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LINEヤフーは「AIカンパニー」になる 全サービスAIエージェント化 PayPayは上場へ

LINEヤフーは7日、「AIカンパニー」を目指すと発表した。2025年度からコンシューマ向けのAIエージェントを本格展開し、26年度以降の収益化を目指す。

2024年度通期連結決算とあわせて、AIエージェント強化の方針を説明。LINEやYahoo! ショッピングなど「全てのサービス」においてAIエージェントに取り組む。また、PayPayの上場に向けた準備を開始し、米国も視野に入れて検討を進める。上場の時期などは未定だが、本格検討の段階に入った。

公式アカウントとPayPay、AIを強化

今後の重点方針は、「LINE公式アカウント・LINEミニアプリの強化」、「PayPayの強化」、「AI」の3つ。

LINE公式アカウントとLINEミニアプリについては、公式アカウントは15兆円規模の販促市場、ミニアプリは7.7兆円規模の飲食・理美容DX潜在市場をターゲットに強化していく。

LINE公式アカウントは、年10~20%の売上成長を見込み、LINEミニアプリは2026年度以降にマネタイズを強化し、28年度に売上1,000億円を目指す。そのためにLINE公式アカウントを「ビジネスID」として整備し、Yahoo!を含めた同社の店舗・企業・ビジネス・サービスのプラットフォームとして強化。店舗情報やクーポン、商品情報、タイムライン投稿などを同IDを基盤としながら様々なサービスで活用できるようにしていく。

ミニアプリは、飲食・理美容を中心に、予約、会員証、モバイルオーダーで拡大しており、サービス基盤をさらに強化。アプリ内課金や広告掲載などの機能を整備し、収益化を図っていく。

PayPayについては、日本のキャッシュレス化を牽引しており、決済回数も金額も大きく拡大。また、事業拡大とともに利益も大きく成長しており、PayPay連結EBITDAは455億円(前年度は98億円)と大きく成長した。

また、PayPayカードやPayPay銀行は、PayPayの基盤を活用することで、事業拡大しており、その結果PayPay自体への貢献が増えるという「好循環が生まれている」(LINEヤフー出澤CEO)という。そのため、PayPayを決済アプリではなく、「PayPayを中心としたデジタル金融プラットフォーム」と定義し、金融事業を強化していく。その一環として上場を目指す方針を明らかにした。なお、時期や市場については今後の検討としている。

すべてのサービスが「AIエージェント」に

LINEヤフーとして力を入れていくのが、「AIエージェント」だ。すでにLINEヤフー内ではAIの業務効率化やサービスへの生成AI導入などが進められているが、その"次”の段階として、消費者向け(toC)サービスのAIエージェント化を進めていく。

Yahoo!ショッピングやニュース、マップ、LINE、PayPayなど、メディア、コマース、ローカルなど100以上のサービスと、120万以上のLINE公式アカウント店舗、1,000万以上のPayPay店舗、9,800万以上のLINEユーザー、1億以上のYahoo!ユーザー、6,800万のPayPayユーザーなどの圧倒的な「ユーザー」「店舗」「コンテンツ」基盤を活用。日常を支えるAIエージェントの実現を目指すという。

LINEやYahoo!のサービスのデータを用いたパーソナライズから、生活をカバーする機能、予約・購入・決済などのユーザー行動を代行する機能をエージェント化により実現する。

対象となるのは、「すべてのサービス」(慎ジュンホCPO/Chief Product Officer)としており、ユーザー側のアプリの裏では、メディア、コマース、トラベルなどのドメインエージェント、検索や予約、ガイド、スケジュールなどの数千万の機能エージェントなどを整備。LINEヤフー各サービスのデータや外部サービスのデータなどと連携し、ユーザーが望む行動を支援する。

慎ジュンホCPOは、AIにより今後3年間で生産性が2倍になると説明。既存事業業務の半分がAIにより効率化されることから、そのリソースをAIエージェントに割り当てていくという。

慎氏が示したコマースエージェントでは、商品情報などをWebから取得しながら、出品情報や在庫などをLINEヤフーのサービスから検索、ユーザーのニーズにあわせた情報をまとめるレポートエージェントなどから構成される。

例えば、ユーザーがロボット掃除機を探している場合、過去のユーザーの購入履歴から子どものためのフロアマットの利用について質問。使っている場合は、「段差を乗り越えられるロボット掃除機がおすすめ」と案内する。あわせて静音性や猫の毛玉対応など、利用シーンを絞ったレコメンドを行ないながら、価格を紹介。価格についてユーザーが承諾するとおすすめ商品を絞り込み、ユーザーに提示する。

提示された商品については、詳細レポートをエージェントが生成して説明。リユース品もあることを紹介するが、ユーザーが新品を希望すると、もうすぐキャンペーンが始まると案内。超PayPay祭(キャンペーン)が始まったタイミングで割引額を含めて案内し、付与されるポイントや「直近3カ月で最もお得」などのアドバイスを行なう。商品選びから購入までユーザーに寄り添った購入体験を実現できるという。

こうした機能を実現し、慎ジュンホCPOは「LINEヤフーはインターネットカンパニーからAIカンパニーになる」と宣言。あらゆるサービスをAIエージェント対応としていく。

慎ジュンホCPO

なお、AIエージェント化により、例えばショッピングとオークションの垣根が曖昧になるなど、同社サービスへの影響も見込まれる。慎CPOは、「確かに、オークションかショッピングか、あるいは他社のECを含めて、サービスは変わっていくだろう。ユーザーの利用シナリオにあわせて融合していくが、まずはオークション、ショッピングなど、それぞれを進化させながら、融合的な体験を提供していく」と言及した。

LINEリニューアルは予定通り 売上は前年比5.7%増の1.9兆円

なお、LINEアプリの25年度のリニューアルについては、AIエージェントの導入により調整しているが、「予定通りに進める」と説明。PayPayとLINEのアカウント連携については延期としている。

2024年度の売上収益は前年比5.7%増の1.91兆円 、全社調整後EBITDAは同13.5%増の4,708億円。

各プロダクトの売上成長が牽引し、メディア広告は安定成⾧、ショッピング広告が大きく回復。コマースにおいては、Yahoo!ショッピングとトラベルが成長を牽引した。あわせて最大1,500億円の自己株取得を実施する。