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AWSが解説する生成AIトレンドと業務活用 組織変革に必要なこと
2025年6月10日 18:04
アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、クラウドコンピューティングサービスのAmazon Web Services(AWS)を通じて提供している生成AIについて、その現在地や今後の動向、業務で活用する際に成功するポイントなどを解説した。
多くの企業にとって、これまでは生成AIを“使うこと”がゴールだったが、現在は“どういう効果があるのか”に注目が集まっているという。生成AIを活用するアプリケーション構築のジャーニー(一連の工程)も定着しつつあり、中でも、反復的なテストが必要な工程や、本番稼働の後も改善していく、という点は、生成AI関連で特有の「興味深いポイント」(アマゾン ウェブ サービス ジャパン サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長/ソリューションアーキテクトの小林正人氏)としている。
成功の秘訣
生成AIの活用に成功している企業の共通点は、(1)ビジネス課題から逆算してゴールを設定、(2)試行錯誤してよい範囲を明確にする、(3)データ戦略を定義する、(4)変革に組織として取り組む、の4つ。
(3)のデータ戦略は重要度を増しているほか、流動的な点もポイント。生成AIに企業固有のデータを加えてビジネス的な価値を出すことが重要になるほか、現時点で定石として必要とされるデータがいつまでも同じとは限らず、変化に対応できる、拡張性の高いデータが求められるという。また増加するデータの処理には、ミスを減らす自動化も重要とした。
(4)の組織として変革に取り組む点は、「ある意味ではこれが最大のトピック」(小林氏)と指摘するように、企業内の戦略、文化、仕組みという三角形を構成する要素それぞれで「何かしらのアクションをとっていることが多い」(同)といい、生成AIの活用で成功する秘訣には、組織内の意識改革も含まれているとした。
生成AI活用のトレンドと「現実的な期待」の広がり
現在の生成AIは、モデルの多様化が一気に進んだ状態。これにより、取り組みたいと考える内容が高度化しているほか、AIを活用する領域自体も拡大している。
モデルの多様化は、性能の高さだけでなく、“早くて安い”といったように、応答速度やコストパフォーマンスに優れるモデルも登場していることで、要件に合わせた選択が行ないやすくなっている。
生成AIでできることへの期待値が高くなる一方で、“万能ツール”といった過剰な期待は後退しており、「地に足のついた、現実的な価値を生み出す期待が高まっている」(小林氏)という。
モデル開発から完成品提供まで全方位に支援
AWSは、生成AIを活用したいという顧客に対し、全方位的に支援する方針で、さまざまなレベルでサービスを提供している。
GPUを使うモデルのトレーニングは、推論や学習に特化した独自設計の半導体を用意することで電力効率やコストパフォーマンスを向上させており、例えばAnthropicはClaudeのモデルトレーニングにAWSを使用している。
顧客がアプリ開発に集中したい場合は、さまざまな既存の生成AIモデルを利用したアプリ開発が行なえる「Amazon Bedrock」が提供されている。生成AIモデルにはそれぞれ得意分野があり、コストも含めて、目的に合わせた柔軟な使い分けが可能。
またAmazon Bedrockではアマゾンが開発した最新の生成AI基盤モデル「Amazon Nova」も提供中で、性能に加えて高いコストパフォーマンスも特徴になっている。
「AIエージェント」もサポート
生成AIの領域では、他サービスとの連携を拡大させる「AIエージェント」が注目されており、AWSでもこれをサポートする。
AIエージェントの動作イメージは、ユーザーからリクエストを受けた生成AI基盤モデルが、外部の複数のリソースを呼び出して、複雑なタスクを実行できるというもの。
これの実現を支援するオープンなプロトコル仕様として「MCP」(Model Context Protocol)がAnthropicによって提唱・策定されており、主要な生成AIモデル開発企業が支持している。
AWSでは、AIエージェントを3つの段階に分けている。1つ目は「生成AIアシスタント」で、定義されたルールで動作し、繰り返しのタスクを自動化するというもの。2つ目は「生成AIエージェント」で、例えば「航空券を予約する」といった、ひとつの“目的”を果たすもの。幅広いタスクを解決でき、ワークフロー全体が自動化される。
3つ目は「エージェンティックAIシステム」で、上記の例に揃えると「旅行を計画する」、そのために必要な手配を済ませるといった、より包括的な内容。完全自律化型のマルチエージェントシステムとして動作し、人間のロジックや理由付けを模倣するという。
AWSはMCPサーバー「AWS Lambda MCP Server」を公開しているほか、データベースに対応するMCPサーバー「AWS Aurora MySQL MCP Server」も提供、データベースのデータを生成AIから呼び出せるようにしている。
AWSではまた、コードエディタで使用できる開発アシスタント「Amazon Q Developer」のコマンドラインインターフェース(CLI)でエージェント型のコーディングが可能で、MCPをサポートし、CLIから外部データソースに接続して利用できるようになっている。
このほかAWSは、2025年に入り、生成AI実用化推進プログラムを提供中。カスタムモデルの導入支援から、コアビジネスに生成AIを適用するといった戦略プランニングまで一貫してサポートできるようにしている。
なお同社は、6月25日~26日に幕張メッセとライブ配信にて、AWSを学ぶイベント「AWS Summit Japan 2025」を開催する。