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「LINEヤフー」誕生 ヤフー・LINE・ZHD合併で10月設立

ヤフーとLINE、Zホールディングス(ZHD)の新合弁会社の名称が、「LINEヤフー」に決定した。10月1日付で設立する。

Zホールディングス(ZHD)は、ヤフーからの会社分割により、2019年10月に持株会社体制へ移行。'21年3月のLINE経営統合を経て、ZHDを親会社とし、中核完全子会社のLINE・ヤフーという体制を取ってきた。

LINEとヤフーなどグループ間連携を進めてきたが、ニュースや決済など重複事業も残されてきた。今回の合併により、「プロダクトファースト」の意思決定を進め、サービスの連携強化と統廃合を進める。

LINE、ヤフー、ZHDのほか、Z Entertainment、Zデータの合計5社が合併。存続会社はZHDで、新商号が「LINE ヤフー株式会社」となる。英文名はLY Corporation。社名変更については「認知度の高いブランド資産を活かした」(Zホールディングス 出澤社長)という。

グループ再編の進捗

オフィスは現在のヤフーの拠点である紀尾井町に集約。300億円規模の固定費削減と集中と選択を図る。すでに、GYAO!やLINE LIVEを終了し、LINE Bankの日本立ち上げも断念、LINE CLOVAの事業移管などを進めているが、2023年度もさらなる再編を予定している。

LINEとヤフーID連携。LINEのマルチデバイス対応は「考えていない」

10月の合併と同時期にID連携を開始。LINEとヤフーの連携をさらに高め、収益性の高いメディア・検索の再強化と、プレミアム会員施策を強化する。特に広告事業における連携強化と収益改善を期待しており、2024年度にはPayPayとのID連携も計画している。

11月からはプレミアム会員特典をアップグレードした「LYPプレミアム会員」をスタート。グループ横断の会員基盤となり、スタンプやアルバムなどのLINEサービスの優待や、Yahoo! JAPANの特典、PayPayポイントなどの優遇を行なう。

さらに将来的にはLINEのトーク・画像・動画のリアルタイムバックアップや、1台で複数のプロフィールに対応するなどの強化を予定。なお、複数のスマホで1つのLINEのアカウント利用するマルチデバイスについては「同じスマホで複数のアカウント利用は今のところ考えていない。ユーザーのニーズの高いものから対応していく」(ZHD 慎ジュンホ 代表取締役 GCPO)とした。

'23年度は一旦しゃがむ。再成長の基盤作りに

Zホールディングスの2022年度通期決算は、売上収益は1.67兆円で、調整後EBITDAも3期連続で過去最高を更新した。営業利益も4期連続増益で、過去最高の3,145億円となった。

メディア事業では底堅く、LINEのアカウント広告も高成長している。一方ディスプレイ広告は市況の影響や、コマース事業のコスト見直しの影響で減収となっている。全体では売上収益6,420億円で若干の増収。

グループ内で大きく方針転換しているのがコマース事業で、「2020年代前半 国内物販EC取扱高No.1」という目標を撤回。2022年度後半から収益性を重視した展開としている。その結果成長率は低下しているが、増収となった。

Zホールディングス 出澤社長

PayPayなどの戦略事業は大きく収益改善。PayPay連結化により増収しているが、今後重複事業の統廃合などで早期黒字化を図る。PayPayの連結取扱高は10兆円を突破しており、2022年度売上高は1,676億円、連結EBITDAは119億円のマイナス。黒字化に向けて順調に進んでいるという。

一方、外部環境としては景気後退や広告市況の低迷により短期的な売上成長が難しく、また、メディア・検索・コマースの「コア事業」競争力低下やグループシナジー創出の遅延といった内部の課題もある。それらに対する抜本的な対策が今回の合併となる。2023年度は2桁成長を維持しながら経営基盤の強化に努め、2024年度以降のコア事業再成長を「最重要課題」と強調する。

そのため、新会社では300億円規模の固定費削減と事業の選択と集中を推進。'23年は合併を通じて、抜本的な事業効率化を進めながら、ID連携やLYPプレミアム会員の基盤を強化。2024年以降の成長に向けて取り組んでいく。「構造改革をやりきってから、次のジャンプに備える。'23年度は一旦しゃがむ時期」(出澤社長)とした。

採用も抑制するが、希望退職は行なわず、新卒採用も継続。主に中途採用の停止により人員の調整を図る。

具体的な事業の選択と集中には言及していないが、LINE PayとPayPayについては「現状役割分担できている。一方で、LINEからPayPay送金などをステップを踏みながら増やしていきたい」(出澤社長)とする。

出澤社長は、LINEとヤフーの経営統合時の目標に対して「うまくいかなかった」ことについて、「法人格が違うことでハードルがあった。またデータ活用についても統合前の想定よりも難易度が高かった。複雑な意思決定など、いろいろな課題があった。我々も大きな課題と考え、推進力を持つ形にするために、今回の合併や新たなマネジメント体制となっている」と言及。「2年の反省を生かして、あらゆる社内の壁を壊してシナジーを出していく」とした。