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ようやく加速し始めた「日本のAIデータセンター」 世界各地の競争と日本の課題
2026年8月28日 08:40
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日本でもAIデータセンターを巡る取り組みが加速している。
担当者が不適切な場所からオンライン参加して大騒ぎになった秋田県の記者説明会……スキャンダルのほうが大きく報じられてしまったが、県が担当者を処分することで幕引きがされたことは記憶に新しい。しかし筆者は、そのニュースを横目に見ながら、説明会のテーマには真面目に注目してほしいものだなと思った。
その記者説明会のテーマは「AIデータセンターを誘致」だ。現在、日本各地でAIデータセンターの建設に向けた構想が進められており、具体的な計画が発表されるケースも増えている。
なぜ今、AIデータセンターの建設が注目を集めているのだろうか?
ITデータセンターから新しい「AIデータセンター」へ
データセンターと言えば、コンピューターがずらっと並べられて、大量のデータを処理している場所というのが一般的なイメージだろう。
例えば、読者の皆さんがWebブラウザーを利用してImpress WatchのWebサイトを見る時には、PCやスマートフォンが、どこかのデータセンターに置かれているImpress WatchのWebサーバーに接続して、そこで処理されたデータが送られてきて、画面にさまざまな情報を表示している。
あるいは、iPhoneのSiriのような音声認識アプリケーションを利用する場合。iPhoneが捉えたユーザーの音声を、Appleのデータセンターに転送し、Appleのデータセンターに置かれているコンピューターがその音声を処理(音声認識してテキストなどに変換など)し、ユーザーの質問の答えを探してきて、iPhoneに答えを返すという仕組みになっている(デバイスのみで完結する場合もある)。
このように、現代のITの仕組みにこうしたデータセンターは欠かせないものとなっている。
しかし、今注目されているのは、そうした従来型のITに使われてきた「ITデータセンター」ではない、新しいタイプの「AIデータセンター」だ。
AIデータセンターの能力が国力を左右する
従来型のITデータセンターと新しいAIデータセンターは何が違うのだろうか?一言で言えば、従来型のITデータセンターは、広く汎用のIT処理に適しており、AIデータセンターはAIの処理に特化している点だ。
では、具体的には何が違うのか? まず、主力となる演算装置がITデータセンターとAIデータセンターでは異なっている。
ITデータセンターはAMDやIntelなどが提供してきたCPUが主に利用されているが、AIデータセンターではAMDやNVIDIAなどが提供するGPU(Graphics Processing Unit)が採用されていることが大きな違いとなる。
CPUは超高速にデータを順々に処理していくことが得意な演算器で、イメージとしては道路の車線数は多くないけど、レーシングカーのような車が超ハイスピードで走るようなものだ。このため、ユーザーから送られてきたデータを順々に処理するのに適しており、従来型のIT処理(Webサーバーなど)に向いている。
それに対してGPUは、多数の演算器による並列処理を得意としており、一度に大量のデータを扱えることが大きな特徴だ。例えるなら、車が数千から数万の車線を持つ道路を並行して走っているイメージだ。この並列処理能力がAIの演算と相性がよく、現代のAI処理の多くでGPUが使われている。
AIデータセンターではそうしたGPUを、並列に並べてシステムが構築されている。
当初こうしたAI用のGPUは、GPUを8基搭載したサーバー機器上で処理されていた。しかし、AIのシステムが大規模になるにつれ、それでは処理能力が足りなくなり、今ではGPUを72基搭載したラックになり、最近ではそのラックを施設の内部に並べてGPUを数万基用意する「AIデータセンター」へと規模が拡大されている。
利用できるGPUの数が増えれば増えるほど、AIを処理する能力は向上する。それにより、新しいAIのソフトウェアを開発し、そのソフトウェアを活用したサービスを提供することが容易になる。
逆にAIデータセンターの処理能力が十分でないと、AI利活用がAIデータセンターの処理能力で制限されてしまうことになる。
