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アメリカ人はパンに揚げ物を挟む セブンの訪日客向け戦略
2025年5月1日 13:04
セブン‐イレブン・ジャパンは、外国人観光客の増加によって拡大する「インバウンド消費」に関する商品・販売戦略について政策説明会を開催した。
日本政府観光局によると、2024年の訪日外国人旅行者数は3,687万人と過去最高を記録。今後も伸長する見込みとしている。国籍別では韓国が84.7万人、中国が72.3万人、台湾が50.7万人、香港が19.6万人、米国が19.2万人、タイが11.7万人が訪れているという(2025年2月)。
また、都道府県別のインバウンド売上は京都が最も高く、ついで大阪、東京、北海道、沖縄、山梨と続く。
「インバウンド需要は2010年代は家電製品を中心に、いわゆる“爆買い”が活況で、お土産需要として化粧品も人気でした。訪日エリアも大都市圏が中心という特徴がありました。しかし、コロナ禍を経て2020年代は、歴史的な円安効果などがあり、訪日エリアは幅が広がり大都市圏以外に拡大、買われる商品も日常使いのものや、ホテルで夜に食べる食料などが人気といった傾向が見られています」(セブン‐イレブン・ジャパン 商品本部 地区MD統括部 統括マネジャー 鷲野博昭氏)
たまごサンド・フルーツ・わさび・抹茶
コンビニで買える食料品のインバウンド需要の中で特に人気が高いのが、「たまごサンド」「フルーツ」「わさび」「抹茶」の4カテゴリだという。
「たまごサンドは東京オリンピック以降SNSで注目されるようになり、インバウンドの代表とも言える商品です。海外とは異なる食パンの柔らかさ、具材の品質などが訪日客から高く評価されています」と鷲野氏は話す。
フルーツに関しては、海外では毎日果物を食べる習慣が根付いており、特にベトナム、インド、中国は毎日果物を食べる人の割合が高く、日本とは大きな差があるという。「フルーツはとにかく日本と習慣が違い、我々の想定以上に海外の人たちは毎日フルーツを食べています」(鷲野氏)
フルーツの定番商品は「皮むきりんご」や「パイナップル」だが、ドラゴンフルーツなどもテスト販売している。また、人気の高いフルーツである「いちご」を1月から一部エリアでテスト販売。通常サイズの価格は645円だが、2月からは高額商品として「顔が見える大粒いちご(とちあいか)」を価格1,728円でテスト販売。ある店舗では1カ月に385個、61万円以上の売上になったという。
また、いちご関連商品は今後、年間を通して販売を推奨できるよう原材料産地リレーを強化していく。
たとえばいちごのフルーツサンドは、2024年度は1~4月と7月を推奨期間として販売していたが、2025年度は原材料産地を拡大し、1~10月の10カ月間を推奨販売期間に設定。可能な限り年間推奨することで、インバウンド需要・販売チャンスに応えていく。
わさびはおみやげ需要が高く、名産地である静岡県の店舗で、チューブわさびやわさび塩の販売実績が高いという。
堅調な抹茶人気も含め、抹茶とわさびは2025年度から商品パッケージの表記を変更。「Matcha」「WASABI」など、原材料表記だけでなく商品名もローマ字表記にしてアピールを強化した。
このほか菓子・加工食品・爪切りなどもインバウンド需要が拡大。SNSで話題になったことから「セブンプレミアム チョコっとグミ シャインマスカット味」は年間売上10億円以上、「セブンプレミアム 蒙古タンメン中本 辛旨味噌」はセブンプレミアムの2024年度累計販売金額で1位となった。訪日客の間で話題になることで情報が拡散され、販売が伸長するといった傾向もあるという。
アメリカは揚げ物、中国は水、韓国はおでん
販売データや社会的な流行など、情報を分析して新たな現場施策を打ち出すオペレーション本部による分析結果も公表。
訪日客の国籍別購入商品を見ると、アメリカからの訪日客はたまごサンドのほかチキンカツサンド、パン、チキンなどの揚げ物が買われていることが判明。中国からの訪日客は牛乳など乳製品を買う傾向が強く、韓国からの訪日客にはおでんが人気というデータが揃っている。
「アメリカからの訪日客はパンに揚げ物を挟んで食べる人が多いほか、おにぎりを買う人も多いです。これはおにぎりを開ける体験というのが新鮮のようで、体験も込みで購入されています。中国は牛乳以外に、白湯や水をよく飲むという習慣があることからそれらの商品も購入されています。インバウンド消費において2Lの水を買うというのは、中国からの訪日客だけに見られる特徴です」(セブン‐イレブン・ジャパン オペレーション本部 オペレーションサポート部 オペレーション情報 副統括マネジャー 吉村浩司氏)
また、販売データからヒット商品の種を見つけ出し、店頭で売り出し方を工夫することでさらなる売上につながった例もあるという。
SNSで話題になった「チョコっとグミ シャインマスカット味」は、中国・韓国・台湾を中心に人気が高く、シャインマスカット自体の認知度とともに高品質であることが浸透していることが人気の理由とされている。
お土産としてまとめての購入が目立つことから、売り場面積を拡大するほか、50個のまとめ売りなども行なっている。50個セットだと6,900円と免税対象になるため、さらなる売上拡大につながった。同様に、わさびもお土産需要としてまとめ売り施策を打ち出している。
SNSでは訪日客向けのアカウントも開設。Instagramで「@seven_eleven_japan_global」として情報を発信しており、訪日客に人気の商品や、おにぎりの開け方、セブンカフェの買い方などHow To動画などにも取り組んでいる。
「インバウンドニーズは一部の店舗に限った話ではなく、大小あれど個店ごとに需要はあり学びも大きいです。インバウンドへの取り組みが結果として国内需要の拡大にもつながるため、今後も強化を続けていきます」(吉村氏)