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大阪万博「いのちの未来」が東京・高輪に 夏休みの知的体験「いのちの未来+」開幕

2025年の大阪・関西万博で、多くの来場者に強い印象を残したシグネチャーパビリオン「いのちの未来」が、アップデート版「いのちの未来+(いのちのみらいぷらす)」として、東京・高輪ゲートウェイシティに帰ってくる。

「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」(運営:JR東日本文化創造財団)は、ATRいのちの未来研究所、パルコと共同主催する開館記念プログラムとして、「いのちの未来+」を開催する。

会期は2026年7月25日から9月25日まで。夏休み期間と重なるため、家族連れはもちろん、未来の社会やテクノロジーに関心を持つビジネスパーソンにもおすすめしたいイベントだ。

会場となる「MoN Takanawa」は、26年3月にTAKANAWA GATEWAY CITY内に開館した複合型ミュージアムで、「100年先へ文化をつなぐ」をミッションに掲げる。アート、テクノロジー、伝統文化などを横断しながら、新しい文化体験を創出することを目指している。24日に行なわれた内覧会の様子をレポートする。

MoN Takanawa: The Museum of Narrativesで開催される「いのちの未来+」
イベント名:いのちの未来+

会期:2026年7月25日(土)〜9月25日(金) ※第1期会期中の休演日は8月3日(月)
会場:MoN Takanawa: The Museum of Narratives
(東京都港区・TAKANAWA GATEWAY CITY内)
アクセス:JR高輪ゲートウェイ駅から徒歩約6分、都営浅草線・泉岳寺駅から徒歩約3分。主催:いのちの未来研究所(ATR)/MoN Takanawa/株式会社パルコ
料金(税込):一般 前売3,500円(平日)~、当日4,000円(平日)=4,500円(土日祝)、U25 2,500円、中学生以下1,500円(30分ごとの日時指定制)
チケット:イープラス、公式プレイガイド(Fever)、MoN Takanawa公式チケット(JRE ID/au ID)で販売中。前売券は来場前日18時まで購入可能
体験時間:約45分

2つの新要素で「人間とは何か」を問い直す

監修者は大阪大学教授/ATRいのちの未来研究所客員所長で、アンドロイド研究の第一人者として知られる石黒浩氏。

大阪・関西万博版に新要素が付け加えられた「いのちの未来+」

大阪・関西万博版「いのちの未来」は、人間とロボットが共存する未来を舞台に「人間とは何か」「生命とは何か」という根源的な問いを来場者へ投げかける展示だった。

今回の「いのちの未来+」は、基本的な物語構成は同じで、MoN Takanawaの空間に合わせて再構成したもの。ただし展示内容を単に移設するのではなく、新たに万博で描かれた50年後の未来像に「いのちの未来の選択」という視点を新たに追加して、来場者自身が未来社会のあり方について考える体験へと再構成した。観覧者は約45分間、ヘッドフォンを装着してストーリーを体験する没入型となっており、エンターテインメント性と哲学的な問いが融合した内容になっている。

展示は大きくわけて3部構成。ゾーン1は、埴輪や文楽人形なども含めて、日本人がモノに命をやどしてきた歴史を振り返る。

日本人がモノに命をやどしてきた歴史を振り返る「ゾーン1」
右端は石黒氏による最初のアンドロイド「コドモロイド」

ゾーン2は、50年後の、ある家族の回想というかたちで、ロボットと人間が共存する未来の暮らしや、命のあり方や技術と人の関係性を考える。ここがメインゾーンとなり、ここからはヘッドセットを着用することが求められる。

ゾーン2の冒頭に登場するヤマトロイド
可動箇所60箇所のアンドロイド
他にも様々なアンドロイドが登場する
アンドロイドの真正面に座ることも可能
ある家族の視点で未来のくらしが描かれる
その中で哲学的な問いが織り交ぜられる
登場人物と観覧者は、問いをつきつけられることになる
自然死か、アンドロイドとして記憶を残すか
アンドロイド4体の対話で、問いがさらに掘り下げられる
ゾーン2以降はヘッドセットをつけた体験となる

最後のゾーン3は、一気に1,000年後の未来を描いたゾーン。石黒氏の考える1,000年後の進化した人間の姿が描かれる。なお来場者も一部演出上ネタバレを防ぐ必要がある箇所だけを除き、基本的に動画や写真撮影は可能とのこと。

ゾーン3。1,000年後の未来を描く
最後に提示される石黒氏によるメッセージ
「いのちの未来+」 MoN Takanawa: The Museum of Narratives

新要素はもう一つある。AIを搭載した「漱石アンドロイド2.0」と来場者が実際に言葉を交わせる、双方向コミュニケーション体験が導入された。夏目漱石を模したこのアンドロイドは、自律的な対話ができ、漱石にまつわる質問にも自分の言葉で答えるという(学校法人二松学舎150周年記念制作協力・別途専用チケットが必要)。

