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進化する日本の統一QR 「JPQR Global」は成功できるのか
2025年7月7日 08:00
統一QRコード決済規格の「JPQR」が、海外のQRコード決済との相互利用を開始する。新たに「JPQR Global」をスタートさせ、まずはインバウンド向けの利用に対応。7月5日から大阪・関西万博の一部店舗で利用できるようになる。
当初はカンボジアの統一QR「KHQR」と連携し、KHQR利用者が日本のJPQR Global加盟店で、カンボジアの決済アプリを使ってそのまま支払いができるようになる。
日本の統一QR「JPQR」とは
JPQRは、1つのQRコードだけで、複数のQRコード決済での支払いが可能になる統一QR。日本以外でも、特に東南アジアのQRコード決済が一般的に利用される国では統一QRが普及している。
日本の統一QRであるJPQRは、キャッシュレス推進協議会が運用しており、現時点では、au PAYやd払い、楽天ペイ、ゆうちょPayなどが対応。各QRコード決済の利用者は、店頭に掲示されたJPQRをいつもの決済アプリで読み取れば、そのまま支払いが行なえる。
複数のQRコードを店頭に掲示する必要がないほか、申し込みも一括で行なえる。とはいえ、JPQRに対応したすべてのQRコード決済サービスが一度にすべて利用可能になるわけではなく、加盟店側が使いたいサービスを選択する形になる。そのため、JPQRを掲示している店舗であっても、すべての決済サービスが利用できるわけではない。
利用できる決済サービスについては、掲示してあるJPQRの下にアクセプタンスマークを貼り付けて明示する形になる。支払いに利用する場合は、対応するサービスでJPQRを読み取り、そのまま通常の支払いをするだけで、特別な使い方は必要がない。
利用できる決済サービスについては、掲示されたJPQRの下にアクセプタンスマークを貼り付けて明示する形になる。支払いに利用する場合は、対応するサービスでJPQRを読み取り、そのまま通常の支払いをするだけで、特別な操作は不要。
そのJPQR対応の決済サービスとして追加されたのが、海外QRコード決済との相互利用を可能にする「JPQR Global」だ。今回はフェーズ1として、海外のQRコード決済サービスの利用者が、日本に来て、普段使っている決済アプリで支払いができるようになる。
対応サービスの第1弾として、カンボジアの統一QRコード決済「KHQR」からスタートする。カンボジアでKHQRを利用している人であれば、7月5日以降は大阪・関西万博の会場にあるカンボジアパビリオンやオフィシャルショップなどでの決済に利用できるようになる。
カンボジアでは、中央銀行であるカンボジア国立銀行が主導して構築したQRコード決済サービス「Bakong」が広く使われている。銀行口座を接続して支払いをするためのフロントエンドのアプリとなっている。その他、Acleda BankやSathapana Bankといった銀行自体が提供する個別のアプリもKHQRに対応している。
今回のJPQR Globalの対応によって、これらKHQR対応アプリを使って日本でQRコードを読み取り、カンボジア人にとっては慣れた方法で決済が行なえる。
経済産業省はカンボジア以外にもインドネシアと協力覚書に署名しており、近日にも万博会場でのインドネシアの統一QR「QRIS」とJPQRの相互利用が開始される予定。キャッシュレス推進協議会では続けてもう1カ国でも対応を開始したい考えで、これらを含めて現在対話を行なっている全8カ国については順次対応を進めていく計画だ。
万博会場内でのアクワイアラーはUCカードが担当。加盟店管理を行なっており、さらにKHQRとの接続にはネットスターズがスイッチングシステム運用事業者として参加している。
第2フェーズとしては、日本のQRコード決済サービスの利用者が海外の統一QRを読み込んで、日本の決済アプリで支払いを行なう、アウトバウンド向けのサービスに対応する予定だ。これはネットスターズがアウトバウンド向けの資金決済法における資金移動業のライセンスを取得する必要があり、これが取得でき次第、対応に向けた準備が進められるという。キャッシュレス推進協議会では「できれば年内」としているが、まだ達成は見通せていないようだ。
いずれにしても、第2フェーズまで進展すれば、海外のQRコード決済アプリ利用者が日本で支払いをして、日本の決済アプリ利用者が海外で支払いをする、といった相互乗り入れが実現できる。
QRコードを読み込むMPM(店舗提示型)方式のため、実際の利用時は金額をアプリに入力するが、この金額は現地通貨を入力することになる。これはリアルタイムで自国通貨に換算して表示し、自国通貨で支払い金額を確認した上で決済が行なえる。
為替レートは、日本円の場合はキャッシュレス推進協議会がベースのレートを提示し、決済サービス側がそれに手数料を加えるなどして換算する。そのため、現地通貨は同じ金額でも、自国通貨での決済額では、アプリによって為替レートの違いが生じる場合もあるそうだ。
特に東南アジアでは、国や中央銀行がキャッシュレス化のために統一QRを推進していることもあって、加盟店手数料が0円もしくはかなりの低額となっている。そのため、現地の小規模店や個人店を中心に、現金またはQRコード決済しか対応していないという例は多い。日本からの旅行者にとっては、これまで現金のみだった決済のシーンで、普段の決済アプリがそのまま使えるようになる。
日本の場合は、あくまで民間の事業としてコード決済が普及した経緯があり、統一QRの普及が進まなかった。また、最大手のPayPayが参加を見合わせており、JPQR自体の普及が足踏み状態にあった。
そもそも、これまで加盟店の獲得を主に行なうアクワイアラーが存在しなかったこともあり、加盟店開拓の取り組みが進められていなかった。結果として、従来のJPQRでも加盟店は15,000店程度と、ほとんど広がっていない。
キャッシュレス推進協議会では、今回のJPQR Globalの登場によって、特にインバウンドの利用者が多い空港や観光地を中心にニーズが高まると見込んでおり、アクワイアラーを契約して加盟店開拓に注力していく方針だ(なお、既存のJPQR加盟店は、JPQR Global対応には新たな契約が必要になる)。同時に、国内のQRコード決済サービスの対応も拡大していく。
加盟店に向けては、決済手数料を他の決済サービスに比べても低額にすることで採用の拡大を目指す。さらに今後は、インドネシアをはじめとした他国の統一QRへ対応が拡大した場合にも、簡単に各国の統一QRに対応できる点も加盟店へのメリットとして訴求する。
カンボジア国立銀行のSerey総裁も、第2フェーズとなってJPQRとの相互利用が始まることで、両国の経済の活性化に繋がると期待を示していた。











