小寺信良のくらしDX

第41回

今年の夏は、酷暑対抗商品で戦う

日本国内における酷暑日の年間記録数の推移(筆者調べ)

今年もまた、暑い夏がやってくる。

「猛暑日」が定義されたのは2007年のことで、2000年代以降、35度を超える日が頻発するようになったことを受け、気象庁が新設した。

そして今度は、「酷暑日」が定義された。民間ではすでに2022年から使われてきたが、今年4月に気象庁が正式な気象用語として採用した。

気温が40度を超えた日を過去10年間で調べたところ、昨年は突出して暑かったことがわかる。今年は昨年のような異常な暑さではないとしながらも、気象庁の予測では酷暑日の発生は7日から14日と予想されているところだ。

日中の暑さは、家やオフィスでずっと仕事できる人にはあまり関係ないかもしれないが、外回りや屋外作業が仕事の人、あるいは屋外イベントに参加する人にとっては、文字通り命取りになりかねない。

そんな中、日本企業を中心に、酷暑対抗商品がさまざま出てきている。国民が苦しい時にそれをカバーするものがどんどん出現するというところが、実に日本国らしいところである。

去年はひどい目にあったという人は、今年こそこうした酷暑対抗商品で戦うべきだ。

好調なウェアラブル商品

背中に装着することで冷感を提供するウェアラブル商品として人気が高いのが、ソニーサーモテクノロジーの「REON POCKET」シリーズだ。

今年はワールドワイド仕様の強力モデル「REON POCKET PRO Plus」と、アジア向け小型サイズながら冷却性能をPRO並みに引き上げた「REON POCKET 6」が登場した。通販価格はそれぞれ29,700円と25,300円。

「REON POCKET 6」(左)と 「REON POCKET PRO Plus」

どちらもダブルペルチェ素子で冷却性能を強化する。アーム構造も改良され、よりズレにくくなったこと、さらに6月のファームアップで本体ボタンの機能が拡張され、スマホなしでもあらゆるモードで温度調整が可能になった。

REON POCKETのユーザー層は都市圏で働くサラリーマン、さらに利用は通勤時が圧倒的だ。温度センサー付きのタグと併用すれば、外ではガン冷え、駅や電車内では停止といった自動動作が可能だ。

昨年「ChillerX」でこの分野に参入したShiftallは、今年大幅に強化した「ChillerX Pro」を発表した。価格は据え置きの39,900円。発売は6月末となっている。

6月末に発売予定の 「ChillerX Pro」

ベスト内を冷水が循環する仕組みになっており、腰の部分にペルチェ素子を使った冷却システムを備える。構造としては、水冷式パソコンに近い。

ChillerX Proのターゲットは、農業、道路工事、建設など屋外作業に従事する「プロ」を主対象とし、本当のプロフェッショナル仕様を志向する人向けの製品となっている。

循環ベスト部は昨年の製品と同じだが、冷却システム側を大幅に改良し、1.6倍の冷却能力を持つ。4連のヒートパイプと高さ4倍となるヒートシンクを備え、冷却ファンは直径6cmのデュアルファンとなった。

冷却ユニットのスケルトンモデル

また排熱フローを下吸気・上排気に変更。前作は下向き排気だったため、腰が熱くなるという欠点があった。さらに今回は排気を斜め45度に偏向することで、体に直接排気が当たらないようになっている。

昨年のモデルは、宮崎市で畑仕事をしながら製品をテストしたことがある。炎天下にもかかわらずゾクゾクするほどの威力を発揮した。だがそれでもまだ「ヌルい」という意見があり、今回のProの開発に至ったという。

体験会では40度超えのサウナテントの中で着用したが、まったく汗をかくこともなく過ごすことができた。

ユニークな商品開発で知られるサンコーでは、2026年夏コミ応援セットとして、「熱気に打ち勝て!上半身快適セット」を13,960円で販売中だ。ファン付きベストとネッククーラーLiteのセットである。

風を送るだけで冷却機能はないが、汗をかけばその気化熱を奪うために冷えるという構造になっている。現在屋外作業者の標準装備は空調服だが、その良さをより一般に浸透させる形になるだろう。

また冷やすのではなく風を受けたいというニーズも一定数あることから、今後もこうした送風メインの商品はなくならないだろう。

またサンコーでは、ペルチェによる冷却とファンによる送風を組み合わせた「冷蔵服」も今年の新モデルを22,800円で販売している。

いずれの製品も、屋外の暑さをカバーするための商品だ。自治体などでは熱中症予防のために屋外に出ることを控えるよう呼びかけているが、仕事上どうしても屋外に出ざるを得ない人はたくさんいる。

ぜひこうした製品を活用して、無理なく仕事を乗り切っていただきたい。

「スポットクーラー」のメリット・デメリット

一般家庭であっても、全部屋にエアコン完備というところはそれほど多くないのではないだろうか。多くの場合、リビングなどに8畳タイプなどのエアコンを使って他の部屋もそれでカバーするといった方法が取られているのではないかと思う。

