ミニレビュー

「au PAY」がいよいよスタート! auならではのコード決済の魅力と課題

au(KDDI)のコード決済サービス「au PAY」が4月9日、いよいよスタートした。キャッシュレス百景でもau WALLET/PAYに期待していると書いたauユーザーとして、どんな使い勝手なのか、店舗で実際に試してみた。

「au WALLET」アプリのアップデートでコード決済追加、1回の決済上限は5万円

au PAYは、「PayPay」「LINE Pay」「Origami Pay」などと同様、スマホに表示したコード(バーコードないしQRコード)を使って、リアル店舗で決済するためのサービスだ。

コード決済では通常、利用金額を銀行口座からオンライン振込したり、あるいはクレジットカードを紐付けるなどして、お金をなんらかの形でコード決済サービスへ動くようにしておかねばならない。au PAYではここで「au ID」を使う。

au IDは、au携帯電話の契約者だけが取得できるアカウントだ。携帯電話料金の支払い額に応じて貯まる「au WALLET ポイント」も、このau IDがベースになっている。このため、2019年4月の時点では、au PAYを使えるのはau契約者に限られる。

au PAYを利用するには「au WALLET」アプリが必要になる。もともとauは、au IDに紐付いた形のプリペイド決済サービス「au WALLETカード」を展開してきた。au PAYは、そこへ上手く相乗りするかたちになっていて、アプリも完全に共用する格好だ。

Android版「au WALLET」アプリのホーム画面
コード決済をする場合は、「コード支払い」をタップしてこの画面を表示

au WALLETアプリは、すでにau PAY対応を済ませたバージョンが配信中。すでにau WALLET アプリをインストールしている場合、アップデートされているか確認しよう。なおアプリはiOS版のほか、au製Android端末向けのバージョンが「au Market」経由で公開されている。Google Playにはないので、ご注意を。

このアプリの準備さえできていれば、au PAYの利用は簡単だ。アプリ起動時にau PAYの紹介が出るので、その案内を読み、利用規約への同意を行なえば、ほぼ完了する(場合によってはau IDのログイン作業などが必要)。

au WALLETアプリを起動すると、このようなメッセージが出るので、利用規約などに同意すれば準備完了

なお、au PAYでは1回で決済できる金額の上限が5万円に設定されている。ちょっと大きめの買い物には不向きなので、覚えておいてほしい。

貯まっているポイントでチャージ

au PAYは、アプリに表示されている残高の範囲でしか決済できない。0円の場合、当然チャージ(入金)しなければならないが、ここで前述の「au WALLET ポイント」が使える。これこそがPayPayやLINE Payにはない、au PAYならではの強みになっている。

au WALLETポイントは毎月の携帯電話利用料1,000円に対して10ポイント(10円相当)貰えるほか、長期契約者特典「au STAR」を受けていればさらに上乗せがある。毎月7,000~8,000円の支払いがあるユーザーなら、最低でも毎月100~200ポイント程度の還元があるはずだ。もし、このポイントを1年近く使っていないのであれば、1,000ポイント、つまり1,000円分のチャージが今すぐにできるという訳。

au携帯電話の契約者であれば、恐らく数百~数千ポイントをすでに保有している可能性が高い。これをすぐにau PAYへ回せる。「ポイント入金(チャージ)」から実行しよう
ポイント入金なら、銀行口座やクレジットカードの紐付けは不要

ポイントでチャージするには、アプリの画面で「ポイント入金」をタップ。実際の残りポイントが表示されるので、100円単位で指定しよう。なお、ポイントによるチャージは毎月2万円が上限となっている。数年分のポイントを一気にau PAYで使うようなシーンではご注意を。

筆者の場合は、auを15年以上契約しているのでau STARによる還元も多く、ここ1年で6,000ポイント以上貯まっていた。また、au PAYとau WALLETカードは残高が一元管理されている。筆者のように、au WALLETカードをすでに使っているユーザーなら、その残高をそのままコード決済に回せてしまう。この多用途っぷりが、サービスとしての魅力と言える。

決済は簡単だけど、「店員さんへの説明」が大変

いよいよ実際に決済してみよう。au WALLETアプリを立ち上げ、「コード支払い」のタブを選択すると、コードが表示される。これを店でスキャンしてもらうというのが、実際のフローになる。

最初に訪れたのがコンビニのローソン。レジ前に立って「au PAYで払いたいんですけど」と言ってみたものの、店員さんはやや怪訝な表情。au PAY開始わずが2日後の4月11日だったので、さすがにサービスの存在を知らなかったようだ。

こちらも「まだ始まったばっかりの払い方らしいんですが」などと食い下がると、店員さんも察したのか、「とりあえずやってみます」と返してレジ操作し、スマホの画面に表示したバーコードをスキャン。すると問題なく処理された。受け取ったレシートにはしっかり「au PAY」の表示が出ていた。

ローソンでau PAYを使った際のレシート。ちゃんと「au PAY」の表示がある
スマホ側には決済完了のメッセージ

続いて、飲食店の松屋へ。ここでは食券自販機にQRコードリーダーが搭載されている。食べたいものを選び、自販機のモニターに表示された「QRコード決済」をタッチ。そこでQRコードを読取り部に向けると、あっけないほど簡単に決済できてしまった。

松屋の券売機で買った食券にも「au PAY」。自販機でのコード認識もスムーズで、とにかく快適だった

ビックカメラでも数百円の買い物をau PAYでしてみた。どうやら店頭のレジだけではau Payの処理が完結しないようで、レジ横に置いてあるコード決済用スマホ(iPhone)のカメラで、QRコードを読んでもらわないといけない。その決済用スマホは、レジ数台に対して1台程度の設置らしく、繁忙時の処理は少々大変そうだ。

