レビュー

楽しいカメラ、AIはこれから AIグラスの新標準「Ray-Ban Meta」を2カ月使った

Ray-Ban MetaのWayfarerモデル

アメリカでは数年前から発売されていたMetaのスマートグラス「Ray-Ban Meta」が、ついに5月から日本でも発売を開始しました。

「HUAWEI Eyewear 2」や「OWNDAYS CONNECT」といったオーディオグラスを愛用し、今でも充電の面倒さにめげることなく毎日愛用している筆者にとって、オーディオグラスをベースにカメラやAIが搭載されたRay-Ban Metaはとても気になる存在。秋にはGoogleもオーディオグラスを発売するというニュースが舞い込んだタイミングで悩みはしたものの、「海外では数世代にわたって進化してきたMetaのスマートグラスを体験するのもいい経験」と自分に言い聞かせ、発売開始とほぼ同時に注文しました。

筆者は高校生から数十年以上眼鏡生活を続けており、Ray-Ban Metaをオーディオグラスとして日常使いするためには、度付きレンズの交換が必要不可欠です。今回日本で発売されたRay-Ban Metaのうち、スポーツタイプの「Oakley Meta Vanguard(ヴァンガード)」以外はすべて度付きレンズへの交換が可能なことも、購入を後押ししました。

正面から見たところ。左グラスの左上に「Ray-Ban」、右グラスの右側に「Meta」のロゴ

ただし、ラインアップされたモデルの中で眼鏡を意味する「Optics」の名を冠する「Ray-Ban Meta Optics(Gen 2)」は、鼻の部分で位置を固定するノーズパッドや調整可能なテンプルチップなど、顔にフィットするための仕組みが追加されている点が異なります。

筆者はサングラスタイプの「Wayfarer」を購入したのですが、元々が海外向けに作られている製品のためか筆者の顔よりサイズが大きく、装着してもすぐに下がってきてしまいます。基本的には海外向けの製品で日本人の標準的な顔のサイズには馴染まないケースもあり、まだまだ店舗数は少ないもののメガネスーパーやパリミキ、和真などRay-Ban Metaを試せる店舗も増えているので、装着感が気になる方は近所に店舗があるか調べてみてください。

また、度付きグラスの交換は店舗ではなくRay-Banで行なうため、購入してもすぐには使えず、レンズ交換して手元に届くまで2週間ほど待つことになります。筆者の購入価格は本体が67,000円、交換したレンズが片方21,500円で、合計金額は110,000円でした。

「ノーズパッド」の調整に苦戦 装着感を微調整

前述の通り、筆者はOpticsのノーズパッドやテンプルチップなどの違いを知らないまま購入してしまったのですが、違いを把握しようと、Ray-Ban Metaの公式サイトを見てもノーズパッドやテンプルチップに関する詳しい説明はありません。

その後僚誌AV Watchのレビューを見たところ、鼻の部分のパッドを交換して装着を調整できる機構になっているようです。

これくらいなら市販の調整用ノーズパッドでも十分に役に立つのではと思い、ネットでいくつか注文して試してみました。

まず試してみたのがテープで貼り付けるタイプのノーズパッド。構造はシンプルですが装着感は大きく向上しました。今回購入したRay-Ban Metaは以前使っていた眼鏡から度を変更したこともあり、「レンズがどうも合わないな」と思っていたのですが、ノーズパッドを装着したら目の前がはっきり見えるようになりました。実際にはレンズが合わないのではなく、顔からずり落ちて正しい位置に固定できていなかっただけのようです。

貼り付け型のノーズパッド
Ray-Ban Metaに貼り付けたところ。装着感はかなり改善

テープで貼り付けるのではなく取り外しできるノーズパッドも試してみました。こちらは充電端子の部分に装着するため、充電のたびに取り外す手間はあるのですが、装着感は上。貼り付けタイプのノーズパッドは何度か調整したもののわずかにずり落ちてしまうのですが、こちらはズレが少なくしっかり固定できています。

取り外し型のノーズパッド
装着したところ

装着感を取るか手間を取るか悩みましたが、貼り付け型を取り外し型とは干渉しない位置にすることで、緊急時は貼り付け型、装着感を大事にしたいときは取り外し型、と使い分ける運用にしました。

装着位置を工夫して両方を装着

スマホを取り出さない写真撮影 マイク性能と動画に注目

これまで「オーディオグラス」を多数使ってきた筆者ですが、それらとRay-Ban Metaの最も大きな違いといえるのが「カメラ」の搭載です。

本体左側に1,200万画素のカメラを搭載し、「Hey/OK Meta、写真/動画を撮って」と発声するか、本体右側上部のボタン操作で写真や動画が撮影できます。また、カメラに映ったものをAIに質問できる機能も搭載。「目の前の花はなんていう名前?」「この英語を翻訳して」など、スマートフォンを取り出すことなく調べられます。

