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SaaSは死なない。人と共存する ラクスがSaaS is Deadに反論
2025年10月22日 09:00
「楽楽明細」などのビジネス向けSaaSを展開するラクスは21日、事業方針説明会を開催するとともに、「『SaaS is Dead』論 ラクスの答え」と題して、AIエージェントと共存するSaaS展開について説明した。
SaaSとは、インターネット経由で利用する、特定業務向けのオールインワン業務ソフト。ラクスでは経費精算の「楽楽精算」や 電子請求書発行システム「楽楽明細」など多くのSaaSを展開している。
今回のテーマである「SaaS is Dead」(SaaSは死んだ)とは2024年末にMicrosoftのサティア・ナデラCEOが、「AIエージェントの台頭により、SaaSのあり方は変わっていく」と語ったことから、「SaaS時代の終わり」として話題になった(ナデラ氏自身はDeadとは言及していない)もの。こうした議論に対し、ビジネスSaaSを展開するラクスが現在の自社の方針を明らかにした。
SaaSとは、インターネット経由で利用する、特定業務向けのオールインワン業務ソフト。ラクスでは「楽楽精算」や「楽楽明細」などのサービスが該当する。
SaaS is Deadの議論では、AIエージェントの急速な普及により、「SaaSはAIエージェントに置き換えられる」という視点から語られる。例えば、ラクスが展開する経費精算業務では、利用者がAIエージェントに「経費精算して」と依頼すると、エージェントが考えて、帳票を集めたり、領収書を読み取り、社内規定に沿った申請書を作成し、承認依頼を出して、立替の精算まで行なう。これが完結すれば、確かにSaaSはAIエージェントに置き換えられる。
しかし、実際には経費精算のプロセスをAIエージェントが実行するには多くの課題がある。例えば、データの正確性やユーザーごとのアクセス制御、監査性、法令対応、安定運用などだ。請求書や領収書など帳票の保存方法や監査への対応などは法で定められており、すべて満たすAIエージェントを構築するのは容易ではない。
ラクス取締役 兼 CAIOの本松 慎⼀郎氏は「SaaSは、業務を安全かつ効率的に進める基盤。業務で使うデータが95%が正しく、5%誤っているというのは許されず、100%の正確性が担保される。また機密性が高い情報と社員全員がアクセスできる情報などのアクセス制御の担保、内部統制の対応などもSaaSが対応している。だから使っていただける」と強調。一方で、AIエージェントは自ら最適な手順を考え実行する「自律的」なシステムであり、理想通りに安定動作させるのは難しいとする。
そのため、AIエージェントにすべて任せるのではなく、「得意なこと」を任せながらSaaSに「組み込んでいく」ことが現状必要という。例えば、画像やレシートから金額や支払先を読み取ったり、過去の申請から勘定科目やプロジェクトコードを入力するといった決められた作業はAIに任せられるが、「この会議の飲食代は本当に業務上必要か」といった妥当性判断にはAIエージェントを活用するのは難しい。このようにAIエージェントと人の「役割」の違いがあるという。
ラクスでは、AIと人のチェックがSaaSの基盤上で共存する形が「現実解」として、人がSaaSを利用し、AIエージェントもSaaS内のデータを活用すると説明。人とAIが共存しながら業務効率化を図っていく。「これが今見えている未来像」とした。
AIエージェントの活用については、SaaSの中にAIエージェントが組み込まれる「埋め込み型」と、AIエージェントが利用者の接点となる「ハブ型」の2つの類型が見込まれる。現在「楽楽明細」などの一部で使われているのは、組み込み型だが、将来的にはハブ型となり、AIエージェントが楽楽明細などのSaaSを呼び出して利用する形も見込まれる。
ただし、「現状組み込み型でやるべきことがまだまだ多い。この1~2年は組み込み型をしっかりやっていきながらユーザー価値を提供していきたい」と説明。ハブ型については、「実用レベルの事例はないが、将来的には実現可能性はある。『経費精算をして』と依頼するだけで、SaaSを各AIエージェントが操作し、利用者に結果だけ返すという形はありえる。その前段階として組み込み型をしっかりやっていく」とした。
ラクスでは、どのような形であれ「SaaS is not Dead」(SaaSは死なない)と説明。SaaSとAIエージェントは「役割を分担しながら共存する」と説明。「SaaSを無くすのは合理性に欠ける」とした、
一方、AIエージェントに任せる業務が増えることで、人間はより付加価値が高い業務に集中できるようになる。「人の業務を奪うのではなく、肩代わりするのがAIエージェント」とした。









