石野純也のモバイル通信SE
第97回
なぜいまキャリア自身がSIMフリースマホを強化するのか
2026年4月22日 08:20
OPPOのスマホを日本で展開するオウガ・ジャパンは、4月15日にフォルダブルスマートフォンの「OPPO Find N6」を発売した。価格は318,000円と高価なフラッグシップモデルだ。
同日には、英Nothing Technologyの日本法人であるNothing Japanがミッドレンジモデルの「Nothing Phone(4a)」と「Nothing Phone(4a)Pro」の2機種を発表している。Nothing Phone(4a)は5月8日、(4a)Proは4月22日に販売を開始する。
キャリアがオープンマーケット端末を展開する意味
超ハイエンドなフォルダブルスマホのFind N6と、デザイン性の高さや背面で見せるギミックにフォーカスしたNothing Phone(4a)シリーズには共通性がないように見えるかもしれない。しかし実はある販路が同じだ。
その販路とは、KDDIがこの2機種に合わせて開始する「au Flex Style」。オープンマーケットモデルのスマホを販売するブランドとして、4月15日に発表された。
オープンマーケットモデルとは、一般的にはキャリアを通さず、メーカー自身がメーカー自身の仕様で端末を販売すること。かつて、キャリアモデルにSIMロックがかかっていた名残から、「SIMフリー」とも呼ばれてきたが、au Flex Styleは「キャリア」がオープンマーケットモデルを扱うという構図だ。
一般的に、キャリアが扱うスマホはキャリアが一部を必須仕様に定めたうえで、メーカー側がそれを満たすように開発し、キャリアに納入している。対応周波数はもちろん、おサイフケータイなどの一部機能や内蔵アプリなど、その範囲は多岐にわたる。これに対し、au Flex Styleはアクセサリーを扱う「au +1 Collection」の延長線上にあり、シンプルな物販に近い。
そのため、販売するモデルは他の販路とまったく同じだ。例えば、Find N6にはauのスマホで標準搭載になっているおサイフケータイがなく、au系アプリもプリインストールされていない。Nothing Phone(4a)は、全モデルがおサイフケータイ対応のため、仕様面ではキャリアモデルに近いが、逆にKDDIが売りにする「au Starlink Direct」には現時点では非対応。こちらも、auのアプリはプリインストールされていない。
一方で、メーカーにとっては家電量販店やMVNOだけでなく、キャリアのオンラインショップや店舗で販売されることで、販路が広がるメリットがある。au Flex Styleでは、Nothing Phone(4a)がKDDIの直営店やau Styleで展示、販売される。リアルな店舗で取り扱われることで、まだ知名度の低いメーカーの端末がユーザーの目に留まる可能性は高まる。
Nothing Technology Japanを率いるマネージングディレクターの黒住吉郎氏も、直営店で取り扱いがあることに触れ、「KDDIとしてSIMフリースマホを強化する試みで、規模感は数百になる」と期待をのぞかせる。特に、キャリアショップはユーザーからも“スマホを買うお店”と認知されているため、その販売力は高い。店頭に設置することで、これまでオープンマーケットのスマホに触れていなかったユーザーに認知を広げる効果もある。
元々Nothingを知っていたユーザーにとっても、KDDIで契約できることで、より買いやすくなることは間違いない。
大きいのが、割賦販売の存在だ。Nothing Phone(4a)については、本体価格が58,800円だが、au Flex Styleでは、48回払いにでき、毎月1,225円の支払いで済む。手元にまとまったお金がないときでも、分割手数料なしで機種変更しやすくなるメリットは大きい。
支払いにPontaポイントを使えるため、キャリアの経済圏で貯めたポイントも活用可能。また、回線契約と同時に端末も購入でき、ワンストップで手続きができる。残価が免除されるアップグレードプログラムには対応していないものの、これまでキャリアでしか端末を購入したことがないユーザーにとっては、買いやすい販路と言えるだろう。
キャリア側には、端末のバリエーションを広げられるのがメリットになる。
特に、OPPOのFind N6や、Nothing PhoneはiPhoneやPixel、Galaxyなどと比べると認知度はまだまだ低いが、前者であれば折り目がつきにくいなど、研究開発に対する姿勢やカメラ性能の高さは一部のユーザーからは高く評価される。Nothingも、そのデザイン性の高さから、感度が高いユーザー層から支持を集めている。
メーカーとキャリアの「リスク」 それでも「新しい売り方」が必要
ただ、こうした端末をキャリアモデルとして導入するのはハードルが一気に高くなる。
先に述べたように、必要な仕様を満たしてもらう必要があるため、メーカー側に開発体制や販売体制を整える体力が求められるうえに、キャリア側も一定数量の納入に対し販売をコミットしなければならない。
メーカーとキャリアの双方にとって、リスクがあると言えるだろう。
高額なハイエンドモデルが売れづらくなっている中、キャリアとしても新たな販売方法を模索しているようにも見える。KDDIのau Flex Styleに先駆ける形で、ソフトバンクも25年11月にXiaomiなどのハイエンドモデルをそろえる形で「SoftBank Free Style」を開始しており、ラインナップを増やしている。
KDDIと同様、おサイフケータイに非対応ながらカメラ機能に定評のある「Xiaomi 17 Ultra」や、ゲーム性能に優れたZTEの水冷・空冷両対応の「REDMAGIC 11 Pro」を販売するなど、キャリアモデルにはない個性的なラインナップをそろえる。
販売数が多いと、それぞれのユーザーの間を取って平均的なスマホになりがちだが、その枠に収まらない端末をあえてこの枠に入れていることがうかがえる。
ソフトバンクの場合、割賦販売に加えてPayPayポイントによる還元を実施しているほか、回線契約で別途12,000ポイントを付与するページを案内するなどして、ユーザーに対してお得感も演出している。
価格の高騰や割引規制などにより、キャリアのハイエンドモデルが売れづらくなっている中、それを補う存在になれるのかに注目しておきたい。