装着時左側(写真右上)にあるのがカメラ、右側(写真左上)は撮影中であることを知らせるLED
右側前方に撮影ボタン。側面はタッチパッドで音量操作やAI呼び出しなどが可能
左側の内側前方に電源スイッチ。CEや技適の記載も内側に

カメラは100度の超広角のため非常に広い範囲の写真が撮影できますが、写真の形は縦長のみで、一般的な写真のような横長の撮影は対応していません。また、Ray-Ban Metaはディスプレイ機能を備えていないこともあり、写真の構図を事前には確認できません。どんな構図で写真が撮れるかは、ある程度の慣れが必要です。

カメラの撮影画質は、最近のスマートフォンに比べるとそこまで高くはありません。明るい屋外であれば十分に綺麗ですが、屋内では仕上がりが暗く、文字などを判別できないこともあります。

気になる文章などをカメラでメモしておこうと思ったのですが、メモで保存するには若干厳しい画質でした。とはいえ旅行時のスナップショットとしては十分な画質です。

一方、マイク音質は非常に高く、動画で撮影した音声は非常にクリアに聞こえます。動画の画質は1080p/30fps、1080p/60fps、3K/30fpsの3種類で、1080p/30fpsは最大5分、その他の解像度は最大3分までの動画を撮影できます。

画質も動画品質としては十分で、ちょっとした記録用では静止画より動画を多用するようになりました。

撮影ボタンは初期設定では短押しが静止画、長押しが動画に割り当てられていますが、静止画は通知音が鳴ってからシャッターが切られるまでにタイムラグがあるため長押ししたほうがシャッターを認識しやすいこと、動画は静止画よりも「このシーンを逃したくない」ニーズが高いため短押しに設定を変更しました。

撮影ボタンはアプリから変更可能

オーディオグラスにカメラが搭載されたことで感じるのは、スマートフォンを取り出せない、または取り出すほどではないが写真を撮りたい、というニーズは、思ったより日常にあふれているということです。

例えば飲み会などで乾杯の挨拶だったり、久しぶりに会う友達と食事をしている最中など、スマートフォンを取り出すには時間がかかるという時に、さっと写真を撮って思い出を残せます。自転車で移動している時に、ハンドルから手を離すことなく音声で写真や動画を撮れるのも便利です。

もちろんスマートフォンを使った方がよりいい画質で撮れますし、構図もしっかり決めることができます。それでも、今目の前にあるシーンを逃すことなく撮影できるというメリットは想像以上に楽しいものでした。

AI機能はこれからに期待。日本で利用できない機能も

カメラと連携する、もう1つの特徴であるAI機能は、撮影と同様「Hey/OK Meta」に続けて「今見ているものを教えて」と発声することで、専用のAI「Meta AI」の画像検索を利用できるほか、本体右側面の長押しでもMeta AIを呼び出すことができます。

音声操作のほか、本体右側面長押しでMeta AIを呼び出せる

実際にいろいろとMeta AIを使った画像検索を試してみましたが、正直まだ使い道が難しいというのが正直な感想です。公式サイトで紹介しているような、「目の前にある花の名前を教えて」的な体験は新しく面白いのですが、実用度はさほど高くはありません。

ただ、カメラを使って被写体を認証するという機能自体は非常に未来に期待を感じさせます。例えば相手の顔を認証してその人の名前を音声で教えてくれる、という機能があれば、人の名前を覚えるのが苦手な筆者にも非常に便利になりそう。「Facebook」を運営しているMetaならば、こうした人のマッチング機能も実現できるのではないでしょうか。

AI機能については撮影と同様、「Hey/OK Meta」に続けて発声することでMeta AIを使った検索や調べ物が可能です。Google アシスタントやAlexa、Siriを使ったことがあれば操作感はほとんど変わりません。

ただし、AIで利用できる機能はまだまだ制限があります。Ray-Ban Metaの公式サイトには多彩な機能が紹介されているものの、その多くは英語のみ。例えばlive AIやリマインダー、カレンダー、徒歩ナビといった機能はまだ日本では使えません。

また、Instagramのストーリーズにシェアする機能は特に言語の制限は書かれていないものの、まだ利用できませんでした。

ライブ翻訳機能はRay-Ban Metaで完結しない

筆者のRay-Ban Metaでは、7月から日本語対応のライブ翻訳機能も利用可能になりました。

相手が外国語の場合は聞き取った言語と翻訳した言語を画面に表示すると同時に翻訳した音声がスピーカーから流れます。

自分の発声した言葉は聞き取られた言語と翻訳された言語が画面に表示され、音声再生は行なわれません。また、この機能はRay-Ban Metaだけでは完結できず、必ずアプリでボタンをタップしないとライブ翻訳が始まりません。