「漱石アンドロイド2.0」。夏目漱石アンドロイドとの対話を楽しめる

人と人、人とアンドロイドの関係性を見てほしい

24日に開催された内覧会では、MoN Takanawa: The Museum of Narrativesアーティスティック・ディレクターの内田まほろ氏が「世代を問わず『いのち』と向き合う機会となることを期待している。感動をより深くするために、新たなシナリオ、夏目漱石アンドロイドとの対話体験を加え、日常で思い出すきっかけとなるオリジナルグッズを拡充した。演劇や映画、イマーシブ体験ともすこし違う新しいエンタメ体験となっている。深く心に刻まれる内容だと自負している」と紹介した。

MoN Takanawa: The Museum of Narrativesアーティスティック・ディレクターの内田まほろ氏

シナリオを担当したCHOCOLATE Inc. 取締役/チーフコンテンツオフィサーの栗林和明氏と、石黒浩氏は、開発した本人に似せたアンドロイド「ジェミノイドHI-6(通称:イシグロイド)」と一緒に登壇。展示のアップデート部分、みどころを解説した。ジェミノイドは万博期間中VIPルームでずっと対話を続けていたという。

大阪大学大学院 基礎工学研究科教授・ATRいのちの未来研究所客員所長 石黒浩氏
「ジェミノイドHI-6(通称:イシグロイド)」

新シナリオについては栗林氏が「最後のエピローグをアップデートした。4人のアンドロイドたちの会話を聞いてもらいたい。つい一緒に考えたくなるようにはどうすればいいかこだわった。未来はどうなるのかという問いを提示することをもっとも重視した」と述べた。そして「何よりテーマ自体が難しかった。いかにこのテーマを手に取りやすくするか。会話を精査して、かみくだいてテーマを届けやすいようにした」と語った。そして「シナリオはもちろんだが、アンドロイドの表情や動きがさらに繊細になっている。ぜひそこを見てもらいたい」と紹介した。

CHOCOLATE Inc. 取締役/チーフコンテンツオフィサーの栗林和明氏

石黒氏は「万博では50年後を想定した。一年でロボットもだいぶ進歩した。50年先ではなく5年くらい先にはアンドロイドに記憶を引き継いでさらに長く生きることができるかもしれない。もっと近い未来、責任を持って考えなければならない。(自分の)未来に関することだという意識で展示を見てほしい」と述べた。

イシグロイドと石黒浩氏

質問を振られたイシグロイドは「人と人との関係、人とアンドロイドの関係性を見てほしい。アンドロイドを見て自分がどう生きるか考えてほしい」とコメント。なおイシグロイドには石黒氏の著作やメディアインタビュー記録が全て入力されているだけではなく、インターネット上の情報も検索して答えるので、石黒氏本人よりもうまく答えることがあるという。

イシグロイドによる質問に対する返答 「いのちの未来+」記者会見

見るのが二回目になる人については「アンドロイド同士の対話内容がだいぶ変わっているので、より深く人とテクノロジーの融合について考えられる」と石黒氏。栗林氏は「何度も来て問いをかみしめてくれるのはとても嬉しい」と述べた。

内田氏は「二回目以降の方は、すでにコミュニケーションが成立している人との『久しぶり』のような感覚を味わってもらいたい。東京で初めて見る人には驚きだけではなく、ロボットとの関係をダイレクトに想像してもらえるのではないか」と語った。

このアンドロイド4体による対話が一押しのようだ

会期中には石黒浩×落合陽一両氏の対談も

会期中の8月6日には、石黒浩氏と、同じく万博テーマ事業プロデューサーの一人だった落合陽一氏によるトークイベントも開催される予定だ。

廊下には万博時のディスカッションの結果も掲示されている
様々な未来プロダクトについての議論を楽しむこともできる

「いのちの未来+」には、大阪大学基礎工学研究科やATRインタラクション技術バンク、ムーンショット型研究開発事業(アバター共生社会プロジェクト)、理化学研究所といった国内の主要な研究機関が技術協力しているが、本展自体は技術そのものではなく技術が社会に入り込んだあとを描いている点に特徴がある。

人と技術がどのような関係を築くのか、幸福とは、生命とは何かといった問いを投げかけている。

夏休みだからこそ、親子で訪れる価値

石黒氏は「我々人間の生きる目的は進化のためにある。新たな考え方を培っていく必要がある。この再演のなかで人間の生きる意味を考えてほしい」と語った。展示は特段の専門知識がなくても、誰でも楽しめる。親子で鑑賞すれば、将来の社会や、技術との付き合い方に関する会話のきっかけにもなるだろう。

関係者4名
入り口では対話する猿のアンドロイドがお迎え

MoN Takanawaでは「ぐるぐる展」(〜9月23日)や、8月8日〜30日開催の「週末ぐるぐる研究会」など、他の子ども向けプログラムも行なわれている。「高輪ゲートウェイシティ」自体も新しい都市開発エリアであり、展示鑑賞と街歩きを組み合わせれば、家族で一日楽しめることは間違いない。

Tシャツなどグッズも多い
オフィシャル図録や書籍などの一部は石黒氏のサイン付き