キャッシュレス百景

第10回

結局、物理カード・QUICPay・QRコード決済できる「LINE Pay」が最強ではないか by 森田秀一

とにかく前払いしたい、だけどカードは増やしたくない

歴史的に見れば、キャッシュレスの主役は間違いなくクレジットカードです。ただ私はどうしても「買い物しすぎて後から請求書を見てビックリ」するのがイヤで、正直なところクレジットカードそのものに恐怖を感じるレベル。毎月の電気代や電話料金をクレジットカードで支払えばポイントが貯まるといくら言われても、絶対に拒否します。それくらい、クレジットカードは嫌いです。

一方でプリペイド──正確には、繰り返しチャージできるタイプの決済手段にはあまり抵抗がありません。自分で任意にチャージした分しか買い物できませんから、その安心感たるや!

キャッシュレス決済用のカード類。スマホの「おサイフケータイ」を軸に、あとはLINE Payカードと(ほとんど使わないが保険として)Amazonのクレジットカードを持ち歩いています。ほかのau WALLETカードなどは、ほとんど家で留守番中

とはいえ、やはり手持ちのカードが増えてしまうのはいただけません。クレジットカードなり電子マネーのカードが財布に5~6枚も入っているとなると、単純に嵩張りますし、もし財布を紛失したときの停止手続きも、煩雑になってしまうかと思います。

だからこそ、私はおサイフケータイを愛用しています。auとして初めておサイフケータイに対応した「W32S」の発売以来、約14年に渡って、キャリアやメーカーは変えつつも、おサイフケータイ対応電話機を一貫して持ち歩き続けています。

私はもう「よほどの事がない限り、おサイフケータイを使い続ける」と決心したので、目に付いた決済サービスはとにかく片っ端から登録しています。モバイルSuicaのためにビックカメラSuicaカードも契約しましたし、楽天Edy、nanaco、WAON、そしてモバイルスターバックスカードももちろん使っています。これですでに5 in 1なのに、あとヨドバシカメラのポイントカードやANAのチケット代わりにもなるんですから、いや便利なサービスです。

こんな感じで、メジャーな電子マネーは全て登録し、店によって使い分けています

18年末からは「LINE PayでQUICPay」がメインに

では、おサイフケータイ対応のチャージ型電子マネーの中でどれを一番使っているか? 交通系のモバイルSuicaを別格とすれば、それはもう楽天Edyでした。確か2014年だったと記憶しているのですが、メインバンクにしているゆうちょ銀行の口座からEdyへ直接チャージができるようになった事が大きかった。それまではATMでお金を引き出し、コンビニからチャージしていたので、使い勝手が本当に激変した事を覚えています。

こちらは楽天Edyアプリ→楽天Edyは、ゆうちょ銀行の口座から簡単にチャージできるのが魅力です

ただ、このEdy一強体制が2018年11月に崩れ去りました。LINE PayがQUICPayに対応したからです。

LINE Payは、もはやどう説明していいか分からないほど多方面への機能拡充を果たし、総合決済プラットフォームとも言える立ち位置になってきました。今でこそ「QRコード決済の雄」ですが、最初は恐らく「スマホで通販するときにLINEアプリを経由するので認証が楽だよ」とか、その程度のサービスだったように思います。

LINEのメニュー画面にも、このように残高などが表示されます

しかしながら、LINE Pay立ち上げ当初からあった「LINE Payカード」は、個人的に“刺さった”サービスでした。使い勝手的には、JCB加盟店で使えるクレジットカードそのものなのですが、あくまで「LINE Payにチャージした金額の範囲内でしか決済できない」、つまり完全な意味でのプリペイド決済手段となっています。それでいて、サービス開始当初は決済額の2%を無条件にポイント還元(2019年3月時点では条件が変更されています)。クレジットカード大嫌いの私としては、願ったり叶ったりなサービスなのです。チャージ手段も豊富で、ゆうちょ銀行からもOK。

こちらがLINE Payカード。LINEアプリから手続きすると、無料で郵送してくれます。ちなみに「日本の電話番号が登録されたLINEアカウントをお持ちであれば、どなたでも申し込める」とのこと。つまり、申請にあたっての年齢制限は事実上なし

一例としては、LINE Payカードの登場によって、ビジネスホテルではほぼ完全に現金を出さなくなりました。アパホテルや東横インのような、懐に優しいタイプのホテルでもクレジットカードはほぼ100%使えます。むしろ電子マネーが使えるホテルは珍しい類なので、LINE Payカードはまさにガッチリとハマりました。

一般的な通販サイトでもLINE Payカードは使えます。例えばAmazonの場合、私は本当にクレカ後払いを回避したいので、それこそネットバンキング払いを多用していました。が、それもLINE Payカードの登場によって一変。LINE Payのチャージ残高で買い物して、オマケにポイントもゲットできるようになったのです。

これだけ便利になったところで、そこへさらにLINE PayのQUICPayが加わりました。もともとQUICPayは、クレジットカードによる後払いでタッチ決済するための方式でしたが、LINE Payとの掛け合わせで前払い手段にも発展してくれた格好です。

現在はおサイフケータイ対応のAndroidスマホでしか使えませんが、店頭端末にタッチするだけ、クレジットカードを店員さんに渡さなくても決済できるという、今までのEdyやnanacoのようなレジ体験が可能になったのです。

