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“10億人と直接つながる”ソニーを目指す。エンタメを磨き成長へ

ソニーグループは、2021年度経営方針説明会を開催し、クリエイティビティ、テクノロジー、コミュニティを軸に事業強化を図る方針を説明。ソニー 会長 兼 社長 CEOの吉田憲一郎氏は、今後3年間で2兆円の投資を行なうこととともに、「10億人と直接つながる」という目標を掲げた。

2014年が転換点 ハードウェア・CMOS・DTC

吉田氏は、2012年の第1期中期経営計画からの振り返りを行ない、ブランデッドハードウェア事業の立て直し、デバイス領域におけるCMOSセンサー集中、コンテンツIP、Direct to Consumer(DTC)の3つの軸で説明した。

ブランデッドハードウェア事業は、エレクトロニクスの赤字脱却のため、規模を追わずに「プレミアム路線」に転換するというもの。テレビやカメラ、オーディオなどの事業の基本方針となっている。

2013年からソニー経営陣となった吉田氏だが、エレクトロニクスを中心として展開してきたソニーにおいて、「2014年の施策が転換点となった」という。PC(VAIO)からの撤退、テレビ事業の分社化、無配化などにより、本社の構造改革を促進。本社をスリム化し、意思決定のスピードが向上したことが、現在の業績改善のきっかけとなった。

ブランデッドハードウェア

これら施策により、ブランデッドハードウェアを安定的にキャッシュフローを創出する事業に転換。吉田氏は、「特に5Gなどの無線通信技術を担うモバイル事業の黒字化は、今後につながる成果」とする。

CMOSイメージセンサーへの集中も、デバイス事業において、有機EL、カメラモジュール、バッテリなら撤退にともない、CMOSに重点投資に転換。圧倒的なシェア獲得に至った。現在はモバイル向けが中心となっているが、今後は車載やIoT向けが成長領域とし、センシングを強化。イメージングとセンシングの両方でナンバーワンとなるという長期目標を掲げる。

コンテンツIP、DTCへの投資では、EMI Music Publishingの買収など過去3年で、コンテンツ企業の買収を進めている。ゲームやエンターテインメント企業のソニーグループの成長を担うものと位置付けているが、収益に貢献しているのは自社のゲーム&ネットワークサービス。PlayStation Plusなどのネットワークサービスの売上は2013年度から2020年度までで10倍に成長している。

IPを磨きユーザー体験を強化。「10億人と直接つながる」

今後の重点領域は、「サービス」「モバイル」「ソーシャル」。2021年度から2023年度の3年間で2兆円の戦略投資枠を設定し、(1)IP/DTC、(2)テクノロジー、(3)自己株式取得の優先順位で成長投資を行なう。

サービスは、サブスクリプションモデルによるエンターテインメント市場の成長で、NetflixやDisney+などのサービスとの連携を強化。また、ゲームや映画といったエンターテインメントの境界がなくなってきていることから、モバイルとソーシャルを「インフラ」として活用していく。

例えば、ゲーム「フォートナイト」上ではバーチャルコンサートや映画のプロモーションが行なわれるほか、「友達と会う場所」としても機能。ソニーのエンターテインメントをサービス、ソーシャルに近づけていく。

また映画「鬼滅の刃 無限列車編」は、原作のコミック(IP:知的財産)をアニプレックスがテレビアニメ化。その後劇場版に展開しており、主題歌もソニーミュージック。海外でもヒットしており、世界に広がるIPになった。さらに映画からゲームに広げるなど、IPの価値最大化を目指す。

ゲーム「アンチャーテッド」は、逆にゲームから映画化というIP展開を行ない、制作チーム間で連携を強化している。

ユーザーの体験価値拡大に向けた投資も強化。体験テクノロジーのチャレンジとなった「PlayStation 5」に続き、「次世代バーチャルリアリティーシステム」を開発中。また、ゲーム体験の強化に向け、Sony AIとSIEの協力などを進めていく。

コミュニティ(世界)の拡大も重要施策。アニメとゲームのDTCサービス強化を図り、ソニーグループと直接つながる人を、現在の約1.6億人から10億人に広げる目標を掲げる。「特に達成時期の目標はない」としたが、ゲームやアニメを中心にユーザーとの接点を強化していく。

その軸となるのは「プレイステーション ネットワーク」で、ユーザーエンゲージメントを強化。また、自社スタジオへの投資、外部スタジオへの出資や協業などにも取り組む。「Fate/Grand Order」(FGO)などアニメ関連IPのグローバル展開や、「プレイステーション」のIPのモバイル展開も行なう方針。

今後の成長領域と見込むのが「モビリティ」。自動運転車「VISION-S Prototype」による研究開発や、車載センサーやLiDARなどに取り組んでおり、「今後数年でモビリティ領域でソニーが貢献できることが増えてくる」とした。

また、センシング技術のIoT活用を想定。CMOSイメージセンサーを用いたエッジソリューションによる小売の実証実験などに取り組む。また、AIを用いた分散データ処理により、情報量と消費電力を大幅に削減し、環境負荷低減に寄与していく。

なお、「ソニーと台湾TSMCが半導体工場で合弁」との報道については、「コメントは差し控えるが、CMOSセンサーのロジックはかなりの部分がファウンダリからの調達になる。一般論として、ロジックを含めた半導体の安定的な調達は、日本の国際競争力のためには大切」と回答した。