西田宗千佳のイマトミライ

第350回

食事の摂取カロリーが自動でわかる シャープ スマートウォッチの価値と課題

シャープの「からだメイトWatch」(MH-W01)。価格は59,400円。

先日、シャープの新しいスマートウォッチ「からだメイトWatch」(MH-W01)を購入した。カロリー摂取状況を自動的に計測できるのがウリの製品だ。

デジタル機器を健康に生かす、というパターンはすでに定番になっている。その中でどんなデータをどう活用するのか、という点に差別化要素を持ち込むのは、ある意味で定番の要素と言えるだろう。

各社はその中でどのような要素を軸に据えようと考えているのだろうか? そして、この種の製品を選ぶ上での価値はどこになるのだろうか?

今年の春から筆者も複数の製品を使ってきたので、改めて考えてみたい。

なにもしなくてもカロリーを計測

まず、からだメイトWatchの話から行こう。

「からだメイト」はシャープが展開しているウェアラブル機器のブランドだ。現状ではスマートウォッチとスマートリングが商品化されている。今回買ったのはスマートウォッチの方だ。

からだメイトWatchのパッケージ。本体と充電器、ケーブルが付属。
スマートリングとスマートウォッチがある
サービスの「からだメイト」と連携

この製品の特徴は、摂取したカロリーと水分バランスを自動的に計測できることにある。実はどちらも体の水分量が関わっており、そこから摂取カロリーと水分バランスを測定しているようだ。HEALBE社が持つ「FLOWテクノロジー」で実現されており、シャープはライセンスを受けて製品に搭載している。

シャープのウェブより。カロリーを細胞外液の動きから推測。要は体の水分量と関係している

設定は特にない。一般的なスマートウォッチと同じく身長や体重を設定して使い続けると摂取したカロリーを表示してくれて、水分が不足している時にも通知してくれる。

計測したカロリーの状況
体の水分不足も警告してくれる

カロリー自体のチェック精度は「そこそこ」というレベルだと思う。食べるものの種類によって反映されるまでの時間は違うし、少し上下にズレているようにも思う。

だが、なにもしなくてもカロリーをチェックしてくれるのは確かに便利だ。そもそも歩数などの運動量や睡眠データは自動計測なわけで、カロリーがそこに入ってくると考えればわかりやすい。

ウェアラブルデバイスの競争軸は「健康情報」

スマートウォッチをはじめとしたウェアラブル機器は、現在は「健康」のために売れるようになっている。結局のところ、人間にとって健康は、それだけ根源的な欲求だということなのだろう。

Apple Watchが売れるようになったのもエクササイズと睡眠を軸に「健康」へのアプローチが本格化したからであり、サムスンの「Galaxy Watch」やGoogleの「Pixel Watch」も、活動量データをうまく集め、活用するようになってきたからだ。

現在はその先が重要になっている。スマートウォッチやウェアラブル機器で取得したデータを、さらにわかりやすい形にして提示することだ。

アップルは睡眠をスコア化しているし、サムスンは体調全体を「エナジースコア」として表示する。

Apple Watchでは、騒音レベルを含めた多彩な情報を提示
サムスンのGalaxy Watchは体調を「エナジースコア」で表す

そこにAIを絡め、詳細な解説を提示するのが次のトレンドと言える。AIを使う分コストがかかることもあってか、有料のサービスになるパターンが増えてきた。

シャープの「からだメイト」もそのためのサービスだ。今年9月までは、キャンペーンで購入からの半年は無料。それ以降は月々600円がかかる。

「からだメイト」もアプリを介して有料で提供される

行動データの解析という意味で一歩先をいっているのがGoogleだ。Fitbit Airなどのデータを使う「Google Health」では、詳細な分析を有料の「Premium」プランで提供している。分析だけでなく、状態について質問できるのも特徴。この辺は、GoogleのAIであるGeminiを活かしたものである。

Googleの軽量フィットネストラッカー「Fitbit Air」
Google Health Premiumでのアドバイス

月額1,580円だが、GoogleのAIプランである「AI Pro」や「AI Ultra」に含まれるので、AIプランを契約する方がお得だったりする。

筆者はFitbit Airも数カ月利用しており、Google Health Premiumのデータも見ているが、内容はからだメイトより充実していると感じる。解析手法やデータの使い方の差が出ている感じだ。

違いはやはり、摂取カロリーの扱いだ。カロリーを重視するなら「からだメイト」の方が向いている。

他方、Google Healthに問題がないか、というとそうでもない。

初期には、文章で状況を説明されるのが新鮮で、わかりやすいと思っていた。しかし、日常的に使っていくと同じようなアドバイスが増える。どこにいるかは見ているものの、その日のスケジュールや仕事の量などを忖度してくれるわけではないため、的外れな話をしてくることも多い。数字から自分で判断することと大きく違うのか、というと「そこまででもない」とも感じている。

個人の活動状況をもっとAIが理解していないと、詳細なアドバイスは難しいのかもしれない。

結局ベースは「スマートウォッチとしての完成度」

からだメイトWatchを使ってみて、カロリーを把握できるスマートウォッチの価値はあると感じた。

だが、今後も使うかというと、正直「難しいかな」と思う。理由は、スマートウォッチとしての完成度が高くないためだ。

からだメイトWatchは独自のプラットフォームを使ったスマートウォッチになっている。アプリの追加などもできない。文字盤の表示も、選択はできるが意外と自由度が低い。

スポーツのための機能は充実しているが、日常的に使う機能が足りないし、動作も遅い。腕を持ち上げた時に表示されるまでの時間も少し遅く感じる。

ベースとなるスマートウォッチの部分の磨き込みが足りない、というのが筆者の偽らざる感想だ。

その点、Apple WatchやPixel Watchなどのメジャー系は完成度が高い。この差を乗り越えて「一芸系」と言えるからだメイトWatchをつけ続けるか……というと、現時点ではなかなか厳しい。

長年磨かれたプラットフォームは強く、バンドなども含めた周辺グッズの量にしても、メジャーなものと競合するのは難しい。

基盤と言える機能の部分と、有料のヘルスケアサポート・サービスを同時に磨き込むことが重要になってくる。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
 メールマガジン「小寺・西田の『マンデーランチビュッフェ』」を小寺信良氏と共同で配信中。 Xは@mnishi41