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ソフトバンク子会社のBOLDLY、事故で停止していた自動運転バスを再開

BOLDLYは、11月25日に発生した接触事故で運行を停止していた、福岡市における自動運転車両の実証実験について、12月8日から運行を再開した。再発防止策を警察に報告し、その有効性が認められたことから運行が許可された。実証実験は、FUKUOKA Smart EASTモビリティ推進コンソーシアムから受託したもので、当初は12月3日までの予定であったが、12月14日まで延長する。

本実証実験は、自動運転レベル2(運転主体は人、システムは運転支援)で実施していた。今回の事故では、特定の場所におけるバス停発車直後のルートに課題があったことが分かったという。一方、「MiCa」の自動運転システムは想定通りに機能していたことが確認された。

事故は、11月25日の14時59分にJR箱崎駅東口のロータリー内で発生した。自動運転車両「MiCa(ミカ)」が、バス停を発車し、ロータリーを周回するためのルートに沿って右斜め前方に自動で発進した際、後方本線を走行してきたタクシーとの走路が交差したため接触事故が発生した。タクシー側は、接触直前に停止したが、自動運転車両とタクシー側双方に損傷が発生した。けが人はいなかった。

当時は、オペレーターが後方を十分に確認しにくい状況で、前方車両やMiCaの動きの確認、乗客にも気を配りつつ、同時に合流時の後方確認を行なうなど、瞬時に複数の事柄への確認・判断・操作が求められる状況だった。その結果、オペレーターにとって後方を十分に確認しづらい状況が発生していた。

後方から接近するタクシーにとっても、MiCaの動きを予測することが難しい状況だった。MiCaは、オペレーターのバス停からの発車指示を受けて自動でウインカーの点滅を開始したものの、発車直後に前方車両を障害物として検知して自動で停車。前方車両の動き出しに伴う再発進までの約30秒間、ウインカーの点滅を継続していた。このため、後方から来る車両に対して、ウインカーを点滅したまま停車している車両という印象を与え、発進や右折を行なうタイミングを予測しづらい難しい状況だった。

こうしたことから再発防止策として、バス停発車直後のルート修正を行なった。バス停の位置を約7m後方に移動し、MiCaがバス停から発車後に一定距離を直進した上で一般車両と合流するルートに変更した。これにより、バス停から発車して一般車両と合流するまでの間に、オペレーターが後方確認などを十分に行なうための、時間的な余裕を持たせることができる。また、MiCaがウインカーを出しながら直進する時間が約5秒間発生するため、後方から来る一般車両に対してMiCaの動きを分かりやすく伝えて、無理な追い越しや至近距離での停車を防ぐことにもつながる。

今後、BOLDLYの自主的な取り組みとして、乗客に安心感を持ってもらうため、本実証実験中はオペレーターに加えてスタッフが1人同乗する。さらに、一般試乗に先立って、変更後の自動運転ルートでは、無乗客での走行を繰り返し、オペレーターの訓練を行なう。

システムは正常に動作したが改善が必要

また、事故発生後には、運行再開は、関係省庁と警察などと協力し、原因の究明や再発防止策を検討。車両ログの解析や車両点検、実証ルート全体の再リスクアセスメントなどによって原因を分析した。

今回の事故では、MiCaの自動運転システム自体は想定通りに機能しており、異常はなかったという。今回の事故でも後方本線から来たタクシーを検知していたが、発進した直後にタクシーが停止した場所はMiCaの真横となり、「判断・制御」の範囲外で、オペレーターが介入しなければ接触を避けられない場所だったという。

しかし、MiCaは将来、公道で自動運転レベル4での運行も予定されている。BOLDLYでは今後、MiCaの開発元であるAuve Techなどと連携し、自動運転システムのソフトウエアの性能向上を図り、後方から来る障害物を検知して「判断・制御」する機能を実装する予定。

同社は事故について、「今回の事故を重く受けて止めており、相手方および関係者の皆さまにご迷惑とご心配をお掛けしたことを、改めて深くおわび申し上げます。なお、相手方とは円満に和解しており、相手方からは、交通業界が抱える人手不足の解決策として期待される自動運転に関する取り組みへの激励と、安全な交通環境の実現に向けて協力したいというコメントを頂いています。」と発表している。