ビックカメラのレジ周り対応はさすがの一言。au PAYのロゴが出ているので、客としても安心できる

一方で、ちょっと困ったのが某・物販店チェーン。「au PAYで」とお願いすると、「いや、ちょっとそういうのは使えないと思うんですけど……。PayPayなら使えますが」というまさかの返事。筆者としても「は、はぁ。じゃあ現金で払います」と返すのがやっとだった。

後々調べても、間違いなくそのチェーンは4月9日段階でのau PAY対応を表明済みだったのだが、レジ周りに「au PAY使えます」とか「使えるコード決済はこちら」などの表示がまったくなく、店員にも周知できていなかったようだ。ちなみに、同系列の別店舗を後日訪れたところ、そちらは全く問題なくau PAYで決済できた。店員自身はau PAYを知らなかったようだが、レジそばにau PAYのロゴマークが表示されていたので、意思疎通もしやすかった。

某・物販店チェーンでは、店員の対応がまちまちで、一度は決済ができなかった。筆者以外でも十分あり得るシチュエーションだと思うので、「使えない」と言われても諦めずに聞いてみよう

もっと大変だったのが、とある居酒屋。レジ横にばっちりau PAYのシールが貼ってあり、これは大丈夫だろうと思っていたのだが、まさかの「決済不可(というか、途中で諦めた)」。レジとは別に用意された、QRコード決済用のハンディターミナルを使ってコードを読み取るのだが、とにかく上手くいかない。最初はまったく読み取れず、店員がなにか操作をして改めて読み取ろうとすると、今度はターミナル側で明確に「決済失敗」のエラーメッセージが表示される始末。

最終的に現金で払ったが、それこそ金曜夜の繁忙時、店員さんが忙しい中、4~5名分の飲み代数万円を払おうとしたときにこのエラーが出ていたら……。想像するだけで、震えが来る。

au PAYの決済履歴画面。単純な金額だけでなく、月別の支払い構成比をグラフィカルに表示してくれるの便利

まずは「知名度!」

実際に何度か決済してみて気付いたのが、「客側のスマホで店のバーコードを読み取り、客が自ら金額を手打ちして決済する機能」(注:ユーザースキャン、店舗提示型などと表現される)がau PAYにはない。

例えばPayPayでは、レジカウンターなどに決済用バーコードを貼り出しておき、それを客が自ら読み取って決済し、完了画面を店員に見せるという手法がある。ただ、これにはバーコードを偽造された際、問題が大きくなるとのもある。au PAYでは、そもそもこの機能がないため、原理的にはリスクが少ない。しかし、「店側の省力化」を考える上では、ややデメリットになってくるかもしれない。

そしてau PAYの今後を考えると、まず重要なのは知名度だろう。客側はもちろん、店側にもau PAYというブランドが浸透していないと、筆者が経験したような事態が発生してしまう。まずは4月15日からはポイントチャージが10%増額になるキャンペーンが行われるが、その後も「○○%還元!」とか、「○○が貰える!」とか、思い切った施策に期待したい。

4月3日のau PAY発表会での展示より。こうやってレジ周りにサービスのロゴをもれなく掲出しておかないと、客側の体験が意外と左右されてしまう

キャリアフリー化するならまだまだ機能不足、チャージはじぶん銀行以外も!

auは夏をめどに決済サービスのキャリアフリー化を宣言している。ドコモやソフトバンク、格安スマホの契約者であってもau PAYが利用できるようになるとみられ、これ自体は歓迎すべきだろう。

となってくると、次に重要になってくるのが、サービスの基本スペック。そもそもサービスの質が高くなければ、数多く展開されるコード決済の中から、わざわざau PAYを選んでくれない。

au PAYでは決済額200円ごとに1ポイント、つまり0.5%のポイント還元が基本。月額499円(税別)の「auスマートパスプレミアム」会員に対しては、この料率が3倍になったり、毎月3日・13日・23日の「三太郎の日」には20%還元を行われるが、au携帯電話を契約していないユーザーからみると、メリットは相対的に少なくなってしまう。

またau PAYへチャージする手法も、今後充実させていく必要があるだろう。いくらau WALLETポイントでチャージできるとはいえ、利用シーンを増やしていくにはユーザーが手持ちの金銭を任意にチャージする必要性も比例して高まる。

ただ現状では、銀行からのチャージは自社グループ内のじぶん銀行にしか対応していない。対応銀行を増やすのは必須だろうし、キャリア決済(携帯電話料金とのまとめ払い)、クレジットカード以外の手法についても、検討を重ねていってほしい。

筆者がau PAYで最も評価しているのは「チャージした金額を、コード決済でもau WALLETカード決済でも使える」という点だ。例えばPayPayの残高は、基本的に店頭決済のみでの利用。一度チャージした金額は現金化できず、かといってAmazonのような通販サイトで使えないため、結果として「入金が常に控えめになる」。

こちらのスライドも4月3日のau PAY発表会より。残高の使い道が多いのは大きな魅力。ただチャージ手段はますます拡充させるべき。キャリアフリー化するなら、なおさらだ

その点、au PAYは使い道が幅広いが、LINE Payと比べてみると、チャージ手段の多様さでは明らかに負けている。こうした機能の向上を続けつつ、それでいて地道に知名度を高めていく。この両面が、後発組のau PAYには不可欠だろう。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのWebニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。主に「INTERNET Watch」「AV Watch」「ケータイ Watch」で、ネット、動画配信、携帯電話などの取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2017」「ウェアラブルビジネス調査報告書 2016」(インプレス総合研究所)。