現在、「AIが国家の競争力を規定する時代」の到来が予想されている。そうした中で、AIデータセンターの処理能力が、その国の国力を左右する時代が来ると考えられており、各国とも競争してAIデータセンターの建設にあたっている。これが、AIデータセンター投資が各地で発生している要因だ。
AIデータセンター建設に必要な「電力」と「工業用水」
こうしたAIデータセンターの建設時に課題になるのが、データセンターへ供給する電力と水の確保だ。
大規模なAIデータセンターの内部には1つで1,000Wを超える電力を消費するGPUが数万基から数十万基といった規模で所狭しと並べられている。このため、AIデータセンター全体の消費電力は従来のITデータセンターに比較して桁が1つか2つ上がっているような状況だ。
例えば、OpenAI、Oracle、ソフトバンクグループなどが共同で推進している「Stargate」プロジェクトが米国テキサス州に建設中のAIデータセンターでは、データセンター1つで1.5ギガワットの電力を消費する(こうしたデータセンター全体で消費する電力のことを電力容量と呼ぶ)。一般的な原子力発電所1つが提供できる電力容量が1~1.5ギガワット程度なので、原子力発電所1つ分の電力が1つのAIデータセンターだけで消費されることになる。
このため、AIデータセンターを建設するに当たっては、そうした巨大な電力容量を満たすだけの電力を供給できる場所(発電容量に余裕がある地域)を慎重に選定する必要がある。
また、工業用水の確保も課題だ。GPUには水は必要ないが、その冷却に工業用水が必要となる。GPUの冷却には液冷方式と呼ばれる液を循環させて冷却する方式が採用されているが、その液の冷却は、ラジエターにより、熱で水を蒸発させて冷却する仕組みが採用されている。
この方式では蒸発した分の水を補給する必要があるため、工業用水の確保が重要になる。
ただし、熱交換を利用した冷却の代わりに、巨大な冷蔵庫を利用して電力で冷却することも可能で、発電能力に余裕がある(例えば石油が豊富にあり発電量に不安のない中東地域など)では水の必要性はそこまで高くはならない。
こうした理由からAIデータセンターの立地には、電力の確保と工業用水の確保が必須になる。
日本は、水資源に恵まれている。一方、東日本大震災以降、停まったままの原子力発電所が多い現状などを考えると、今後AIデータセンターを設置する上で、電力供給は大きな問題になる可能性がある。
このあたりは、停止している原子力発電所の再稼働やその他の電源確保など、増大する電力需要に備えたエネルギー政策の推進が政府に求められることになるだろう。
「国益」を左右するAIデータセンター 動き始めた日本の取り組み
今後AIの利活用がさらに進むと、AIデータセンターの処理能力が「国益」を左右する時代がやってくると考えられている。このため、世界各国ではAIデータセンターの建設競争が発生している。
日本ではようやく2026年に入ってから巨大なAIデータセンターの建設計画が始まっており、7月に経済産業省が開催した「我が国のフィジカルAI政策に関する対外発信イベント」では、ソフトバンクやソニー、ホンダなどが出資するNoetra社がNVIDIA GPUを27,500基採用したAIデータセンターを国内に建設する計画であることを明らかにしている。
このNoetraのAIデータセンターの電力容量は140メガワットで、1.5ギガワット(1,500メガワット)を超えるような米国でのAIデータセンターに比べると規模は小さい。しかし、政府がAIデータセンターに本格的に取り組み始めた意味は小さくない。
冒頭で紹介した秋田県の取り組みではAAIDC(Akita Ai Data Center)プロジェクトという名称で、300メガワットから500メガワットの電力を再生エネルギー由来で供給し、AIデータセンターを秋田県内に建設する。
日本でもAIデータセンターの建設に向けた取り組みが加速したことは、AIデータセンターの処理能力が国益になる未来を考えると、日本の将来にとって歓迎して良いことだと言えるだろう。
ただし、米国では桁が1つ違う規模のデータセンターの建設などが進んでいる。我が国でも取り組みを加速していかなければならないのは明らかだ。今後政府、地方自治体、大企業などが中心になって取り組みが進められていくことになると考えられるが、その動向は要注目だ。