ライブ翻訳機能が日本語に対応

相手に画面を見せる関係上、必ずアプリを開く必要があるので当然ですが、Ray-Ban Metaだけで完結しないのは少し残念です。

同様の機能を持つ「Google 翻訳」アプリのライブ翻訳は、精度やレスポンス、長時間の聞き取りという面で、Meta AIより優秀です。そのためアプリを操作するのであれば、Google翻訳を使った方が便利、というのが正直な感想です。

Ray-Ban Metaのライブ翻訳機能
Google翻訳アプリのライブ翻訳機能。長文の英語に対応でき精度も高い

AI以外にも他のサービスやアプリとの連携機能も備えており、Facebookのメッセージを通知して読み上げてくれる機能や、Googleと連携してGmailやGoogleカレンダーの予定からアクションをまとめる、といった機能も搭載されています。前者のメッセージ通知は音声で都度通知が送られるので、Facebookメッセージでやりとりしているときは便利。会議中などで通知を止めたい場合は側面を長押しで止められるほか、アプリから通知を一定時間オフにすることもできます。

Messengerの新着を音声で読み上げてくれる機能

アクションをまとめてくれる機能は便利そうではあるものの、筆者の場合は大量のメールを受信していることに加えて、複数の業務カレンダーや他の人のカレンダーも登録しているため、あまり適切なアクションが推奨されませんでした。このあたりもMeta AIに頼るよりはGoogleのGemini連携を使った方が便利かもしれません。

カレンダーやメールから次のアクションを提案
宣伝メールなども取り込むためあまり適切なアクションが表示されない

他に日本で使える機能のうち、タイマー機能は「タイマーを5分に設定して」などの発声で設定でき、複数のタイマーが利用可能です。また、「メッセージを送って」でFacebookのMessengerからメッセージを送信できますが、音声操作は誤認識が不安のためこの機能は使っていません。

少し面白いのがFacebookのビデオ通話で、ビデオ通話中に本体ボタンを2回タップすると、カメラの画像を自分のカメラ映像に切り換えることができます。画質はそこまで高くなく、映像も途切れ途切れですが、自分の見ているものをそのまま相手に見せたいときに、便利そうです。

音質は良好 バッテリーは充電方法に課題

スピーカー音質はマイク同様非常によく、筆者の感覚では以前に使っていた「HUAWEI Eyewear 2」よりも音質が上だと感じました。ビデオ会議もメガネをかけた状態で参加できるのはオーディオグラスならではのメリットです。

一方、カメラやAIなどの機能を搭載していることもあってバッテリーの持ちはそこまで長くはありません。公称ではフル充電で最大8時間となっていますが、実際の使用感としても、1日使っていると夕方頃にはバッテリーがなくなってくる感覚です。

また、充電は本体単体では行なえず、必ずケースに装着する必要があります。他の多くのオーディオグラスは本体で充電ができたため、家に帰ったらグラスを外して充電するだけでよかったのですが、Ray-Ban Metaはかばんに入れておいたケースも取り出す必要があり、やや手間と感じました。バッテリーも1日つけっぱなしでは持たないため、ケースの持ち歩きは必須。今後オプションでケースを使わない充電器なども期待したいところです。

充電はケースを利用する
底面にUSB Type-Cポートとペアリング用のボタン
ケース内部に充電端子
Ray-Ban Metaを収容して充電しているところ

高性能なカメラ付きオーディオグラス AI機能は今後に期待

ついに日本に上陸した「Ray-Ban Meta」。オーディオグラスとしての性能は期待以上、カメラ機能は予想よりも面白かったのですが、AI機能については「まだまだこれから」というのが正直な感想です。

公式ページで紹介されている先進的な機能の多くが、日本ではまだ使えず、Ray-Ban Metaが本領を発揮するのはこれからだと感じました。

一方、Googleもオーディオグラスタイプのスマートグラスを2026年秋には発売予定としています。Googleの各種サービスと連携でき、翻訳機能も充実しているGoogleのスマートグラスは、まだ現状では機能が足りないRay-Ban Metaよりも魅力的かもしれません。

とはいえ、スマートグラス愛好家としてはこの市場が活性化すること自体は大歓迎。まだ見ぬGoogleのスマートグラスにも期待を寄せつつ、もっと実力を出せるはずのアップデートに期待しながらRay-Ban Metaを愛用したいと思います。

甲斐祐樹

インプレス記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。個人ブログは「カイ士伝