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くら寿司のプレミアム業態「無添蔵」を食べた 関東初出店
2025年5月22日 19:46
くら寿司は、5月29日にオープンする関東初出店のプレミアム回転寿司「無添蔵(むてんくら) 中目黒店」の内覧会を実施した。
無添蔵は、全国展開では難しい、鮮度にこだわったネタなどを提供するプレミアム回転寿司店。2005年より、関西エリアに限定して4店舗を展開している。店舗概要について詳しくは別記事でお伝えしている。
シックな店内 個室風の利用も可能
所在地は東京都目黒区上目黒3丁目7番11号 松村ビル2階で、東急東横線・東京メトロ日比谷線 中目黒駅からすぐの場所。路地に入ったところにあるビルの2階に上がると入口がある。
店内に入ってすぐに、一般的な回転寿司店とは全く異なる雰囲気を感じ取れる。回転寿司店は明るくて賑やかなイメージがあるが、無添蔵は受付から間接照明を取り入れたシックな設え。店内も、回転レーンには寿司を明るく、美味しそうに照らす照明が配置されているが、全体としては落ち着いた雰囲気となっている。BGMは大人の雰囲気づくりのため、ジャズを採用している。
座席はカウンター席とボックス席を用意。ボックス席はすだれをイメージした仕切りを下げることで、個室のような空間にできる。
早朝に福井で水揚げされた魚をその日に提供
無添蔵のメニューは、200種類以上と通常のくら寿司よりも豊富で、「プレミアム」を謳えるだけの希少なネタや高品質なネタ、手間暇かけて仕込んだ手作りメニューなどを取りそろえる。
鮮度に関しては例えば、当日の早朝に福井の漁港で水揚げされた魚を新幹線で輸送し、当日の夕方から店舗で提供する。また「生本マグロ」は、一度も冷凍されていない状態で店舗まで輸送し、そのままを提供する。
アルコールメニューにもこだわっており、日本各地の日本酒やオーガニックワインなど、お寿司やお刺身に合う銘酒を用意した。
そのほか、卓上調味料としてのわさびとは別に、自身ですり下ろす「生本わさび」(280円)をメニューとして用意。普段機会がない食べ方を楽しめるのも、外食の魅力だろう。なお、ガリも有料(150円)で、卓上には置かれていない。
お寿司は回転レーンでも回っているが、回っていないメニューはタブレットで注文する。席には冊子のメニューも用意されているので、定番メニューを一覧で見たい場合はこちらを見ると良いだろう。
内覧会では試食をすることもできた。当日朝に福井で獲れたネタはまだ到着していなかったため残念ながらいただけなかったが、オープン記念で6月8日まで100円で提供される「地中海本まぐろ大とろ」や、数量限定・期間限定の「鹿児島県 活車海老 油霜」など5品を注文した。
食べてみて驚いたのは、鮮度由来のとろけるような美味しさもさることながら、一つ一つのネタのボリューム感。厚みのあるネタから来る食感により、味だけではなく食べ応えの点でも満足感があり、ワンランク上のクオリティを感じた。
営業時間は11時~24時。ランチメニューはない。
地方のロードサイトは飽和状態 都心部で攻める
説明会では、くら寿司 取締役 広報宣伝・IR本部長の岡本浩之氏が、外食産業や回転寿司業界の現状や、「プレミアム回転寿司」を展開する狙いを説明。
外食産業では物価高騰により控えられることが予想されていたが、外食産業全般の売上高は前年比107%となっているほか、消費者の約7割が「値上げがあっても外食の頻度は変わらない」と回答するなど、日常的な外食は継続されているという。
そういった中で回転寿司業界では、長らく店舗拡大を続けてきたが、23年、24年と2年連続で店舗数が減少。岡本氏はその理由として、「回転寿司の成長を支えてきた地方の国道沿いの広い地域敷地が取れる、いわゆるロードサイドエリアが、各社の出店で飽和状態になった」ことを挙げた。結果として中小の回転寿司などで事業縮小、撤退なども出てきている。
消費者の外食ニーズに関しては、価値観の多様化を背景に「コスパ」と「特別感の享受」の二極化が進んでおり、飲食各社も「低価格」&「高付加価値」の戦略をとっているという。
外食産業のトレンドとして「都心部シフト」もある。都心部ではコロナ禍の影響で閉店した店も多く、結果として“空きスペース”ができ、出店の余地が生まれた。さらには都心部への流入増加、インバウンド需要もあり、人気店になる店も増えている。一方で“空きスペース”は狭小であることが多く、回転寿司としてはこれまでの大型店とは異なるフレキシブルな店舗スタイルが必要となる。
このような背景から、くら寿司は「高付加価値な商品を贅沢かつリーズナブルな価格で」「コンパクトながら“くつろぎの空間”でお寿司を楽んでいただく」ことをコンセプトとした無添蔵が、現在の外食産業のトレンドにフィットするという考えから、このタイミングでの関東出店を決めた。
初の関東出店に向けて「新たな柱」にすることを目標に掲げ、店舗デザインは古民家風から“大人の隠れ家”へ刷新し、メニューはこれまでのノウハウを活かしてさらにに「ここだけのネタ(商品)」を実現。「無添蔵の1号店開店から20年以上かけた独自の取り組みを最高に生かせる店舗とした」という。
とはいえ、1号店開店から20年という年月は、新たな1歩を踏み出すまでの期間としては長すぎる印象もある。これには、無添蔵を始めた時のそもそもの考え方に理由がある。
くら寿司は漁業者との付き合いの中で、全国の店では提供できないぐらいの希少な魚や高級な魚が入ってくることもあった。こういった魚を販売する店があってもいいのではないかという考えで、無添蔵の1号店をオープン。そこからエリアを限定して4店舗を展開していた。
その後、全国の漁業者との直接的な取引も拡大していき、さらにいろいろな魚が入るようになったことから、関西以外への展開を検討するようになった。
関東1号店の出店地を中目黒とした理由は「物件を探している中で、無添蔵出店にふさわしい場所、規模の物件があったから」といたってシンプル。無添蔵出店地の隣には通常の「くら寿司」があり、こちらも好調であることから「ポテンシャルがある立地」と期待を寄せている。
無添蔵の客単価は、駅前立地でお酒を飲みやすい環境ということもあり、通常のくら寿司の約2倍だという。今後、既存の「グルメ系回転寿司」にラグジュアリーを兼ね備えた“回転寿司の新ジャンル”となる「プレミアム回転寿司」として打ち出し、都心部での出店拡大を計画。時期は明確にしていないが、国内の主要都心部で100店舗を目指す。