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調理ロボメーカーが恵比寿に麺料理屋オープン

ロボットスタートアップのTechMagicは、8月6日に自社開発の麺調理ロボット「P-Robo」を活用したスパイスヌードル専門の旗艦店「Magic Noodle 香味麺房」を恵比寿にオープンする。一連の調理工程を自動化して厨房の生産性を向上。オペレーションの標準化と味の再現と安定化を実現し、厨房の人手不足解消を目指す。

提供されるのは混ぜ麺。蕎麦粉とパスタ粉をミックスさせた独自麺
麺は2種類で、一部メニューは平打ち麺

無国籍麺「Magic Noodle 香味麺房」

「Magic Noodle香味麺房」。8月6日開店予定。恵比寿駅前すぐ

新たに開店する「Magic Noodle香味麺房」では、デュラムセモリナ粉と蕎麦粉を混合したオリジナル麺に、香辛料や香味野菜を合わせて炒め混ぜた、ノンジャンルの無国籍麺料理を提供する。所在地は東京都渋谷区恵比寿南1-1-12。JR恵比寿駅西口からは徒歩2分弱、地下鉄恵比寿駅からは徒歩1分以内の好立地だ。座席はカウンターのみで、席数は10席。営業時間は11時~22時30分(オープン日のみ12時営業開始)。定休日は年末年始(未定)。

座席はカウンターのみ。

4日には内覧会が行なわれた。厨房では、東京・丸ビル地下1Fでプロントが6月に開店した「エビノスパゲッティ」に導入したパスタ調理ロボット「P-Robo」を、ほぼそのまま活用した調理ロボットが稼働し、最短で48秒間隔で料理を提供できる。

開店時の提供メニューは以下のとおり。

  • 豚ひき肉とココナッツミルクのトムヤム
  • 卵黄と青のり天かすの悪魔
  • しびれ山椒とナッツの麻辣
  • 豚ひきにくと彩りラペのカレー
  • にんにくと豚バラチャーシューのスタミナ
  • ベーコンと玉ねぎの辛クリームチーズ
提供メニュー6種類
メニュー一覧。麺を注文したら追い飯用ライスはサービス

入店した客はまず入り口で注文を済ませ、会計する。会計はクレジットカードや交通系ICなどキャッシュレスのみ。ただし開店当初はQRコード決済系には対応していない。厨房のなかでロボットが稼働している様子は、ガラス越しではあるがカウンター席からよく見える。客はロボットが調理している様子を見ながら料理を待つことになる。

カウンター座席から見えるP-Robo。どの席からもロボットがよく見える
座席下には荷物をかけられるフックがある
会計はキャッシュレスのみ。自動券売機も独自開発中

中堅・個人店舗でも熟練シェフの味を再現したロボットの活用を

TechMagic 代表取締役兼最高責任者 白木裕士氏

TechMagic代表取締役兼最高責任者の白木裕士氏は「2018年創業後、いかに調理を自動化していくかに注力してきた。どうやって熟練シェフの味を再現していくかに重きをおいて開発している」と挨拶。現在は茹でる、炒めるに対応しているのみだが、今後は「揚げ」や「焼き」にも挑戦し、様々な調理ロボットの開発をし、様々なジャンルの料理の再現を行なっていく予定だと語った。

今回店舗を作った狙いとしては、「ロボットメーカーとして創業しており、自分たちで飲食店を開くとは考えていなかった」そうだが、「現場で技術を向上させていく、進化させていく場を作りたいと思ったのが基幹店を作りたいと思ったきっかけ」だと述べた。そして「様々な企業と新しい商品開発を行なっていく場所」としても活用していきたいと述べた。

また、店舗を開いた理由はもう一つあり、「大企業だけでなく、中堅もしくは個店でもロボットが使える」ことを示したいと考えたからだという。「このパッケージをそのまま使いたいという中堅・個店があればパッケージとしてもご案内していきたい」と述べた。

