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Photoshop、「選択」強化するメジャーアップデート

Adobeは18日、大規模イベント「Adobe MAX」にあわせて、今後のAdobe製品のアップデートなどを紹介した。AIを使ったPhotoshopの「選択」強化や、3DやVR制作対応の強化を図っている

「被写体の選択」にAIでメス Photoshopメジャーアップデート

Photoshopは、メジャーアップデートとなり、デスクトップ版、iPad版、Web版が強化される。

特に大きいのがデスクトップ版における「選択範囲」の強化だ。

2020年にリリースした「オブジェクト選択」ツールでは、画像内の選択したいオブジェクトの上にカーソルを重ねると、自動的にオブジェクトを選択できるようになっているが、この自動選択の精度と品質が強化され、Photoshopが認識できるオブジェクトの種類が増えている。

今回のアップデートでは、空や建物、水、植物、床材、地面(山、歩道、道路など)などの複雑なオブジェクトや領域をオブジェクト選択ツールが認識できるようになった。これにより、細かいディテールやエッジを保ったまま、より短時間で正確な「選択」が行なえるようになる。

また、「領域の削除と塗りつぶし」がワンクリックでできるようになる。

AIのAdobe Senseiを活用し、使い慣れたシンプルなショートカットを使うだけで不要なオブジェクトをすばやく削除できるもの。操作は、削除対象のオブジェクトをクリック選択し、Shift+Deleteキーを押すだけ。削除された領域にはコンテンツに応じた塗りつぶしが自動的に適用されるため、すべてが一瞬で完了する。

写真に写り込んだ対象外の人や物体を選択するだけで「削除」するだけでなく、その背景までも自然に馴染むように補間される。Google Pixelシリーズの「消しゴムマジック」など、スマートフォンでも類似機能はあるが、Photoshopでは削除オブジェクトの細かな調整なども行なえる。

Adobeによれば、Photoshopユーザーの多くが「被写体の選択に時間を使っている」とのこと。こうした時間がかかる作業に「AIでメスを入れていく」という。

そのほか、Adobe Illustratorから編集可能テキストをコピー&ペースト可能となるなど、Illustrator連携を強化。また、ニューラルフィルターは、新たに「写真を復元」を追加。古い写真や破損した写真をよみがえらせる際に、写真の傷やその他の細かい欠陥を、Adobe Senseiの機械学習 を使って自動的に検知し、除去できる。

Illustrator連携を強化
写真を復元

また、Adobe Photoshopから帰属情報を添付した画像を書き出せる「コンテンツクレデンシャル機能」を搭載する。Adobe Substanceの3Dマテリアルも新たにサポートする。

Photoshop iPad版にも、ワンタップ操作の「背景を除去」を追加。また、ワンタップ操作の「コンテンツに応じた塗りつぶし」にも対応する。さらに、人物写真の被写体選択も強化している。

Photoshop web版(ベータ版)は、オブジェクト選択ツール、背景の除去、Adobe Camera Rawの画像調整、コンテンツに応じた塗りつぶしなどの機能が追加された。

コラボレーション向けの機能も強化。PhotoshopとIllustratorでは、ファイルを共有する際に 「編集に招待」 と 「レビュー用に共有」の2つのオプションを追加する。

「編集に招待」では、共同制作者とファイルをライブで共同編集できるようになる。

「レビュー用に共有」は、クライアントや関係者にデザインワークの特定のバージョンを共有してレビューを依頼するためのもの(ベータ版)。

ファイル共有のオプションを複数用意することで、デザイナーのワークフローを強化し、フィードバックを得るためのプロセスにあわせて使えるようになる。レビュー担当者のコメントはアプリに送られるため、別のツールを用意する必要もなく、共有済みのファイルを更新した場合、デザイナーは同じレビューリンクに更新を反映できる。

LightroomやPremiere Proも更新

Adobe Lightroomでは、マスク機能の「人物選択」、「オブジェクト選択」、「背景選択」オプションで、画像の特定の部分をより簡単に編集することができるようになる。

Adobe Lightroom

人物を選択では、画像内のすべての人や、一人の人物だけなどに範囲を絞れるほか、人物の髪の毛、目、唇、眉毛を自動的に選択も可能。画像内に邪魔なオブジェクトがある場合は、「コンテンツに応じた削除」で素早く消せ、空白を埋めるために背景が自動的に生成される。

また、Premiere Proはアップデートにより、レガシータイトルをで完全に廃止。Aftrer Effectsでは、1つのマットを任意の複数レイヤーに適用できる新機能などが追加された。

映像コラボレーションツールの「Frame.io」では、クラウドベースのワークフローに置き換える「Camera to Cloud」に、富士フイルムとREDのカメラが対応。富士フイルムは'22年末、REDの統合は'23年春を見込んでおり、ハリウッドの主要スタジオのRAWファイルをクラウドと接続する。

Acrobatがメタバース進出。3D/VR強化

また、3Dデザインの「Adobe Substance 3D」においては、作成した3DマテリアルをそのままPhotoshopとIllustratorで読み込めるようになり、Creative Cloudのワークフロー上で扱いやすくなる。

Adobe Substance 3のファイルをPhotoshopで読み込み

VR・デスクトップ併用型のモデリングツール「Adobe Substance 3D Modeler」は、VR環境でバーチャルな粘土を扱うように3Dデザインを造形できる。また、「Adobe Substance 3D Sampler」には、実世界のオブジェクトを3Dモデルに変換する「3D Capture」を追加する。

さらに「Adobe Acrobat」がメタバースに進出。MetaアプリストアでAcrobatアプリをダウンロードし、Quest 2などのMeta VRデバイスから AcrobatでPDFの閲覧やコメントの追加、電子サインなどの作業が可能になる。