ニュース

パナソニックが運営する次世代ファミマ。最新技術満載

ファミリーマートとパナソニックは、4月2日にオープンした「次世代型コンビニエンスストア」のメディア向け説明会および見学会を実施。顔認証決済のデモンストレーションや、店内で実施される実証実験について説明をした。

新店舗テープカット

財布もスマホも不要の顔認識決済

実証実験が行なわれるファミリーマート佐江戸店は、既存の店舗を改装したものではなく、パナソニック敷地内の遊休地(神奈川県横浜市都筑区佐江戸町700番地)に、新規に建てられた店舗。営業時間は6時から23時。店内は一般の利用客が入れるエリアと、関係者のみが入れるエリアに分かれており、実証実験の内容はエリアによって異なる。

顔認証決済の実証実験は、関係者エリアにて関係者に限定して行なわれる。テスト環境ということもあり、このエリアで取り扱っている商品は飲食物約100アイテムと、通常店舗よりは少なめ。

顔認証決済の実証実験のためのエリア

顔認証決済を利用するには、あらかじめモバイルで顔写真とクレジットカード情報の登録が必要。入店時に顔認証を行なうとゲートが開く。

入場ゲート前での顔認証によりゲートが開く
登録していない顔だと認証されず、ゲートは開かない

その後、通常のコンビニ利用と同様に商品を手に取り、決済用端末(顔認証決済エリアの写真の右側)へ進む。決済用端末に商品を置くと、映像から商品を認識し、決済金額が端末のパネルに表示される。その内容に問題がなければ、端末の顔認証用のレンズに自身の顔を読み取らせ、決済が完了。出口の端末で再度顔認証を行ない、ゲートが開き退店する。

商品を置くだけで認識し、決済金額を表示
顔認証を行なった後、暗証番号を入力すると決済完了
出場ゲート前で再度顔認証をして退店

関係者のみが利用できる実証実験としてもう1つ、モバイルオーダーによるデリバリーサービスを実施。配達に関する指定をした後、弁当などを選択すると、オーダーした商品が届けられる。決済は、モバイルオーダー時に登録したクレジットカードにて行なう。

モバイルオーダーの概要
モバイルオーダーのスマホ画面

実証実験はデリバリーまで行なう内容でかつ事前のクレジットカード決済にて実施しているが、客が店舗で受け取ったり、さらに受け取る際に決済を行なうなどの可能性も考えられるという。

利用客の利便性向上と従業員の作業量削減の両立

一般店舗エリアでは、店内POP・電子棚札、店舗運営IoTセンシング、多言語コミュニケーションツール、イートイン空間演出といった実証実験を実施。

店内POP・電子棚札は、利用客にとっては値札情報の正確性の向上、店舗にとっては値札オペレーションの効率化というメリットがあるとする。

本社からの商品・価格データがプラットフォームを通じて、値札表示に反映される。例えば新商品プロモーションがあれば「NEW」という表示をしたり、チェーン全体でセールを行なう場合は「SALE」の文字が自動で表示されるので、利用客にはわかりやすく、従業員には値札を変える作業の削減につながる。

「ボス無糖ブラック」はセール対象
電子棚札パターン

店舗運営IoTセンシングに関しては、車での来客、年代や性別といった属性、来客数、滞在時間、来店客の店舗内での導線、混雑状況、イートインなどの施設の利用、商品の欠品、レイアウト、価格の情報を活用。従業員のオペレーションからマーケティングまで幅広く利用する。

店舗運営IoTセンシングの概要

従業員は、専用のウェアラブル端末を装着。時間ごとなどの定型業務の通知や、レジに一定人数の客が並んだり、トイレが一定回数利用された際に、レジやトイレ清掃に促すなどの通知が届く。全員に同じ内容の通知を行なうことも、個別の通知を行なうことも可能だという。

従業員用のウェアラブル端末

また、店内の一部には商品の欠品を検知するためのカメラも設置されている。

欠品を検知するためのカメラ

マーケティングについては、カメラやセンサーなどによるIoTセンシングからのFACTデータ活用による店舗運用の最適化、売上向上を目的とする。

顔認証用カメラ
年齢・性別を判定するカメラ
熱感知センサー。人の有無を判定する
光の反射で物体を検知

店内では、外国人への接客サービスレベル向上を目的に、多言語コミュニケーションツールを活用する。

多言語コミュニケーションツールの概要
使用されるツール

そのほか、利用客に支持される空間を目指した、プロジェクションマッピングなどの演出を施したイートインスペースを設置。利用状況分析によるアップデートが行なわれる。

イートインスペース

店長はパナソニック社員

説明会では、ファミリーマート 代表取締役社長の澤田貴司氏が、パナソニック側からの提案により、今回の店舗ではパナソニックがファミリーマートのフランチャイズに加盟し、運営することを発表。

店長をパナソニック システムソリューションズ ジャパン 法人営業部の藤田 卓氏、スーパーバイザー兼副店長をファミリーマート ニューマーケット運営事業部の山田恵理子氏が務める。

また、実証実験を通じて実現できると判断されたものは順次展開していきたいと話した。

ファミリーマート 代表取締役社長 澤田貴司氏
副店長を務めるファミリーマート ニューマーケット運営事業部 山田恵理子氏

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 社長の樋口泰行氏は、実証実験では、5つから6つのソリューションを店舗に埋め込んでいて、実証実験を重ねて、一刻も早く展開できるようになればと今後の展望を話した。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 社長 樋口泰行氏

パナソニック システムソリューションズ ジャパン プロジェクト統括の下村康之氏は、現場プロセスイノベーションを実行することを説明。この実行に向けて、自らの知見、スキルを向上させるために、店舗運営に踏み出すことに決めたと述べた。

パナソニック システムソリューションズ ジャパン プロジェクト統括 下村康之氏(左)と、店長を務める同社 法人営業部 藤田 卓氏(右)

これにより真の現場の課題の抽出、ICTのソリューションと店舗オペレーションを一体開発できるという。

店内に取り付けられた80台を超える様々なエッジデバイス、センサーによって、データを取得し、店舗のデジタル化を行なう。これらにファミリーマートが持っているデータを掛け合わせることによって、運営の効率化、マーケティングの改革、中食の強化を進める。

IoTソリューション適用イメージ

この基本となるプラットフォームとして、店舗で回せるデータのプラットフォームを今回の実証実験で構築すると説明した。

そのほか、パナソニックの強みとして、画像分析AIを挙げ、それが顔認証決済、物体検知AIシステムによる無人販売を実現しているという。この実験を通して、少人数でのオペレーションの実現を目指すとした。

さらに、製造業で培った働きやすい店舗設計や、利用者に新たな気付きを与えるイートインスペース、モバイルを活用した新しい購買体験を提供することを説明。モバイルオーダーシステムの実験などに活かすと述べた。