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新型レベル4自動運転車「ミカ」 BOLDLYが日本導入

ソフトバンクの子会社であるBOLDLY(ボードリー)は、自動運転シャトルの設計・製造を行なうエストニア共和国のAuve Tech(オーブテック)が2022年10月に発表した、自動運転レベル4対応の新型自動運転EV「MiCa(ミカ)」を世界で初めて購入し、日本に導入する。今後、実証走行を進めながら、関係省庁から必要な許認可を取得し、2023年秋以降に公道を走行可能にする。

MiCaは最大8人乗りの自動運転EV車で、ハンドルやアクセルを装備していない。日本仕様モデルとして開発されたもので、日本の公道走行に合わせてドアが左側に設置されている。また、BOLDLYが開発する自動運転車両の運行管理プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」が製造段階から組み込まれているのも特徴。これまでBOLDLYが運行していた仏NAVYA製の「ARMA」では、車両にDispatcherを後付けで装備していたため、カメラ等の器材は後付けされ一体感がなかったが、MiCaではこれらの器材が初めから組み込まれている「Dispatcherネイティブ車両」としている。

新型自動運転EV「MiCa」
ARMAには車両に前後の概念がなかったが、MiCaは通常のクルマと同じく前後がある
左側通行の日本仕様としてドアは左側に設置
仏NAVYA製の「ARMA」

Dispatcherは、複数の自動運転車両を同時に監視・運行が可能なプラットフォームで、遠隔監視によるレベル4自動運転を実現する。自動運転車両の車内外の状況を常に監視し、トラブル発生時など必要があれば車両に直接指示を出すこともできる。

カメラやディスプレイはビルトインされてる

BOLDLY代表取締役社長兼CEOの佐治友基氏は、MiCaについて「PCも5年立つと性能がかなり変わる。自動運転車両も同じで、5年前に導入したARMAよりもかなり進化している」とし、さまざまな進化がみられるという。

最高速度はどちらも時速20kmとなっているが、MiCaは制御が大幅にスムーズになり、停車時からの加速が高速化しつつ乗り心地も向上。一般道を走行しても違和感がないメリハリのある走行が可能になっている。

ARMAに比べ停車からの加速力が向上しつつ乗り心地も向上
シート
車内から外をみたところ

車両は7台のLiDARセンサーと8台のカメラで周辺環境を把握。ARMAでは30m程度までの範囲を検知していたが、MiCaでは最大100mまで周辺環境を把握できる。路上にある障害物や工事用のコーンなどのほか、木の枝など道路に張り出している障害物も自動的に認識して回避する。

車外にはLiDARやカメラを装備
車道に放置された自転車を自動で回避
車道に張り出している木の枝を回避しているところ

車両はARMAに比べてコンパクトで、全長4.2m、全幅1.8m、全高2.5m。小回りが利くため狭い道路での走行にも適している。急速充電モデルでは1時間の充電で20時間走行が可能。

車両は今後、東京大学柏キャンパス 生産技術研究所で日本仕様のための検証と改良を実施。今年秋頃に公道走行を実現する。

生産技術研究所は、2017年からBOLDLY(当時はSBドライブ)と共同研究を実施。生産技術研究所の研究実験棟では、一般車両が入れない敷地で公道環境が再現されており、ARMAの検証も同地で行なってきた実績がある。

生産技術研究所の敷地内では公道走行を想定した実験が可能
完全無人走行の様子

また、茨城県の境町は、「MiCa」の購入に関する覚書をBOLDLYと締結し、2023年中に導入予定。境町ではARMAを2年半に渡り定期運行しており、高齢者を初めとした町民に受け入れられている。MiCaの開発にも協力し、BOLDLYと東大生産技術研究所が検証した結果を、境町の公道で検証を行なう協定を締結。MiCaの実用化に町をあげて協力していく。

BOLDLYは今後、「MiCa」の日本における販売代理店として、自治体や企業への納入を進め、自動運転技術の活用による社会課題解決を推進。年度内に約10台のMiCaを日本に導入することを目指す。