小寺信良のシティ・カントリー・シティ

第33回

「お盆」はもうなくなるのかもしれない

8月24日より、全国の公立校では新学期がスタートしている。全国的にコロナ感染第5波が確認されている中、学校再開を疑問視する声もあるが、自治体によっては8月31日まで夏休みを延長するところもあるようだ。

今回は文部科学省が夏休み延長の方針を打ち出さなかったが、国が延長を決めれば全国一斉という話になるので、感染者がほぼいない町村の学校まで休校になってしまう。ただでさえ学習の遅れが目立つ今年度、再開か延長か、各自治体に判断を投げたのは正しいように思う。

筆者の住む宮崎市では夏休み延長の判断はされなかったが、始業式の24日、コロナ感染への不安から児童約1,000人超が学校を休んだことが確認された。この状況で子供を学校に行かせるのは不安があるという保護者が、学校を休ませたと見られる。

その判断もわからなくもない。以前の株とは違い、子供の感染も多数報告されているデルタ株による第5波の終息が見えていない中、集団生活に戻すのはどうなのかと考える人もいるだろう。

ところが8月23日時点での宮崎市の感染状況を見ると、半数が家族や親戚からの感染という調査結果もある。つまり子供をこのまま家庭においておく方が危ないという判断もありうる。家庭よりも学校の方が、きちんと手洗い消毒などが全員に徹底され、ソーシャルディスタンスも確保されるだろう。

そこで宮崎市教育委員会では、8月いっぱいまでは給食ありの4時間授業で対応という方針を打ち出し、なんだか中途半端に学校に行くような格好となっている。誰も正解を持っていない中、真ん中の施策をとったらどっちの理屈にとっても役に立たないという、情けない状況になっている。

なぜ地方にも感染爆発が広がったのか

宮崎県のような地方で今感染者が増加している要因は、お盆休みの帰省だろうと言われている。昨年度に引き続き、全国知事会や都知事らが散々帰省するなと呼びかけたにも関わらず、新幹線の予約は昨年同時期の1.6倍、航空機の予約は1.4倍に増えた。

宮崎への帰省は、主に空路

宮崎の感染状況は、執筆時点で新規感染者数は8月21日の158人が最多となっている。ちょうどお盆から1週間が経過したあたりだ。東京の5,000人超えからすればそれぐらいでガタガタ言うなと思われるかもしれないが、東京都と宮崎県の人口比はだいたい13:1。単純に東京の人口並みとして掛け算すれば、感染者2,000人程度の水準ということになる。

8月21日には過去最多の158人を記録

宮崎県ではこれまで県独自の緊急事態宣言を発令して凌いできたが、8月27日より「まん延防止等重点措置」の対象地域となった。独自宣言とまん延防止法と何が違うかと言えば、独自宣言では営業自粛がお願いベースにしか過ぎないが、法の適用となると命令ベースになり、応じない場合は過料(罰金)を課すことができる。また協力金の財源も、地方自治体から国(地方創生臨時交付金)へと変わる。地方自治体が緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用を国に対して積極的に求めるのは、独自宣言のままだと地方財政がもたないからである。

帰省する人はワクチンを打ったかもしれないが、症状が出ないままにキャリアとなり感染を広げる可能性は、すでにワクチン接種が進んだ米国で指摘されているところだ。家族・親戚からの感染が半分という数字も、都市部からの帰省者の影響は否定できない。

ワクチン接種のスピードも、地域ごとにバラつきがある。宮崎市では、7月中旬から高齢者以外にもワクチン接種券が届き始めた。7月29日に予約が開始されたが、朝から子供の部活動の送り迎えなどしているうちに、予約終了となってしまった。

ローカルな病院でも接種可能なところはあるが、小さな病院での接種は、大半がかかりつけの患者のみか、その家族までに限定されている。今の家に転居して1年ちょっとでは、地元にかかりつけの病院がない。予約方法も直接来院するか、電話のみだ。

集団接種は8月19日に再び予約が再開され、そこでやっと家族全員分の予約が完了した。ただ接種は8月23日からで、ようやく1回目の接種が完了したところである。集団接種では空いてる枠を素早く押さえるしかないため、子供が学校にいる時間帯しか予約できなかった家庭も当然出てくるだろう。学校が始まった現在、ワクチン接種が学校の時間と重なった場合は、欠席ではなく出席停止扱いになるという。

集団接種会場となっている建屋。予約時間10分前からしか入ることができず、外で待機するしかない

家族で同時に接種すると、保護者が両方とも副反応で倒れた際に家庭が回らなくなってしまう。従って家族を2チームに分け、1週間ずらして接種することにした。家族全員が2回目の接種が終わるのは、9月下旬となる。

昨年のお盆は、皆が真面目に自粛したおかげで、大きな感染爆発には至らなかった。しかし今年、ごく一部の人たちが帰省を再開しただけで、日本中でこれだけの感染爆発が起こっている。2回のワクチン接種でも抗体が持続しない人が一定数おり、そうでない人も来年の夏まで抗体が保つのか誰にもわからない。そうなると地方にとっては、「お盆で帰省」は爆弾を呼び込むようなものである。

ただ、無宗教が大半と言われる日本人の中で、先祖供養のことを思い出すのはお盆ぐらいしかないのも事実だ。この時期の帰省が禁忌ということになれば、先祖供養の習慣も失われてしまうかもしれない。そうなれば墓地の運営や宗教は、今の形を保てなくなってしまうだろう。

親戚縁者が集まる古き良き日本のお盆の風景は、我々大人が子供の頃の記憶に残るだけになってしまう可能性も、ある程度覚悟しておく必要があるのかもしれない。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。