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「プラネタリウムのDX」を目指すコニカミノルタ

コニカミノルタは、全国各地の自治体などが運営するプラネタリウム施設へ、デジタルトランスフォーメーション(DX)による再生を提案する事業を始める。国内のプラネタリウム施設に向けデジタル変革による施設の魅力や価値向上を提案し、「もう一度プラネタリウムの施設としての魅力を考えてみて欲しい」と呼びかける。

コニカミノルタが運営するプラネタリウム施設「コニカミノルタ館」には、1,500円以上のチケット代を支払い、年間125万人以上が来館する。デジタル技術を活用し、このノウハウやコンテンツを提供することによって、「プラネタリウム施設は魅力ある施設に生まれ変わる」(コニカミノルタ 映像ソリューション事業部 古瀬弘康 事業部長)と力説する。果たしてコニカミノルタが実施しようとしておるプラネタリウム施設のデジタル変革とはどういった事業なのだろうか?

何故、プラネタリウムにデジタルにデジタル変革が必要なのか。それを明らかにするために、現在のプラネタリウム施設が置かれている現状を紹介しよう。

日本にプラネタリウム施設は、約400存在する。このうち現在でも稼働中なのは350施設で、2019年度の年間来場者数は889万人。

歴史で振り返ると1970年代にプラネタリウム設置のピークが一度あり、座席数100未満の施設が多数誕生。1980年代から90年代にかけて座席数200席以上の施設が誕生するピークがあった。しかし、1995年頃からプラネタリウム施設は減少傾向にある。

要因はいくつかある。まず、予算が限られた状況では魅力的なコンテンツを集めることが容易ではない。同じようなコンテンツを上映するだけでは来場者も増えていかないという状況に陥っている施設も多い。来場者を増やすキラーコンテンツをどうすれば集められるのか、悩んでいる施設も多いようだ。

元々プラネタリウムは、黒いガラスに星の穴があいた「恒星原盤」をレンズでスクリーンに投影するものだった。しかし、近年は専用レンズをつけたデジタルプロジェクターでドームに映像/CGを映すデジタル式プラネタリウムが増加している。

プラネタリウム施設は、スクリーンが真っ直ぐな映画館とは異なり円形の巨大スクリーンとなっている。そのため、現在のプラネタリウム施設は2台のデジタルプロジェクターとその間に光学式投影機を置いて上映を行なっている。コンピュータで制御されているため、操作するスタッフにはデジタル知識が必要となるものの、そうしたノウハウを持ったスタッフを確保できない施設もある。

さらに機器のメンテナンスも不可欠となるため、メンテナンスコストをどのように捻出するのかもプラネタリウム施設にとっては大きな課題となっている。

こうした課題を解決するため、コニカミノルタは新事業「Connected Dome」をスタートする。集客のポイントとなるコンテンツ配信は、クラウドを活用したネットワークサービス「Connected Dome Library」として提供。管理まで含めてコニカミノルタ側が請け負うことで、導入するプラネタリウム施設は負担を少なく、導入ができる。メンテナンスについても、リモートメンテナンスを実施することで、コスト削減につなげる。

コニカミノルタは直営のプラネタリウム施設を複数館営業し、年間120万人以上を集客している実績がある。施設で利用する光学投影機やドーム施行といったハードウェア、クラウドを使ってコンテンツを配信するシステムなどソリューション事業を提供。コンテンツについても、自社開発のものやクリエイターとの協業などでコンテンツ拡充を進めている。

Connected Dome Libraryは、2021年1月開始予定で、コニカミノルタ制作のプラネタリウム映像作品、パートナー各社のプロネタリウム映像作品を配信する。施設側はハードウェアを含めてサブスクリプション方式で利用することが可能となるので、様々なコンテンツを低コストで利用できるようになる。

「従来のプラネタリウム施設は、100万円台後半から200万円台前半くらいの価格帯でコンテンツを購入し、一度、購入したものは人気があってもなくても上映し続けなければならない。人気コンテンツになるのか見込みだけで購入しなければならないギャンブル的要素があった。これに対し当社のサブスクリプションでは18本のコンテンツを提供予定で、反応を見て人気があるものを上映できる」(古瀬氏)

オンデマンド型コンテンツとして、人気クリエイターの作品も提供予定。こちらは年間上映が可能で、プラネタリウムクリエイターとして有名なKAGAYAスタジオ制作のコンテンツなどを提供している。

また、コニカミノルタでは施設を使って新しいタイプのコンテンツ上映の提案も行なう予定だ。

「我々の直営館では、一流ミュージシャンのライブを上映。プラネタリウム施設は、通常のライブ施設に比べれば至近距離でアーティストのパフォーマンスを視聴できることから、高額設定とした前方のチケットが瞬殺の勢いで売れていった。こうしたライブをストリーミングで上映するといった施設活用方法も可能となる」(古瀬氏)

ストリーミングを行なう場合には、「ドームの屋根に5G装置を用意することで、ライブコンテンツも遅延なく上映できる。5Gは谷になっている場所では受信しにくいという欠点があるが、プラネタリウムの屋根にアンテナをつけることでスムーズな受信がしやすいはず」(古瀬氏)と最新のネットワーク環境の活用も紹介した。

新しいデジタルの仕組みでプラネタリウムの最新化をはかると共に、施設運営ノウハウまで請け負って提供するマネージドサービスとして提供。さらに顧客データを活用し適切な会員サービス提供など、デジタルの強みをフルに活用したプラネタリウム施設への転換を促していく。

Connected Dome Libraryの正式な提供開始は2021年1月だが、すでにつくばエキスポセンター、佐世保市少年科学館「星きらり」への導入が決定している。

古瀬氏は、「プラネタリウムのスクリーンは投影面積119m2程度だが、ドームのスクリーンはその4倍となる454m2と大きく、映画館以上に大きな可能性がある。自治体のプラネタリウムは数百円程度の入場料で、小規模に運営されていることも多いが、地域活性化という意味でも多くの人が集まってくれる施設へと生まれ変わっていくことを支援したい」と話している。