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通信電波の“揺らぎ”から屋外の人流を推定 NTTと上智大が初実証
2025年5月26日 19:06
NTTと上智大学は26日、移動通信システムの電波の揺らぎから屋外の人流を推定する技術を商用電波で実証した。無線基地局から送信される同期信号から取得した電波伝搬情報の変動をAIで解析、人物を検出した世界初の実証。この成果により、移動通信システムにおいて、センシングを活用した用途の拡大が期待できるという。
「6G」においては、無線通信とセンシングを統合したISAC(Integrated Sensing And Communication)の検討が行なわれている。今回の実証は、その有効性の評価を目的として、商用運用中の無線基地局から送信される同期信号から取得した電波伝搬情報の変動をAIで解析し、人物を検出する実証に世界で初めて成功した。
ISACでは、通信用の電波の伝搬情報をそのまま活用することで、通信機器のみでセンシングを実現。センシングのための新たなセンサーの導入が不要となるほか、電波を活用するため、センシング対象を撮影する必要がなく、対象のプライバシーに配慮したセンシングが可能という。そのため屋外では、人や動物の侵入検知、クルマでは交差点の死角に対する障害物の検知、天気では降雨量や洪水などのモニタリングなどでの活用が見込まれる。また、工場における作業のモニタリングや自宅での侵入検知など、幅広い活用例が想定される。
今回NTTと上智大学は、商用基地局から定期的に送信される同期信号をそのまま活用し、同期信号から電波伝搬情報を取得するシステムを構築。また、取得した電波伝搬情報を用いて上智大学四谷キャンパスの屋外通路における通行人数をセンシングする実証実験を行なった。
解析に用いた電波は、4Gの2GHz帯のバンド。解析した信号から受信強度(RSSI)とチャネル状態情報(CSI)を取得し、センシングに用いた。計測した時間は、午前10時半から午後2時の合計3時間半で、講義中で人の往来が少ない時間帯と、昼休憩などで往来が多い時間帯とを含めた期間とした。
実験結果では、RSSIの移動分散推移は通行者数と類似した傾向が確認された。加えて、AI解析等を用いることで、推定誤差を半減できたとする。
無線基地局からの電波が届く範囲において、通信機器のみでセンシングが可能となるISACの実用性を確認。今回のシステムは、4G、5Gの電波を活用できるため、6Gの実用化や普及を待たずに生活環境におけるISACの実証が可能としている。今後、取得した結果を3GPP標準化に提示し、6GでのISAC実用化を促進していく。また、6Gが利用される2030年頃の実現を目標に、ISACの技術を活用したサービス展開の検討・実証を行なう。