蕎麦粉とパスタ粉を練り込んだ独自の麺を開発

TechMagic 事業推進本部 業態開発責任者 橋本翼氏

Magic Noodle 香味麺房の業態は、TechMagic事業推進本部 業態開発責任者の橋本翼氏が紹介した。まずは「(P-Robo)を使ってパスタ以外でどんなことができるかから考えた」という。そして「既存の麺料理をそのまま再現するよりは、今までにない料理を出してトータルでの食体験を楽しんで頂きたいと考えた。麺はもっと広がりがあっていい。蕎麦粉とパスタ粉を練り込んだ独自の麺を開発して、『蕎麦が世界を旅したらどうか』と考えて蕎麦と世界の料理のインスパイアから各国料理の香味野菜を軸として美味しさの骨子とした」という。開店当初は6つの商品を出すが、今後、季節によって商品を入れ替えして販売促進も展開する。

装置の強みは、自動で炒めて和えて、様々な種類の料理を素早く提供できるところ。橋本氏は「クイックにご利用頂けるスタイルを想定して、内装も作り込みすぎず無国籍感とした」とコンクリート打ちっぱなしの店内を紹介した。カトラリーも、無国籍感のために、敢えてフォークとスプーンの提供を基本としたという(希望者にはハシも提供される)。橋本氏は「先入観なく食事を楽しんでいただいたい」と語った。なおロゴマークの渦巻は、自動調理ロボットのP-Roboが回転するところと、皿のなかで混ぜて食べることをモチーフとしている。

シグネチャメニューの「しびれ山椒とナッツの麻辣」。麺は200g、具が200gくらいとのこと
追い飯を投入すると、それまでの痺れとはまったく違う味わいに

4つの独自形状のフライパンとIH調理器で自動調理

厨房内の調理ロボット「P-Robo」

P-Roboの解説は、エビノスパゲッティ同様、TechMagic 開発本部 副本部長の横内浩平氏が行なった。ロボットは基本的に同じで、冷凍された麺を茹であげて、4つの独自形状のフライパンとIH調理器を使いながら調理を順次行なっていく。盛り付けは従業員が行なう。オーダーから提供までは2分程度を想定する。

エビノスパゲッティでは店舗面積の都合上、動きが見辛かったが、今回は注文が入った後に具を投入、麺を受け取って調理したあとにフライパンが自動洗浄される一連の流れのほか、フライパン内部でソースと麺がグツグツと煮立つ様子も見ることができた。回転するフライパンなのにソースが大きく跳ねたりしないのは、内面のコーティングなども工夫されているからだという。

TechMagic 開発本部 副本部長 横内浩平氏
ロボットはエビノスパゲッティに導入したものとほぼ同じ
おかまのような独自形状のフライパンと、IH調理器で高速均等加熱
具材やオイルを投入するところ
フライパンからお皿への盛り付けは人手
最後の飾り付けも人が行なう
ロボット内部のストッカー情報などはディスプレイ上に表示
従業員が扱うオーダー用タブレット。これで指示を出すとロボットが動き始める

券売機との自動連動や一人営業も視野に

左からTechMagic横内氏、橋本氏、CEOの白木氏

目標月商・杯数などは非公開。期間限定店舗ではなく営業を続ける予定とのこと。原価率は高めに設定しているという。安定してきたら二人、また一人での営業を想定する。TechMagicでは現在、調理ロボットと連携できる自動券売機を独自開発中で、年内にそれも導入する予定とのこと。注文されると同時にロボットが調理を開始することで、さらに素早く料理を提供できるようにして回転率を上げることを目指す。

TechMagicのロボットのみならば3年で投資対効果が得られるという。調理ロボットが本当に真価を発揮できるのは、おそらくはより規模の大きい店舗だと想定される。今後は郊外店などでの展開も視野に入れる。また、フランチャイズ展開等も、話があれば考えるとのことだった。

回転するフライパン
パッケージ提供やフランチャイズ展開も視野に入れる