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ソニー、エンタメ再注力・金融分離の新経営方針 吉田CEOマリオを語る

ソニーグループは18日、2023年度の経営方針説明会を開催した。長期でのクリエイティビティ貢献のための事業展開を説明するとともに、金融事業を上場する方針を示した。

吉田憲一郎CEOは、音を祖業とし、長期視点で事業を広げてきたソニーの歩みに触れ、自身の経営体制において、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパス(存在意義)を軸に事業展開してきた点を強調した。

感動を軸にエンタメやプロダクト強化

成長領域であるエンタテインメントは、「感動」を創る力への投資を強化しており、コンテンツIPには過去5年間で約1兆円を投資。PlayStationの自社制作タイトルをテレビドラマ化した「The Last of US」は、配信パートナーのHBO Maxにおいて、欧州とラテンアメリカで最も視聴された番組となった。また、アニメに特化したDtC(Direct-to-Consumer)サービス「クランチロール」では視聴データをクリエイターに還元するなど、ユーザーから学び、クリエイションに活かすなど、クリエイターとの関係を重視していく。またインドでも事業拡大しており、地域文化に根ざしたクリエイションを強化していく。

プロダクトにおいては、ハリウッドにおけるデジタルシネマカメラ「VENICE」の採用拡大や、バーチャルプロダクションへの注力、スポーツ中継等での審判判定支援Hawk-Eye Innovationのエンタテインメントテクノロジーを強化する。

CMOSイメージセンサーも過去5年で1兆円を投資。今後もクリエイションを支えるキーデバイスとして注力していく。

「三笘の1mm」はソニーのα1で撮影された

また、感動空間の拡張としてVRやAIを活用しながら、感動の「場」を現実空間から仮想空間や移動空間に拡大していく。ゲームのライブサービスや、モーションキャプチャーの「mocopi」、レーシングAIエージェント「Gran Turismo Sophy」などの事例を紹介した。

移動空間への拡大は、ソニー・ホンダモビリティによるEV新ブランド「AFEELA」への技術提供や、Epic Gamesとの競合によるリアル3D制作ツール「Unreal Engine」の活用などに取り組む。また、SHAR SPHEREプロジェクトによる小型人工衛星「EYE」を感動体験に拡張していく。

事業別では、G&NS分野におけるPlayStation 5の普及拡大を目指す。2022年度第4四半期の販売台数は630万台に到達。フルキャパシティで生産継続しているほか、自社ライブサービスゲームの開発・運営力を強化し、PCにおけるアクティブユーザーも増やしていく。

音楽では、ソニー・ミュージックのアーティストによる新曲訴求や、The Orchardを軸にディストリビューション・レーベルへのサービス拡大などで、「ストリーミングサービス市場の成長を上回っていく」(ソニーグループ 十時裕樹 社長COO 兼 CFO)とした。

ソニーグループ十時社長

エンタテインメント間でのIP連携を強化し、The Last of USやグランツーリスモ、Twisted MetalなどゲームIPの映画化とテレビシリーズ化を推進。アニメにおいては、アニプレックスとCrunchyrollの連携を強化する。また、IPをテーマパーク施設などに活用していく「ロケーションベースエンタテインメント」も強化しており、タイのテーマ&ウォーターパーク「Columbia Pictures Aquaverse」や「アンチャーテッド」の世界観を投影したスペインのライドアトラクション、歌舞伎町タワーに展開した屋内体験型アトラクション「THE TOKYO MATRIX」の「ソードアート・オンライン -アノマリー・クエスト-」などの事例に言及した。

金融事業は再上場へ 吉田CEOスーパーマリオを語る

基本的にはこれまでの事業方針を継承しつつ、エンタメ投資を加速していく考えだが、大きな変化を予定しているのが金融事業だ。

現状ソニーフィナンシャルグループにおいて、ソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行などを展開しているが、ソニーフィナンシャルグループの株式上場を前提とした、パーシャル・スピンオフの検討を開始した。2~3年後のスピンオフを目指し、2023年度末にかけて詳細を検討していく。

元親会社に一部の株式(20%未満)を残すパーシャルスピンオフの制度ができたため、現在の会社名やブランドなどを活かしながら、上場により資金調達を図る考え。ソニーフィナンシャルグループは、2020年に株式公開買付けにより完全子会社化しており、再びの上場を目指す形となる。

完全子会社化では、結果としてソニーグループの連携強化やガバナンスなどの経営力の強化が図れたとする。一方、「ソニーグループの今後の成長において、イメージセンサーやエンタメなど、これまでとは違う次元の投資が必要になる」(十時社長)として、再上場を目指す。「パーシャルスピンオフにおいて、ソニーブランドを継続利用し、社名も継続、シナジーも変わらずに、独自の資金調達を行なえるようになる、中長期的な成長のための準備」とした。

投資の詳細については未定だが、「今後もコンテンツIPと、DtC、テクノロジーには投資をしていく」(吉田CEO)と言及。さらに吉田CEOは、「先日、六本木でマリオの映画(ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー)を見ました(注:ソニーとは関係が無く、イルミネーションと任天堂による制作)。素晴らしいIPで、コンテンツエンターテイントだと思いました、私が(ゲームで)スーパーマリオをやっていたのは30年前です。愛されるキャラクター・IPは30年、50年、100年と生きていく。事業の持続的な成長のためにそこに投資していきたい。“感動”は懐が深くて排他的ではない成長領域。エンタメには人を結びつける力があると思っている」とコンテンツIP投資に取り組む理由を説明した。