キャッシュレス百景

第16回

キャッシュレス西部開拓時代とiD(dカード)囲い込まれ by 編集部:臼田

昨年9月以降、Impress Watchでは「キャッシュレス」関連のトピックを重点的に取り上げている。記事を書いたり、取材に行くことも多いため、主要なスマホ決済サービスやキャッシュレス支払い手段は、個人的にも試すようにしている。

交通系のSuicaとPASMO(定期券)のほか、現時点で利用頻度が高いものは、iD、PayPay、LINE Pay、nanaco、Origami Pay、d払い(街のお店)あたりだ。

もっともこれらを使う前から「支払いはなるべくクレジットカード」という方針にしていた。理由は「月の支払額を一応把握したい」から。細かく家計簿をつけるほどではないが、使い過ぎには注意したい。加えて最近は「マネーフォワード ME」を使って、毎月の入出金を管理している。

スマホ決済を活用してからも、「基本はカード」の方針は変わらず、家賃や銀行引き落としを除く、月の出金額の8割程度はカード経由だ。しかし、いままで現金中心だった日常の少額決済などはスマホ決済に変わってきた。

PayPayは「わかりやすさ」と「開拓」が魅力

まずは、競争が激しいQR/バーコード系の決済について。基本PayPayとLINE Payをキャンペーン次第で選択する。2者よりトクな場合に使うd払い、よく行く店に導入されているOrigami Payあたりが主力だ。

一番利用金額が多いのはPayPayだ。その理由は、還元額以外に大きく2つある。

ひとつは、「キャンペーンがわかりやすい」という点。

PayPay

第1弾の100億円キャンペーンは、10日間で終わってしまったが、基本20%還元され、その上で“アタリ”がある、という仕組みがシンプルだった。第2弾もチャージ方法による還元率の違い(現金チャージは20%、カードは10%など)はあるものの、2月から5月末(予定)までは対象店舗で基本的にいつでも実施されている。

その他のPayサービスのキャンペーン期間は、1~2週間とか、長くても1カ月なので、その期間は使うが、「キャンペーン中か否か」を意識するのが面倒だ。

その点、PayPayの第2弾100億円キャンペーンは、長期間にわたっていつでも対象なので、生活習慣として定着しやすい。キャンペーン終了以降も3%と、高い還元率を維持するのも魅力的だ。

また、ポイント還元が「いつ、いくら発生するか」が、わかりやすいのもPayPayの良さ。LINE Payはd払いは、いつポイント付与されるのかがわかりにくく、なかには期間限定ポイントのようなものもある。PayPayはそうした細かな条件が少なく、また支払い時に、付与予定日と付与額が示され、明快だ。

わかりやすい還元表示

もうひとつのPayPayの魅力は、中・小規模店舗開拓が強い、ということ。編集部がある千代田区近辺は多くの店舗がキャッシュレス化されているが、自宅がある世田谷区の西側(郊外側)はまだまだ。この界隈の店を積極的に開拓しているのは、間違いなくPayPayだ。

PayPayの「マップ」(近くのお店)は、サービス開始当初から提供されているが、対応店舗が、この数カ月でみるみる増えている。通っている整体が、かなり早くからPayPay対応したり、近所の焼き鳥屋に導入されるなど、自分の行動範囲内でも結構な数の店がPayPay対応した。「PayPay使っているのはほぼ一人(筆者)」と言われている店舗もあるが、コンビニやドラッグストア以外でも使える店舗がどんどん増えてきているのは嬉しい。

近くのお店でマップ検索。経堂駅周りの店舗も多い

スマホ決済サービスの黎明期といえる今、郊外店舗をどのように攻略しているのかわかるので、マップを定期的に見るだけで、(世田谷)西部開拓時代をリアルタイムで体験できるような楽しさがある。特にカードが導入されていなかった飲食店や美容室などの開拓に積極的なようだ。

PayPayの不満は、マネーフォワードに対応していないこと。PayPay残高にチャージした後は、どこで幾ら使ったかがマネーフォワード上でわからないのだ。クレジットカード連携での支払いの場合は、クレカの履歴からマネーフォワード上で確認できるが、PayPayでのクレカ払いは、ポイント還元額が下がってしまう。

そのため、数千円の比較的高額のPayPay払いでは、会計時に同額を銀行からPayPayにチャージして支払い、そのチャージ履歴をマネーフォワードで管理している。面倒なのだが還元額が大きいこともあり無視できず、現時点ではこういう運用にしている。マネーフォワードに対応してくれると、より少額でも活用しやすくなるので、対応を心待ちにしている。

PayPayはマネーフォワード非対応なので、銀行からの出金額を管理している

マネフォ対応とオートチャージがありがたい「LINE Pay」

利用頻度でいえば、PayPayよりも多いかもしれないのが「LINE Pay」。ファミリーマートとドラッグストアを中心に利用している。主な理由は会社最寄りのコンビニがファミマだから。20%期間中は基本LINE Payだ。

