金融の専門家でも予測が難しいものです。少しでも高い金額で売却したい気持ちは理解できますが、円高や下落により売るのを控えても、いつ回復に転じて売却できるようになるかはわかりません。売却してお金を得たいのに、下落しているために売れない状況が長く続く場合も考えられます。
そのようなケースを想定すると、保有する商品が値上がりするタイミングを待って一括で売却するのではなく、積立投資の逆のようなイメージで、毎月同じ金額や同じ比率で回数を分けて売却していく方法がいいと思います。
書籍では商品選びのポイントから「投資の終わり方」まで学べる
今回の記事は、インプレス刊『私が投資したNISA・iDeCoのお⾦、このままで⼤丈夫?』(塚本俊太郎 著)に掲載された内容のごく一部。
本書では、NISA・iDeCoなどの「投資の始め方」に留まらず、商品選びのポイントをまとめた「投資の選び方」、取り崩し、出口戦略の疑問を集めた「投資の終わり方」、基礎知識としての「投資の基本」や「お金の基本」と5つの章立てに分けて掲載しています。
質問内容は他にも「元本割れしない商品を教えて」「余裕ができたら投資額は増やすべき?」という普遍的な質問から、「50代だけどオルカン1本で大丈夫?」「夫婦でNISAを利用するのはアリ?」というシチュエーションを限定した質問、「投資信託の値動きはどうやって決まるの?」「つみたて投資では手数料が高くなるのでは?」という今さら聞けない質問まで、幅広い疑問に答えています。
ぜひ本書を手に取って投資に対する心のモヤモヤを解消しましょう。
・価格:1,870円
・発売日:2025年12月4日
・ページ数:192ページ
・サイズ:A5判
・著者:塚本俊太郎
・内容
1章 投資の選び方
2章 投資の始め方
3章 投資の終わり方
4章 投資の基本
5章 お金の基本
・著者プロフィール
金融教育家 塚本 俊太郎(つかもと しゅんたろう)
外資系運用会社で20年以上勤務したのち、金融庁の金融教育担当として高校家庭科での金融経済教育指導教材や小学生向け『うんこお金ドリル』の作成を担当。現在は金融教育家として、金融リテラシーや資産形成について講演等を行なう。著書に、『50代でも間に合う!オトナの“金育”』、『子どもに伝えたいお金の話 金融教育のいまを聞く』、『サクッとわかるビジネス教養 金融学』など。また、NHK Eテレ「趣味どきっ!今日から楽しむ“金育”」(2023年3月と2024年1月計8回)の講師をつとめた。X(塚本俊太郎X金融リテラシー)にて、毎週土曜朝7時より「塚本俊太郎のゼロからのお金の学校」を音声ライブ配信している(Voicy、Podcastにもリプレイを配信)。YouTube「塚本俊太郎の金融リテラシーチャンネル」でも資産形成について発信している。
X : @shuntarotsu
YouTube : @FinancialLiteracyChannel