LINEアプリでQUICPay設定をはじめ、最終的には「Google Pay」アプリから手続きをすると準備完了→Google PayのQUICPay設定画面

また、QUICPayが使える店は非常に多いです。私の生活圏の印象としては、大抵の場合、Edyが使える店であれば、ほぼ間違いなくQUICPayに対応しています。

Edyとの比較で言えば、一度チャージした金額をさまざまな決済手段に使えるのも良いポイントです。Edyにチャージした金額は当然Edyか楽天系のサービスでしか使えません。対してLINE Payへのチャージ額は、QUICPayだろうがLINE PayカードだろうがQRコードだろうがユーザー間送金にも使えます。

色々考えてみますと、LINE Payのように「物理カードを発行」「銀行口座チャージが簡単」「QRコードでも払える」「ユーザー間送金もできる」の全てを備えた決済プラットフォームはあまり無いと思います。Kyashは店頭QRコード決済ができませんし、au WALLETはじぶん銀行以外の銀行口座からはチャージ不可能です。逆にPayPayはJCBやらVisaやらの加盟店で使えません。

とはいっても全幅の信頼を置いてる訳じゃないです

ただ、LINE Payはポイント還元で“やらかし”の実績があります。サービス開始当初はLINE Payカードでの一律2%還元を実施していましたが、2018年5月でそれを一旦終了。毎月の利用実績で還元率が変動するようになり、最悪の場合は還元率が0%になってしまいました。

画像はLINE Pay公式ブログ)ポイント還元率の調整を説明するブログ記事。2018年5~10月くらいはもう、本当に方針がコロコロ変わり、振り回されました

私はこれに反発し、同年7~8月あたりは完全にLINE Payの利用をやめ、au WALLETに鞍替えしたほどです。ただ、その後も何度か改定が入り、同年10月からは「最低でも0.5%、月10万円以上決済すれば翌月だけは2%還元」となったため、今はまたLINE Payを積極的に使っています。

恐らく皆さんの中には「こんだけ○○Pay増えちゃってどうすんだよ。どれか1個にしろよ!」とお考えになる方も少なくないでしょう。ただ、やはりそこは競争だと思うんですね。勃興期ゆえに、サービス事業者が極端に多いのはまぁその通りなんですが、選択肢があればそれだけ、どこか1つが改悪になったとき、他へと移ることもできます。

LINE Payのライバルとして、今後期待しているのはau WALLETです。すでに物理カードを発行しているのに加え、QRコード決済「au PAY」も4月にスタートします。さらにはサービスのキャリアフリー化も表明済みです。親和性の高い銀行が、いまのところじぶん銀行だけなのは気になりますが……。

2月13日の発表会で、auの決済系サービスのキャリアフリー化方針が表明されました。使いやすいサービスになることを期待しています

あまり無理してQRコード決済を使わなくてもいいのでは?

2019年春の段階では「キャッシュレスといえばQRコード決済」みたいな雰囲気になっています。ですがここまで書きましたように、実際にはクレジットカードやおサイフケータイもまた、キャッシュレス手段として長年実績を積んできていて、店側のインフラも整っている訳です。

これらをきっちり活かしつつ、それでいて今までキャッシュレスにチャレンジできなかったお店が、ここでQRコード決済を導入するという、言わば“スロースタート”でいいんじゃないかと、常日頃感じています。

とあるマクドナルドの店頭。現状でもこれだけキャッシュレス決済に対応します。ここにQRコード決済が加われば便利なのは間違いないですが、とはいえ、そこまで性急に対応しなくてもいいような……。

もちろんQRコード決済の便利さも知っているつもりです。私が実体験した中では、テーブル会計式のレストランとQRコード決済は相性バッチリでした。普通、テーブル会計の店でクレジットカードで決済しようとすると、店員さんにカードを預けなければなりません。16桁の番号を見ないよう、配慮してくれているとは思いますが、客側も店側も、気を使うのは事実でしょう。

ですが、そのお店はPayPayに対応していて、会計伝票をはさむバインダーの裏に決済用バーコードを掲出していました。客は店員さんが見ている前で、そのバーコードをアプリで読み取り、決済を実行し、完了画面を見せればOK。テーブルからレジまで足を運ぶ手間もなく、これは便利だなーと正直感心しました。

こちらは個人的な提案なのですが、小規模な理容室や美容室はQRコード決済と相性がいいような気がします。ランチ時の食堂やコンビニだと、とにかく客が集中して決済に時間をかけたくない、すると現金が結局一番だったりします。その点、理容室などはけたたましくレジが動き続くタイプの商売ではないので、QRコード決済に店側・客側どちらが不慣れでも、なんとか運用できるのではないでしょうか。

QRコード決済画面をなるべくすぐ呼び出せるよう、スマホのメイン画面にショートカットアイコンを置くようになりました

もちろん、決済端末はタダじゃありませんし、数%とはいえ手数料がかかるのは、個人規模の店舗にとってネックだとは思います(今ゼロ%だといっても、それが永遠に続きはしませんし)。「QRコード決済をやると客が増える」みたいな事例がもっともっと増えていくといいですね。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのWebニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。主に「INTERNET Watch」「AV Watch」「ケータイ Watch」で、ネット、動画配信、携帯電話などの取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2017」「ウェアラブルビジネス調査報告書 2016」(インプレス総合研究所)。