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レジはショッピングカート。トライアルが関東初「リテールAIストア」

スーパーセンタートライアル長沼店

トライアルカンパニーは、セルフレジ機能付き「スマートショッピングカート」や、欠品や人の動きを解析するAIカメラを、「スーパーセンタートライアル長沼店(以下、トライアル長沼店)」にて導入し、7月3日にリニューアルオープン。オープン初日にメディア向け内覧会を実施した。

スマートショッピングカートは、来店客が商品のバーコードをスキャンしながら買物をすることで、レジレス決済が可能となるショッピングカート。対応する支払い方法はトライアルのプリペイドカードで、カードは店舗内で無料で作れる。

スマートショッピングカート

カートにはタブレット端末とバーコードリーダーが装備されている。バーコードリーダーでプリペイドカードや商品のバーコードを読み取り、また決済時等にタブレット端末を操作する仕組みだ。筆者が体験してきたので、まずは買物の流れを説明しよう。

最初にプリペイドカードのバーコードをスキャン。あとは購入する商品のバーコードをリーダーでスキャンしながらカゴに入れていく。スキャン作業以外は、通常の買物と変わりはない。

タブレット端末の下部にバーコードリーダーが装備されている
商品のバーコードをスキャンしてカゴに投入

購入する物をすべてカートに入れたら、レジコーナーのスマートショッピングカート専用のゾーンへ。カード残高が不足している場合は、チャージ用の端末でチャージした後、その必要がなければそのまま、「お会計へ進む」をタップ。その後有料のレジ袋を購入するかどうかを選び、スタッフが待機するゲートへ向かう。なおレジ袋はゲートの手前に設置されており、購入する場合はそこでピックアップする。

スマートショッピングカート専用のゾーン
チャージした後に「お会計へ進む」
レジ袋が必要な場合は枚数を入力
ゲートへ進む

ゲートの手前にいるスタッフがカートのバーコードを読み取ると、スタッフ用の端末に客がバーコードをスキャンした商品内容が表示される。これとカゴに入った商品を確認することで、スキャン漏れがないかをチェック。問題なければ出場ゲートを通過して買物終了だ。

スタッフがタブレット端末の裏側にあるバーコードをスキャンしてチェック

野菜など、バーコードがない商品を購入する場合は、「バーコードがない商品」をタップして商品を選び、購入商品に加えていく。

またバーコードリーダーは、カートから取り外すこともできる。これは、例えば重量のある物など、リーダーの高さまで持ち上げてスキャンするのが難しい商品購入時の利用を想定している。

タブレット端末には広告が表示されるが、利用しているプリペイドカードでの購買履歴によって、異なる広告内容となる。例えばアルコール類の購買履歴がなければ、お酒の広告は表示されない。

また、スキャンした商品の関連商品のポイントアップクーポンなどが表示される。例えばカルビーのポテトチップスをスキャンすると、カルビーの「じゃがりこ」のクーポン情報が出てくる。ただし、表示された商品を購入すればクーポンが適用されるということはなく、クーポン情報をタップして「利用する」を選択する必要がある。これは、ポイントアップがあるから買ったという人がどれくらいいるかを分析するためとのことだ。

ちなみに筆者の体験で花王の歯ブラシを購入しているが、これにより花王製品である「バブ」や、同じ口内洗浄関連の「モンダミン」のクーポン情報が表示されているのが、前段の写真でわかる。

そのほか、靴下などでよくある「3つ買うと割引」といった商品の場合、その特定の数量を購入した際、カートのレジで自動的に割引される。ただし「あと1つ買えば割引されます」といった通知は表示されない。

また、買物の工程の最後に、スタッフによるスキャン漏れチェックがあったが、実はこれ、トライアル長沼店のスマートショッピングカートにおける未完成な部分。完成形では、カートがスキャン漏れを検知し、スタッフのチェックが不要となる。

どのように検知するかというと、カートに重量センサーを搭載し、スキャンされずにカゴの重量が変わると、タブレット端末にアラートを表示する。現段階ではカートの動きによって重量センサーが誤作動を起こすことがあるため、導入を見送ったという。

重量センサーが実装されるまでは、スキャン忘れが多い商品を分析するなどして、スムーズなチェック方法を試行錯誤しながら改善していくとのことだ。

重量センサーが搭載されると、アラートが表示されるようになる(2月に実施されたリテールAIプラットフォームプロジェクト「リアイル」戦略発表会時の写真)

トライアル長沼店では、スマートショッピングカートを利用せず、通常通り有人レジやセルフレジを利用した買物も可能。実際取材時にも、通常のカートを使うか、スマートショッピングカートを使っているものの通常通り買物をしている人も多くいた。

早速活用している人もいれば
通常通り買物をしている人もいる
通常通りの買物では有人レジやセルフレジを利用する

スマートショッピングカートは、福岡県のアイランドシティ店で先に導入されているが、利用者の来店頻度が10%以上アップしたという。また利用者の半分以上が50代以上で、若い世代よりも多いとのことだ。

AIカメラの設置で欠品のない店舗に

トライアル長沼店は、スマートショッピングカートのほか、688台のAIカメラが設置されていることも特徴。トライアルではこういった様々な技術を導入している店舗を「スマートストア」としており、関東初の出店となる。

AIカメラ

AIカメラは、人物カウントや商品認識等の小売に特化したAIを搭載。欠品を検知するとアラートを出し、すぐに補充できるようにする。欠品が発生するということは人気商品ということであり、人気商品が常に棚に並んでいるという状態にできるわけだ。

頭上に数多くのAIカメラが設置されている

さらにフクシマガリレイ製の一部の冷蔵棚では、AIカメラを棚の外側ではなく、内部に組み込み、カメラが見えないようになっている。これは、来店客にカメラの存在を意識させないようにするための取り組みだ。

右上端の穴のように見えるのがAIカメラのレンズ

これらのAIカメラで、値札のバーコードと商品棚の状況を見ている。

AIカメラによるこういった情報は、補充がスムーズにできるだけではなく、どの商品がどれくらいのペースで売れているかも分析できるので、発注の判断にも役立てることができるという。

またAIカメラは人の流れも見ている。どの商品の前でどれくらいの人が立ち止まったかを見ることにより、トライアル長沼店なら長沼店固有のニーズを分析し、その地域のライフスタイルに合わせた品ぞろえなどを図る。

トライアルは、メーカー、卸、物流企業が参加するリテールAIプラットフォームプロジェクト「リアイル」を立ち上げ、流通の課題解決や新しい購買体験の実現など、「流通情報革命」を目指している。参加企業は、メーカーからサントリー酒類、日本ハム、卸から日本アクセス、物流からムロオ、ファシリティから冷蔵ショーケースのフクシマガリレイ。

トライアル長沼店はリテールAIが集結した、リアイルの旗艦店として機能するとし、参加企業の各社がリテールAIを活用した様々な取り組みを展開していくという。またトライアルでは2021年前半までに、スマートストア業態の店舗を、福岡・佐賀県内で60店舗まで拡大することを目指す。

スーパーセンタートライアル長沼店の所在地は千葉県千葉市稲毛区長沼町71番地。店舗面積は1,455坪。営業時間は24時間で、サービスカウンターは9時30分から22時、カー用品は9時30分から22時、ドラッグは9時から23時。