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NTT、腕運動学習と“視線”の関係解明。世界初

NTTは、腕運動学習と視線の関わりについて世界で初めて解明。腕を動かす運動の学習は、「腕の動かし方のみで覚えるという」従来の考え方に対して、視線の状態も重要であるという考え方を提案した。

テニスでショットを打つ、クルマの運転をする、タブレット端末を見ながら机の端に置いたコーヒーカップに手を伸ばすなど、人間はさまざまな方向に視線を向けながらも巧みな腕運動ができる。こうした日常動作は、脳の運動学習の仕組みによって支えられているもので、脳のメカニズム解明は、人間の身体運動制御の本質的理解や、スポーツ、医療、ヒト内面のデジタル化技術など、さまざまな社会応用に関連する重要な課題としている。

一般的に「腕運動学習とは、腕の新たな動かし方を学ぶこと」と考えられている。従来の研究でも、さまざまな腕の状態(運動目標の位置、腕の姿勢、腕を動かす速度など)が、どのように運動学習に影響し、学習結果をうまく引き出すのに有効か、などが議論されていた。

これまで、視線状態を考慮した腕運動学習でも、目標を中心線で捉える優位性のみが強調・議論され、中心線や周辺視を含め他視線状態が、腕運動学習にどう関係するかは見過ごされてきたという。そのため、現在の運動学習理論では、視線状態と腕運動学習は独立したものとみなされていた。

研究では、同じ腕の運動を学習する場合でも、腕の運動の中心を見ながら学習する場合と、「周辺視野」で腕の運動を見ながら学習する場合で、腕の運動自体は同じでも、視線状態の違いによって、それぞれ別の運動として学習され脳に記録されていると考えられるという。

また、この分離表現を利用することで、従来難しいと考えられていた相反する2つの腕運動スキルを同時に学習することも可能で、運動学習中に視線状態とスキルをペアにして試行毎に切替えるだけで可能になる。これにより視線状態毎に運動スキルが脳内で(ある程度)分離的に表現されることがわかった。

これらの成果は、運動学習の統一的理解に向けた足がかりとなることに加え、スポーツやリハビリテーションにおける視線に着目した効果的な学習デザイン、デジタルツインに向けた人運動スキル表現の設計指針などにつながる可能性があるとしている。