以前の筆者宅もそんな状況で、エアコンのない部屋にはエアサーキュレータを使って冷気を循環させていた。

一時期、水の気化熱を利用する冷風扇を導入したこともある。最初の2年ぐらいは調子よかったが、3年目になると水漏れが激しくなり、床を濡らしてしまうのでお蔵入りになった。機能自体は悪くないのだが、数年間にまたがる利用に耐えられない製品もあるようだ。

エアコンのない部屋、あるいはエアコンが取り付けできない部屋で重宝されるのが、スポットクーラーだ。どこにでも設置できるし、価格もそれほど高くないということで、導入を検討している人も多いのではないだろうか。

実は筆者が転居したマンションは、通路側の部屋には室外機が置けないという制約があった。事実部屋には、室外機へ通すパイプ穴がない。通路は北側だが、夏はかなりの温度になる。そこで5月のうちに、スポットクーラーを導入した。

スポットクーラーは、どこにでも設置できるテンポラリ的な製品だと思われているフシもあるが、それは製品の初期にどこでも設置できるといった売られ方をした影響が大きいようだ。

筆者宅で導入したのは、タンスのゲンのスポットクーラーで2.3kWの小型モデル。価格は約3万円だった。筆者もスポットクーラーを買うのは初めてだったのだが、実際に購入してわかったのは、シンプルに言えばウインドウエアコンの窓に取り付けないバージョンだということだ。実質的に室内機と室外機が一緒になった、冷房専用エアコンである。

北側の部屋に初めてスポットクーラーを導入

昨今はウインドウエアコン自体がレア商品になりつつあるのでご存知ないかたも多いかもしれないが、80年代頃はエアコン工事不可の物件や、安くでなんとか冷房を入れたい学生や新人社会人のために、ウインドウエアコンが大手メーカーから出ていた。筆者も初任給でウインドウエアコンを購入し、自分で取り付けたのでよく覚えている。

昨今は酷暑のためにまた見直されているようだが、すでに国内の大手家電メーカーは撤退しており、コロナ、コイズミ、トヨトミといった冷暖房商品専門メーカーか、ハイアールのような中国メーカーが手掛けるようになっている。

スポットクーラーは乱暴な言い方をすれば、排熱をパイプ経由で行なうようにしたウインドウエアコンである。どのみち熱は室外に排出するしかないので、窓までパイプを伸ばして外に出す必要がある。

パイプを使った排熱は、かなり大掛かりな仕組み

室内の別の部屋、例えば廊下などに排熱することもできなくもないが、結局は同じ室内で熱を移動させているだけなので、そのうち熱が戻ってくる。置き場所はパイプが届く範囲に限られるので、窓に設置するウインドウエアコンよりも設置は楽だが、本体が場所を取る。

また動作音も、室外機の部分が室内にあるわけだから、それなりにうるさい。昔のウインドウエアコンよりはだいぶ控えめだが、一般的な室内機だけの動作音を想定すると、幻滅するだろう。

スポットクーラーはエアコンなので、冷やせば除湿効果もある。したがって、本体内に水が溜まる。ある程度は排熱と同時に気化させて外に排出できるが、排出しきれなかった水は内部タンクに溜まる仕組みだ。

タンクがいっぱいになると動作しなくなるので、バケツなどに排水する必要がある。その点では、部屋の外に排水できるウインドウエアコンのほうが、手間なしではある。

今はまだ稼働率が低いので、タンクがいっぱいになるまでには至らないが、本格的な暑さを迎える7月から8月にどうなるのか。スポットクーラーはウインドウエアコンより1万円ぐらい安いのが魅力だが、排水の手間がかかりすぎるようなら、1万円払ってもウインドウエアコンのほうがマシ、ということもありうる。このあたりはこの夏の稼働状況に注目したい。

エアコンをうまく使っていくために

筆者が子供の頃は、エアコンもそれほど普及していなかったので、扇風機が主力だった。ただそれは今から50年も前の話で、周囲には庭木や木立も多くあり、今ほどアスファルトとコンクリートに囲まれてはいなかった時代の話である。

これほどまでに「土」の上に蓋がされてしまった現代社会では、熱を吸収できる媒体がほとんどなくなり、夜も昼間に吸収した熱が放出されるため、気温が下がらない。温度は、温める方法はいくらでもあるが、冷やす方法はかなり限られており、電気を使ってなんとかするしかない。

昨今は電力が逼迫するといったことも少なくなってきたが、電気料金の上昇は避けられないところだ。それでも健康を害してまで電気代を節約するのは、筋が違うだろう。ただこれまで、エアコンを使って空気を冷やす以外の方法がなかったところに、様々な冷却製品が登場している。

こうした製品をうまく組み合わせて猛暑に対応していくというのが、テクノロジーの国である日本らしいやり方だろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。