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家庭用水循環システム「WOTA Unit」 過疎化地域に本格提供
2025年7月8日 15:12
WOTA(ウォータ)は、上下水道が不要な家庭用水循環システムを開発し、上下水道のインフラ維持が困難になっている全国の自治体を対象に「分散型水循環システム」として提供する。導入を支援する100億円規模の民間ファンドも創設し、家庭への設置負担を軽減するなどする。すでに自治体を通じて2,000世帯が応募済みで、今後3,000世帯を募集する。
WOTAはこれまで、高い効率の水循環システムを開発し、手洗い装置やシャワーボックスなどの形で、災害で断水が発生した地域や避難所に提供するなどしてきた。「WOTA Unit」は、こうしたノウハウを元に家庭用として開発されているもので、住宅の浴室・キッチン・洗濯などの生活排水の最大97%を安全な水に再生し、上下水道に接続せずに水を循環利用できる分散型水循環システムになっている。ユニットは「飲用水」「生活用水」「トイレ用水」の最大3系統で構成でき、地域の上下水道の構成に応じて組み合わせることができる。上下水道のインフラ維持が困難な地域から優先的に提供されており、現在は量産開発と社会実装に向けた検証を進め、実環境下でシステム実証を行なっている。
日本の上下水道サービスは地方自治体が住民から料金を徴収して運営・提供しているが、地方では過疎化や高齢化、人口減少に加え、施設の老朽化とその更新費用、資材や人件費の高騰も重なって、持続可能性に限界がきていると指摘されている。人口が一定以下の自治体ではすでに構造的な赤字が続いており、料金の値上げのほか、従来の集約型上下水道サービスの提供エリアを縮小せざるを得ない自治体も出てきている。
こうした状況を受けて、6月に閣議決定された政府の骨太の方針では、運営規模の広域化といった検討に加えて、「上下水道の分散型システムの早期実用化」が明記された。これは、従来のようなある程度の人口を前提にした集約型システムだけでなく、「分散型水循環システム」を補完的に導入していくという、水インフラの新たな構築モデル。WOTAが開発する「WOTA Unit」はこの「分散型水循環システム」に対応するもので、自治体が各世帯の状況を確認できるシステムインフラも提供する。
機器を各家庭に設置する際の費用が大きいため課題になるが、民間ファイナンスを活用した100億円規模の「Water 2040 Fund」を設立して、自治体を支援していく。対象地域は全国だが、対応できる数には限りがあるため、関心のある自治体の応募を受け付け、計画などを策定してから導入契約を締結する。
WOTAは、上下水道の健全な財政確立を支援する取り組みについて、2040年まで3段階のロードマップを描いている。今回は2030年までを目標にした第2フェーズで、分散型水循環システムなどの標準モデルの確立を目指す。










