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トライアルと西友、経営統合完了 西友でスマートストア「TRIAL GO」

トライアルホールディングスは1日、株式会社西友の全株式取得を完了した。西友の新社長には、トライアルカンパニーの取締役会長を務めていた楢木野仁司氏が就任する。2日に開催した記者会見では今後の戦略について説明を行なった。

トライアルHDは西友の株式を取得し、完全子会社化することを3月に発表しており、7月1日に経営統合が完了したこととなる。ただし、「トライアル」と「西友」の屋号がなくなることはない。

トライアルHD 代表取締役社長 永田洋幸氏は統合のビジョンとして「買い物を面白く、暮らしを豊かに」を掲げると説明。また、トライアルが取り組む「流通情報革命」という新しいビジネスモデルを共に進めていくという思いを込めたスローガン「Stand Together」を紹介した。

トライアルHD 代表取締役社長 永田洋幸氏

Stand Togetherは西友とトライアルのそれぞれの頭文字を活かしており、ロゴにはそれぞれのイメージカラーを採用している。

トライアルの強みである効率化された店舗網でモノを流通させる力と、データとIoTを駆使する力を活かし、西友が目指す「西友が身近にあるしあわせ」を推進していく。

経営統合後の戦略については、新社長の楢木野氏が説明。「既存店改革」「出店戦略」「収益性の向上」「リテールメディア展開」の4つを軸に進める。

西友 代表取締役社長 楢木野仁司氏

既存店改革の取り組みの1つとして、トライアル・西友の商品の相互展開を推進する。両社のPB、惣菜を相互に活用し、グループ全体で店舗の魅力向上を図る。

具体的には西友PBの「みなさまのお墨付き」を秋口からトライアル店舗で展開予定。「製造メーカーとも打ち合わせをしながら、増産体制等を整えた上で、商品開発に関しても相互展開を前進させたい」との考えを示した。

出店戦略については、トライアルが福岡を中心に展開している都市型・近隣型の小型スマートストア「TRIAL GO」を、西友の店舗や製造拠点を活用し関東でも本格展開する。

TRIAL GOは、トライアルが郊外の大型店舗として展開する「スーパーセンター」に対して、都市部への展開を狙いとしたスマートストア。小型店ながらコンビニとも異なり、惣菜や生鮮品、日用品などを取りそろえ、またトライアルならではの技術を活かした、顔認証決済や、サイネージによるリテールメディアを活用したマーケティングなどを導入している。

楢木野氏は、「九州での実験展開でも手応えを感じており、年内、早ければ秋口に、TRIAL GOの製造拠点を西友の店舗の中に作り、周辺へサテライト店舗として出店していく」と説明。「トライアルは都心部の小さい店舗を苦手としていたが、西友と一緒になることによって新たな道筋を立てることができる。経営統合における大きな目玉戦略となる」と語った。

収益性の向上に関しても、TRIAL GOの周辺店舗ネットワークを活かした出来立て惣菜の提供やテクノロジーによる省人化、サイネージを用いたリテールメディアの活用といった生産性の高さが寄与すると説明。

加えて、トライアルと西友のPC(プロセスセンター)・CK(セントラルキッチン)拠点を統合することで、グループ全体の生産能力と収益性の向上を図る。あわせて、両社の強みであるPB・惣菜商品を全国各地で展開できる体制の構築を目指す。

トライアルと西友を合わせて、約50の製造拠点・物流施設を構えているという。楢木野氏は「これらを最適化することで、より価値の高い商品を全国津々浦々に供給する体制がさらに前進する。例えばトライアルが関西の摂津に構えるCKはキャパシティオーバーの状況となっているが、西友の岐阜CKや京都CKにはまだ余裕がある。また遠くまで運ぶといった非効率な部分も今回の統合により生産性が上がる。さらには美味しいものを出来立ての状態で届けられるといったことに繋がる」と述べた。

リテールメディア展開については永田氏が説明。リテールメディアは買い物中の来店客をターゲットに展開するマーケティング手法で、トライアルでは店内のサイネージやスマートショッピングカート「スキップカート」の画面を活用している。

「リテールメディアは市場がますます拡大していく」とした上で、「トライアルがメーカーと共同で実施したリテールメディア施策では、前週比150%という結果だった」と効果を紹介。「福岡での実績を、西友が強い関東や中部エリアに広げていく」との展望を示した。

そのほか楢木野氏は、EC事業についても説明。「ECについてはトライアルよりも西友の方が明らかに発展し、消費者の支持を得ている。西友の良いところを教えていただきたいと考えている」と述べた。

また、トライアルで導入している、レジ機能を有するスマートショッピングカートの西友への導入については「トライアルで支持を得ており、構想として検討はしているが、具体的な予定はない」と説明した。

左から、西友 取締役副会長 大久保恒夫氏、トライアルHD 代表取締役社長 兼 西友 取締役会長 永田洋幸氏、西友 代表取締役社長 楢木野仁司氏、西友 執行役員経営企画本部長 武田正樹氏