LINE Pay

LINE Payで気に入っている点は、マネーフォワード ME対応ということ。コンビニでの数百円の支払いで、「食費」など費目を割り当てて管理できるので便利だ。

LINE PayはマネーフォワードME対応がありがたい

また、オートチャージ対応も便利。LINE Payはクレジットカードと連携せずに、銀行からのチャージが基本のプリペイド型のサービスといえるが、一度オートチャージ設定しておくと、いちいちチャージしなくていいので気楽だ。

現在は「残高2,000円を切ると2,000円チャージ」という設定にしており、これだと「大体3,000~4,000円入っているサイフ」というイメージで、LINE Payを使っている。

LINE Payのオートチャージ設定

要するに、マネーフォワード対応の有無によって、比較的に高額な支払いはPayPay、少額ではLINE Payと住み分けている。

先日、LINE Payも「マップ」対応したが、都心以外はほぼコンビニとドラッグストアで、自宅界隈では「発見」が無く、あまり楽しくない。しかし、この機能を追加してきたということは、今後積極的に開拓するという意思表示と受け止め、期待している。

LINE Payのマップ。PayPayに比べると店舗数が少なく、大手チェーン系の店が中心

PayPay、LINE Pay以外で予想外? に使っているのがOrigami Pay。ほぼ月に2回行っているケンタッキーフライドチキンと、たまに行くキャッシュオンデリバリー(都度払い)の立ち飲みビール屋に導入されており、いずれもその場で割引になるので重宝している。

特に便利なのがビール屋だ。Origamiしか導入していないため、店員も慣れているし、なにより小銭を用意しなくてよいのがありがたい。キャッシュオンだと、ビールを注文するたびに小銭を用意するのが面倒で、毎回お札で払ってお店から出た後にジャラジャラと小銭の重さにうんざりしたりする。この問題を避けられるのも、キャッシュレスの重要なポイントだ。

Origami Pay

ドコモ契約者優遇でまんまと「iD」に囲い込まれる

コード決済以外で、よく使う支払い手段は「iD」。非接触なのでスマートっぽい、という好みの問題で、PayPayやLINE Pay以上に使う機会が多い。また、紐づけているクレジットカードが、ドコモの「dカードGOLD」のため、様々なキャンペーンにより、自分にとってお得感がある支払い手段になっている。

iD(dカード)

スマホは、ドコモ回線の「iPhone XS」を使用中。ドコモと契約したのはDAZNが安くなる(ドコモ契約者向けのDAZN for docomoはほぼ半額)という理由なのだが、あわせて家族カードが無料ということもあり「dカードGOLD」(年会費10,800円/税込)にも加入していた。

iDは多くのクレジットカードが対応し、Apple Payのウォレットに登録して使えるのだが、dカードに紐づいたiDの優遇キャンペーンがドコモとdカードの契約者には魅力。筆者のiPhoneは、メルペイ、ANA VISAカードと合計3枚のiDを登録しているが、ほとんどはdカードに紐づいたiDを活用している。

最近のドコモは「d払い(街のお店)」のキャンペーンに力を入れているが、その多くがdカード契約の「iD」も同条件の還元が受けられる。先のゴールデンウイークの「dポイント スーパーチャンス」もその対象で、iD払いでも20%還元(期間限定dポイント)が受けられるので大いに活用させてもらった。

ある意味、ドコモに「囲い込まれている」のだが、もともとカードを持っていた利用者目線では、特別なサービスを受けているようなアップグレード感がある。6月のキャンペーン「dポイント スーパー還元プログラム」もドコモ契約者優遇感があるので、しばらくはiDを主力として使うことになりそうだ。

また、iDはコンビニや家電量販店など多くの店舗で導入されており、高額な決済でも使いやすい点も魅力だ。

普段はあまり使わないのだが、メルペイのゴールデンウイークのキャンペーンには参戦。iDにより、セブン-イレブンの70%還元をフル活用させていただいた。

それ以外で利用頻度が高いのは、電車の移動用のモバイルSuicaとnanaco。nanacoは、自宅の最寄りコンビニがセブン-イレブンだから使っているが、スマホ系の支払いに慣れ、プラスチックカードを持つのも面倒になってきた。そのため「7pay」には期待している。

7pay

ちいさなストレスからの解消

スマホ決済が普及してきたことで、無理せずに現金利用を減らせるようになってきた。

また、スマホ決済によりクレジットカードを持たなくて良くなったことも嬉しい。例えばプールやジムに行く場合、財布の盗難防止のため、少額の現金とスマホだけで出かける。そんな時に手持ちの現金が少なくても、日用品や食事を買って帰る、といった使い方ができるようになった。

弊社のオフィスグリコもPayPayに対応し、夜に小腹が空いたが、小銭が無いから自販機で飲みたくもないお茶を買って小銭を作ってからおやつを買う、という無駄が省けるようになった。こういう細かなストレスからの解消が、キャッシュレスの最大のメリットと感じている。

臼田勤哉