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ワンプレート冷凍食品が急成長した理由 ニップンが磨いた「一度においしく温める」技術
2026年8月25日 08:20
冷凍食品市場が拡大を続けるなか、主食とおかずを一皿に盛り合わせた「ワンプレート冷凍食品」(冷凍ワンプレート)が急成長しています。
ニップンの発表資料によると、冷凍食品市場全体は2021年比113%となり、約1兆円規模に到達。なかでも冷凍ワンプレート市場は、21年比312%と、冷凍食品市場全体を大きく上回るペースで拡大しています。
ニップンは「よくばり」シリーズで2015年に同カテゴリーへ参入して以来、約11年にわたってパイオニアとして市場をけん引してきました。現在は、市場の約5割のシェアをもつトップメーカーとされています。
冷凍ワンプレートは、なぜこれほど支持を広げたのでしょうか。市場を切り拓いた「よくばり」シリーズの誕生と、おいしさを支える技術について、8月4日にニップン本社で開催された新ブランド発表会と、商品開発部の増田さん、マーケティング部の加藤さんへのインタビューをもとに迫ります。
コロナ禍がきっかけに 冷凍ワンプレート急成長の理由
ニップンは2014年秋に冷凍ワンプレートの開発に着手し、2015年に「よくばり」シリーズを発売しました。外食やコンビニ弁当を意識した400円前後(当時)の価格帯で、電子レンジで温めるだけで主食とおかずを一度に楽しめる商品として展開してきました。トレー入りでそのまま食べられるため、食後の片付けの負担を抑えられることも特長です。
市場拡大の背景について、加藤さんは次のように振り返ります。
加藤さん:2020年から2021年にかけてのコロナ禍で外食の機会が減り、在宅時間が増えたことで、家庭で食事をする場面が増えました。在宅勤務の広がりや近隣でのまとめ買いの増加も、冷凍食品の利用を後押ししたと考えています。
そうしたタイミングで、進化を続けてきた冷凍食品のおいしさをあらためて実感していただき、『冷凍ワンプレートはこんなに便利なのか』ということにも、気付いていただけたことが大きかったのではないでしょうか。
近年は、共働き世帯や単身世帯の増加も追い風になっています。毎食の準備に十分な時間をかけにくい方が増える一方、健康志向も高まっています。時短や手軽さを求めながらも、簡単に、おいしく、バランスのよい食事を取りたいというニーズに応えられていることが、冷凍ワンプレート市場が特に急成長している理由だと考えています。
発売当初は、「デミグラスハンバーグ&ソテーナポリタン」と「おろしソースハンバーグ&香味醤油スパゲッティ」という洋食2品からスタートしました。その後、2018年には「五目ご飯と鶏と野菜の黒酢あん」などの和食メニューも投入。野菜を使ったメニューもそろえ、バランスのよい食事を手軽に取りたいというニーズにも応えてきました。市場の拡大を受け、2022年ごろからは大手食品メーカーの参入も相次ぎ、カテゴリー全体はさらに活気づいています。
「パスタだけでは足りない」の声から開発に着手
ニップンが冷凍ワンプレートという新たなカテゴリーに挑戦した出発点は、長年手がけてきた冷凍パスタ事業にあります。同社は「オーマイプレミアム」などを通じて冷凍パスタ市場を開拓してきました。当時の冷凍食品市場では、大盛りタイプのパスタが人気を集めていましたが、量を増やすだけでは食事として満たされず、もう一品を求める人も少なくなかったといいます。
「調査を進めるなか、量的な満足感を得るために、サラダやおかずを自分で用意し、パスタと一緒に食べている方がいることがわかりました。そこで、パスタとおかず、ご飯とおかずをセットにした商品へのニーズがあるのではないかと考え、開発を進めたんです。
冷凍ワンプレートは、当時まだ見慣れないカテゴリーだったので、奇抜なメニューでは商品のコンセプトも含めて手に取っていただきにくいと考えました。そこでまずは、ハンバーグとパスタのような、ファミリーレストランのランチセットを思わせる見慣れた組み合わせを商品化することにしました」(増田さん)
発売当初は、小売店から「本当に売れるのか」と慎重に見られ、売り場の棚を確保することにも苦労したといいます。それでも同社は、短期的には苦労があっても、人々の食生活に合う商品として長期的な成長が見込めるカテゴリーだと信じ、商品開発と売り場の開拓を継続。その後はリピート購入が徐々に広がり、冷凍ワンプレートの認知拡大につながっていきました。
温めムラを抑える、容器と食材配置の工夫
冷凍ワンプレートの開発で大きな課題となったのが、性質の異なる複数の食材を、電子レンジで一度にムラなく温めることでした。主食とおかずを一つのトレーに収め、家庭用電子レンジでおいしく仕上げるには、従来の冷凍パスタとは異なる発想と技術が必要でした。そこで同社は、容器の形状から食材の組み合わせ、盛り付ける位置まで、一つひとつ検証を重ねたといいます。
増田さん:最初は、パスタは温まっているのにハンバーグの中心が冷たい、逆にハンバーグに合わせて加熱するとパスタが硬くなってしまうといった課題もありました。そこで、電子レンジで温まりやすい場所と温まりにくい場所を細かく分析しました。
電子レンジのマイクロ波は容器の角に集中しやすいため、角を落として丸みを持たせた専用容器を採用し、熱の偏りを抑えています。温まりにくい唐揚げのような大きめの肉類は、熱が届きやすい位置に配置するほか、加熱時に焦げやすい、あるいは水分が飛びやすいソースについても、主菜や副菜との位置関係を細かく調整しています。
「おいしくなさそう」の壁を越える
急成長を続ける冷凍ワンプレートですが、市場にはなお大きな伸びしろがあります。ニップンによると、2025年度の1年間に一度でも冷凍ワンプレートを購入した人の割合は約14%にとどまります。
加藤さん:消費者調査では、『冷凍ワンプレートはおいしくなさそう』というイメージが、冷凍食品全般に比べて7倍強いことがわかりました。ご飯がベチャッとしそう、複数の具材が入っているから温めムラがありそう、といった声が多いんです。
一方、購入した方からは『すごくおいしい』という声が多く聞かれます。未購入者が抱くイメージと、実際に購入した方の評価には大きなギャップがあります。このギャップをどう埋めていくかが、今後の課題だと考えています。
この壁を越えるため、ニップンは従来の「よくばり」シリーズを刷新し、冷凍ワンプレートの新ブランド「ニップン 彩りごはん。」を発表しました。9月1日から、和・洋・中・韓のメニューをそろえた全18品を展開します。
パッケージも、「おいしさへのこだわり」と「彩り」が一目で伝わるデザインに統一しました。同社は、時間がない時や心に余裕がない時でも、美味しい食事を通じて少しでも良い時間を過ごしてもらうために、ブランドとして「心まで満たされるおいしさ」を提供していき、冷凍ワンプレートの課題も払拭していく考えです。
ニップンは、ブランドと技術の両面から「冷凍ワンプレートはおいしくなさそう」という先入観を変えようとしています。冷凍ワンプレートが次の成長段階へ進めるか、その挑戦に注目が集まります。





