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投資家間売買も可能なデジタル証券「renga」 大型不動産に小口投資
2025年9月29日 20:37
Fintechスタートアップのデジタル証券は、個人投資家向けのデジタル証券「renga」(レンガ)と、第1号案件の募集を9月30日にスタートする。
rengaはデジタル証券のオリジナルブランドとして展開される商品で、公募初号ファンドは「デジタル証券『renga』第1号~レジデンス(北品川)~」。募集受付は9月30日~12月8日。想定利回りは年率5.5%、運用期間が5年、購入金額は50万円~となっている。
デジタル証券(ST:Security Token)は、ブロックチェーン技術を活用して発行・管理される有価証券。rengaは、安定収益資産を厳選する「プロクオリティ」、投資単位を最小で10万円からにした「小口化」、一気通貫のプラットフォームで中間コストを削減する「低コスト」、投資家間売買を可能にした「換金性」といった特徴を備える。
大型不動産やインフラなどのファンド商品は従来、最低出資金額が高額なことから機関投資家の投資が中心で、個人投資家は事実上投資できなかった。rengaはブロックチェーン技術を活用することで、最小で1口10万円に小口化が可能。投資のプロが選びだしたファンド商品に対し、個人投資家が少額から投資できるようにした。
また、「非金銭的リターン」として、rengaを購入した個人投資家には、保有しているトークンに紐づける形で、投資対象資産に関連する優待券なども提供される。
投資家間で売買できるプラットフォームを開発
デジタル証券を投資家同士で直接売買できるマーケットプレイスの仕組みは、日本初で国内唯一のサービスとしてスタートする。金融ライセンスとして、セキュリティトークンの投資家間売買をデジタル完結させる新事業活動計画の認定は国内初。これに関連する複数の特許も取得しており、中長期的に競争優位性を保持するとしている。
従来のような証券会社や信託銀行といった仲介業者を経由することなく、中間マージンを廃して低コストに商品の売買が可能。rengaも、このプラットフォーム上で販売されるデジタル証券のひとつという位置付けで、今後さまざまなデジタル証券が販売されることを見込む。例えば不動産以外にも、エネルギーインフラ、航空機・船舶、社債など、さまざまな可能性があるとしている。
ブロックチェーンを活用し不動産などへの投資で小口販売を可能にするデジタル証券は、三井物産グループの「ALTERNA」(オルタナ)など、すでに他社からもサービスが登場しているが、デジタル証券では、投資家同士で直接売買できるプラットフォームも自ら開発し、一気通貫、低コスト・高利回りで提供するのが最大の特徴とする。
良い品が並ぶ“金融商品のコンビニ”を目指す
デジタル証券 代表取締役CEOの山本浩平氏は、家計資産が現預金に偏重している日本の環境について、安定志向でリスクを嫌う日本人の傾向に触れつつ、「何を買ったらいいか分からない」「受け皿になる商品がない」など、金融商品全般の課題を指摘。rengaの商品などは大きな利益を狙う商品ではないものの、安定度を優先した内容で、安定志向の日本人向けとした。プラットフォームでは投資家間売買が可能で、換金性を高めたことも、現金至上主義で資金が長期間ロックされることを嫌う傾向に対応するものとしている。
同社はこのプラットフォームで「金融商品のコンビニを目指す」と意気込む。その“棚”に並ぶ商品も、コンビニのようにプロや目利きが選んだ一流の商品が並ぶことを目指す。同社だけでなく他社のファンド商品の販売も計画しており、「ネットフリックスでテレビ局のドラマが見られるようなもの」との例えも。「ネットフリックスの好循環を金融でも実現したい」(山本氏)。このプラットフォームは、将来的に1兆円規模を目指すとしている。
現在の課題は、デジタル証券が税制上は総合課税で雑所得として扱われること。日本初の取り組みを含んでいることもあり、税制が追いついてないという。ただし、「(規制当局が)総合課税のままでいいと言っているわけではない」(山本氏)とのことで、今後改正されることも視野に入れた取り組みとなる。
29日に開催された発表会にゲストで登壇したSBI証券 戦略事業推進部 次長の加藤諒氏は、機関投資家しか投資できなかったような商品が小口化され個人投資家が投資できるようになることを「証券投資が民主化していく」と表現。将来的には、例えば映画やワイン、美術品など、これまで金融商品にならなかったものが金融商品化され、「好き」の対象、興味の対象が金融商品になる未来があるとした。また、資金調達側にとっても手段が大きく広がると指摘している。












